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第24話 紅蘭の美しき花

うえええ、頭痛い……

えーどうも、本日はですね、春の宴の当日となります。実況してる場合じゃないわ。


「最悪よ、一日中この重たい頭飾りをつけておかないといけないだなんて」


「それに加えて陛下から桃の花を賜る儀式がありますわ」


「また飾りが増えるの!?」


もう嫌なんだけどー! 玉蘭に衝撃の事実を聞かされ、私は机に突っ伏す。それにその儀式何よ、私なにも聞いてないし!


「ただ単純に陛下が手折られた桃の花を陛下のお好きな時間にお妃様を呼ばれて陛下のお好きなところに飾るだけの儀式ですから特に特別なことはありませんの。ですから特に言われなかったのですわ」


それにしても、よ。樟石さんったらいつも私に恥をかかないようにってくどくど言ってくるくせに、聞かされてなくって失敗したらどうするつもりだったわけ? どうせそんなこともできないだなんてあなた本当に姫ですかとか言われるんでしょう。失礼しちゃうわ。


「言っておいてくれてありがとう玉蘭。あなたのおかげで命拾いしたわ」


「それはよかったですわ。宴の際はわたくしも控えておりますからいつでも呼びつけてくださいませ」


あ、宴に令嬢とかは来ないのね。花がなくてつまんなそうねえ、だから私が花なのか。


「あ、でもよほどのことがない限り人前でお呼びになるのは、ね? わたくしこれでも隠密ですから、人前に姿を現すのはあまり良い事ではありませんの。姿を現さなければならないご用事ですから変装しますからそれに関してはお気になさらなくて構いませんわ」


「玉蘭ったら変装も出来るのね。すごいわ」


重要な役職とかについてるタイプのおじさんとかにも変装できるのかな。こんなまだまだ子供の少女なのに? すごいね。


「鈴華」


突然背後から声がした。


「陛下」


もう始まるの? 私の足は耐えられるのかしら。そう思いつつ振り向いた先には、


「へ、い……か?」


いやなんだこの色男。いつもはかなり上の方できっちり結っているさらさらの髪を今日は下の方でゆったり結っていて、左耳にかけていた横髪もおろされている。雰囲気が違いすぎる。あと陛下!! その衣装の着方どうにかならないんですか!?!? めちゃくちゃ鍛えられてる大胸筋がいつも以上に見えてるんですけど!? 男しかいないのにそんなに色気だしてどうするつもりなんだこの人!!


「へ、陛下、もうちょっとその、閉じた方がいいのでは……」


「どこの話だ?」


胸元以外ありえないでしょうが。


「その、む、胸元ですねえ……」


「窮屈だからあまりこれでいい」


それ子どもが言うやつですよ。あ、いつもの言動のせいで樟石さんがお母さんに見えてくる……


「あ、陛下! いつの間に! 普段着ではないのですから適当に着ないで下さいと申し上げたでしょう!」


お母さんだ。


「玉蘭」


「はい」


呼ばれた玉蘭は陛下の前に跪いた。こうしてみるとやっぱり主従なのよね。いつもは全然そんなことないけど。


「今日の宴は古参の臣下たちにとっては久々のもの。浮かれすぎて問題が起きるやもしれぬ。それから妃や私に何かを仕掛けてくる輩もいるだろう。警戒を怠るな」


「もちろんですわ。わたくしにお任せくださいませ」


玉蘭一人で警備するの? そんなわけないよね、他の隠密も参加してるよね。


「もちろん玉蘭以外にも任せてはいるが、玉蘭に勝るものはいないからな。それに他の隠密は勝手に裏切っている可能性もある」


さっきから思ってるんだけどあなたたち私の心の声読みすぎじゃない? なに? もしかして声に出てたりする?


「声には出ておりませんわ、ご安心を」


なおさら安心できないわよ。


「にしてもやっぱり、陛下は玉蘭のことは信頼していらっしゃるんですね」


一番有能だからかしら。昔から一緒だからかな。ちらりと陛下を見上げると、彼はふっと目を細めた。


「まあ、な」


うわ、その目で何人おとしてきたのかしら。


「さあさあ、雑談なんてしている場合じゃあないんですよ。皆さんお待ちです。行きますよ」


樟石さんにそう言われ、私は仕方なく陛下の手を取った。と思ったらもう片方の手を腰に回された。歩きにくいのにこれで行くの? さらに最悪だよ。


「さあ、面倒くさいが行こうか」


いやめんどくさいんかい。


「鈴華が宴の花になった様子を見るのが楽しみだ」


それ、前にも言ったでしょ。



「国王陛下、並びに邑妃様のおなりです」


どよめく会場。陛下がずっと私のことを世間にお披露目しなかったせいで、この場にいるほとんどの人が私を初めて見た人ばかり。まあ顔は見えないから実質会ってないけどね!


「本日はお集まりいただき感謝する」


ひっさびさに聞いたわね、陛下の仕事してる時の声。相変わらず威圧感がすごいわ。


「皆初めてであろうが、彼女が我が唯一の妃だ。宴の花にさぞ似合いだろう?」


おお、と歓声が上がる。残念ながらはったりなんだけどね。さぞ似合いだろうとか言ってみんな私のこと鳥も見惚れて空から落ちるほどの絶世の美女だと思ってるから良いけど、全然違うから。


「では、短いひと時だが共に今年の春を楽しもうではないか」


快晴の青空に、みんなの盃が掲げられた。非常にむさくるしい宴の始まりである。

とうとう本番になりました。

次の更新予定日は一月六日です

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