永遠を誓う二人
卒業パーティーでエヴァンのダンス相手争奪と言う抽選会が行われた。
五人が当選を引きダンスをしようとするが、香水をつけているのでダンスは出来ない、事前に告知をしていた、とレイが言い、結果どの令嬢ともダンスをする事がなかった。
「仕方がないよね、事前に告知をしていたんだもの…だからと言って私が選ぶわけにもいけませんからね」
ご機嫌な様子でアイリスの腰を抱いていた。
「卒業記念にアイリスからキスをしてくれない?」
にこりと微笑む二人。
「むりです」
腰の手をぺちっと叩くアイリス。
「ケチ!」
拗ねるエヴァン。
エヴァンとアイリスの周りに人が集まっている様な気がするのは、気のせいではなく、学園にいる時でしかエヴァンと気安く会う機会がなくなるからだろう。
「ねぇ、皆さんとお話をされてきてはいかがですか? このような機会は最後ですのよ?」
「分かりましたよ」
エヴァンと別れるアイリス。クラスメイトの元へ合流しようとした所、子息達に囲まれてしまった。
「あらら…..どうしましょう」
事を荒立てる事なく、話に耳を傾けてなんとか抜け出そうとするアイリス。護衛は会場内に入れないのだった。
卒業生はこのようにアイリスに会う事はもうないだろう、みんな必死に挨拶をする。王太子妃教育として学んだ、聞き流すと言う知識を駆使してなんとか、抜け出す事が出来た……
「疲れた…」
ようやくクラスメイトの輪に入る事が出来た。
「アイリス、モテモテじゃないの!」
ジャスミンがにやにやしながら話しかける。
「殿下の婚約者だからですよ……」
やれやれと言う顔をするアイリス。
「それだけではないわよ、あら?殿下が恐ろしい顔をされてアイリスを見ているわ」
「本当だ……面倒くさい、あっち行きましょう、喉が渇いたの」
「良いわね!」
「ジャスミン、婚約者は良いの?」
「良いわよ! ほら殿下達の輪に入ってるもの」
「あら、本当だ、それでは心置きなく」
「えぇ」
飲み物を飲んでいると、一人の男性がアイリスに声をかけてきた。
「私は貴方の事を入学式から見ていました、そして貴女に憧れておりました、今日で国に帰ることになります、最後に貴女とお話がしたくて、声をかけました」
頭を下げて挨拶をする。
「まぁ、国へ? 留学されていたのですね?」
「はい、ウェステリアから留学生として」
「それは優秀なのですね、わたくしの母もウェステリア出身ですのよ、初めてお話ししたのに、親近感がございますわね」
ふふふと笑うアイリス。
「ねぇ、アイリスそれくらいにしておいた方が……」
「えっ?」
エヴァンがこちらに向かって来ている。
「アイリス!」
「殿下? どうされましたの?」
「こっちに来い!」
腕を引っ張られた。ウェステリアの留学生と言う男性は頭を下げる。
「少し目を離すと男に囲まれるんだな、おまえ」
「わたくしの本意ではございませんわよ」
「分かっているが一対一は許せん……」
「ジャスミンもいたでしょうに……」
「告白をされるのは許せん、相手に隙を与えるな!」
「ヤキモチですか?」
「ヤキモチ? そんな生ぬるいものではない、殺意だな」
「ふふ、そう言う気持ちを嬉しく思ってしまう、わたくしもおかしいですわね」
くすくすと笑うアイリス。
アイリスの手を取り跪くエヴァン。
「愛してるよ、誰にも渡さないし、触れさせないから一生私のものでいてくれ」
「はい、わたくしも愛しています、ずっとお側に」
立ち上がりアイリスに口付けをする。
周りからは拍手がされた。
「みんなが承認だ」
にこりと満足そうに微笑むエヴァン。
「アイリスに、手を出したら潰すからな……」
ゾッとする子息達だった……。
そして月日が経ち無事に結婚式を迎える事が出来た。
「アイリス美しいよ」
「エヴァン様もとてもカッコいいですよ」
「これで逃亡はもう出来ん、アイリスに勝った!」
「わたくしの負けですわね……今のところは」
「どう言う意味だ?」
「わたくしを一生逃がさないようにしてくださいね!」
「任せとけ」
そして神様と列席者の前で永遠を誓う二人でした。
【完】
 




