来ちゃった!
「アイリス!」
エヴァンが笑顔でアイリスに近寄り、いつものようにさりげなく頬にキスをする。
チラッとカレン達令嬢を見るとカレン以外の令嬢はサッと頭を下げた!
カレンはと言うと……
「まぁ! お久しぶりですわー」
変わり身の早さ驚くアイリスとジャスミン。エヴァンはカレンに見向きもしない。
「楽しんでいる?」
アイリスの腰に手を回すエヴァン。
「えぇ、それよりどうしてここへ?」
「どうしてってことがある? 愛する妻がお茶会をしているのだから夫として挨拶にくるのに理由がいるのか?」
カレンは自分の存在を無視されてプルプルと震えている。
「まぁ。お忙しいのにありがとうございます。参加されている方もエヴァン様の姿がありますと喜びますわね」
チラッとジャスミンを見るエヴァン。
「やぁ、シェラー夫人。いつもアイリスと仲良くしてくれてありがとう」
「こちらこそ主人がいつもお世話になっておりますわ」
オホホホホ……と穏やかに話に花が咲く。無視されて立ち尽くす侯爵令嬢とその取り巻きを見て居た堪れなくなったアイリス。
「エヴァン様こちらは、」
「……ケント侯爵の御令嬢だったか?」
貴族名鑑を暗記しているエヴァン。令嬢達に興味はないが王太子として必要な事だった。
「えぇ! お久しぶりでございますわ」
笑顔のカレンは勝ち誇った顔をしたが……
「話をしたことがあったかな……忙しくて記憶にないな」
記憶力には定評がありますよ? 小さな頃のことをねちねちと覚えているくらいに……口が裂けても言えませんけれどね。
「まぁ。お疲れですのね……お可愛そうに。アイリス様は殿下を癒して差し上げられていないのかしら」
取り巻き達とクスクスと笑いだす。また勢いを取り戻したようだ。
「毎日癒されている。アイリスの顔を見ているだけで疲れが吹っ飛ぶくらいだ。忙しいのは子が生まれた時に休みが欲しいからだ、アイリス肩が少し冷えているようだね」
そう言ってストールを侍女から受け取りアイリスの肩にかける。
「心配性ですわね。大丈夫ですのに……」
動いているから少し暑いくらい。
「立ちっぱなしも良くないよ。それにアイリスと話をしたい令嬢達が待っているようだし座って会話を楽しむといい。アイリスの身に何かあっては大変だ」
これは、この場を立ち去れと言っているようなものですね。
******
「さて、と。君たちは一体何様のつもりかな?」
「「「「え?」」」」
「私のアイリスに何を言ったのかな?」
「エヴァン様? 何を」
カレン達は何のことかわからないという顔をする。
「私はアイリスが心配で心配でしょうがないんだよ。アイリスは美しいだけではなく優しいからね。今回のことも私に報告するつもりはなかったんだ。自分で対応しようとしていた。王太子妃と言う立場上これくらいのことは自分で解決できるんだよ。私が出て来たら事が大きくなってしまう」
じゃあなぜ出て来たのか。ジャスミンは思うが仕方がない事なのだろう。ここは王宮……エヴァンのお膝元だ。
アイリスには学生時代からずっと影がつけられている。ジャスミン自体は会ったことはないのだが、そう聞いている。
アイリスに何かあるとすぐに報告されエヴァンは何を置いてもすぐに駆けつける。
「全て報告を受けているんだが、君たちが認めないのなら私がここで沙汰を下さなきゃいけないのか? まぁそれも良いだろう、」
「お、お待ちくださいっ」
そう声にしたのは侯爵令嬢カレン。
 




