探し人
王宮でお茶会が開かれる。
小さな女の子や、男の子たちが集められた。
王子の友達作りが目的のようだ。
……あの子は居るのかな?
名前も知らない花冠の女の子。
キョロキョロと周りを見渡し自分より年下であろう女の子を探す
……いないのか?
服装を見る限り上位貴族の娘だと思っていたのに……!
見事な金の髪をもつ、笑顔が印象的なあの子は一体誰だったのだろうか?
はぁとため息を吐く。
この国の王子は十五歳になると婚約者が決まる。
決めなくてはならない。
私はエヴァン・エクトル・ラ・シャルトルーズ、七歳。第一王子である。
王子である私の目に止まるよう、毎回同じ顔でつまらない茶会がつづく。
なぜあの子がいない!
幼い頃はまだ良かったが、歳を重ねていくうちにどんどんと、けばけばしくなる令嬢の顔、香水の匂いにうんざりする!
今年から学園に通う事になる十三歳だ……
早くあの子を見つけなくては……
もう時間がない。あの子の名前を知りたい。
成長したあの子に会いたい。
あの子の笑顔が忘れられなくて、あの日誰が城に来ていたかと母上に尋ねた。
「あの日はね、なんだがバタバタしていてたくさんの来客があったの、子供連れ?いたわよ、それがどうしたの?あなたもよくお会いするでしょ?○○伯爵家でしょ、○○子爵家の……」
違う! そうじゃない! なぜわかってくれないのか! 金髪の可愛い女の子が居たのに……
確か、侍女が側に居たな……メイド服に家紋が見えたんだよ!覚えてないけど……
確かめたい、あと二年しかない、あの日からもう既に六年が経とうとしていた……
そして学園に通う事になった。
「どうした?エヴァン」
幼い頃からの友人で公爵家嫡男のレイ・プロッティに声をかけられた。
「いや、なにも」
「誰か探しているのか?キョロキョロして」
幼い頃に会ったあの子を探しているとは言えない。言ったとしても、なんと説明すれば良いのか分からない。
明らかに歳下であろうあの子が入学式には来ないよな……
「可愛い子でもいたか?」
まるで揶揄うように言ってくるレイ
「……いない」
「そうか、あと二年で決めなきゃならないんだろ?気になる子はいないのか?」
「…………いない」
王子として婚約者を決めるタイムリミットがあと二年……
もう自分で探すには限界があるのか……
「レイは意中の令嬢がいるのか?」
「いるよ、だから早くエヴァンが婚約者を決めてくれないと、こっちは困る」
年頃の令嬢を持つ親は、王子の目に止まるかも知れないと、婚約者を持たない子が殆どだ。令嬢に婚約者がいないと言うことは子息も然りだ。
「そんなこと言われてもなぁ……」
あの子に会ったらならどうなるかな……
「どんなタイプが好きなんだ?」
レイが揶揄うように聞いてくる。
「笑顔が可愛くて、金髪でウェーブがかかっている子だな」
「なんだ、それ?」
ケラケラと笑うレイ
「嫌いなタイプは?」
「化粧が濃いのも、香水も派手な感じは無理だな」
「なるほど」
レイとエヴァンの話を聞き逃すまいと聞き耳を立てる令嬢達……虎視眈々とエヴァンを狙っている。
次の日、令嬢達に変化が……
化粧をやめ、派手なドレスを脱ぎ制服姿で学園へ登校する。
皆んな不自然な笑みを浮かべて、髪の毛をウェーブさせていた。
「なんなんだ、この団体は?」
エヴァンが興味なさげにレイに言う
「さぁな」
困った顔つきのレイ
「皆んな同じものに見える……」
「せめて同じ顔と言え、ものに例えるな!」
「ゾッとするな……この風景は」
「しかし制服が普及して良かったな、さすがエヴァンだ!」
「意味が分からん」