第18話 変なところで団結力出すな
どうも軽度のスランプから回復した森ののかです
お久しぶりです
「はー……わかりましたよ、働けばいいんでしょう」
若干自暴自棄になりながら月華さんがため息をついた。こんなこと言えるなんて仲良いな。そして彼は、窓に近づく。
「おいで」
優しいその一言と共に、彼は闇夜に手を伸ばした。その瞬間、大量の鳥が音もなく彼の腕に止まった。何匹いるんだろう。種類も大きい鷹なんかから小さな雀までばらばらだ。
「こら、なんでお前は肩に乗ろうとするんだ。私の肩がはずれてしまうよ」
月華さんは困ったように肩に止まった鷲に話しかけた。いやでか。そりゃあそんなに大きな鷲を肩に乗せてたらはずれるわよ。
「よしよし、いい子いい子」
溢れ出る優しいお父さん感がすごい。でも色気もすごい。なんだかむすっとしたような感じで肩から降りた鷲が、頭を撫でられて満足気にしている。
「相変わらずお前は動物に大人気だな」
面白がるように笑いながら、陛下が窓の下を覗いた。え、下にもいるの? そう思って私も、窓の下を覗いてみると……
「ん? うさぎ? りす?」
お呼びでない鳥以外の動物たちが期待の目でこちらを見つめていた。あれ、この人動物使いだっけ。玉蘭からは鳥使いって聞いてたんだけど?
「うーん、おかしいなあ、私は鳥たちしか呼んでいないよ?」
窓の下の存在に気がついた月華さんが、その動物たちにそう話しかけた。すると、動物たちが騒ぎだした。反抗してるの? これ……
「こらこら、騒いだら気が付かれてしまうよ。今度遊んであげるから、今日は大人しくお帰り」
彼はふわりと、花の綻ぶような笑顔を見せた。ああー、この人まつげ長くない!? 私よりも長くてばしばしなんだけど。どこぞのお姫様って言われた方が納得できる。
「国王陛下とお妃様が来てるんだ。お仕事なんだよ。あーもう、お仕事は新しい遊びじゃないんだ」
わあ大変そう。というかさっきから思ってたんだけどこの人動物と話してない? 言葉交わしてるよね? 私の気のせい?
「偉いね。また今度おいで」
彼が手を振ると、動物達は少し不満そうに、でもちゃんと帰り始めた。
「……月華さん動物と話せるんですか……」
「あはは〜、ふ、雰囲気ですかね……」
普通雰囲気で話せないよ。
「お兄様、そろそろわたくしの忠告を聞いて動物使いになった方がいいと思いますわよ」
「あの子たちは諜報活動には使えないじゃないか」
やっぱり鳥とは話せるんだな。うん。そう頷いていると、月華さんの腕にとまっていた白い小鳥とばっちり目が合った。可愛いなー、羽ふかふかで手触りよさそう。
「お妃様? その子が気に入りましたか?」
あまりに見つめていたせいか、彼が私に声をかけてくる。気に入った? うーん、気に入ったというか……
「触ってみたい……」
「いいですよ」
恐る恐る言ったのに、即許可が出て少し驚いてしまう。いいんだ。私はそっとその小鳥に腕を伸ばした。ふわり、と柔らかい羽が手を包み込んでくる。暖かい……可愛い……好き……
「ふふ、お気に召したようで良かったです。お妃様はお目が高いですね。その子は優秀なんですよ」
窓の枠にとまった雀を撫でながら月華さんが笑う。私はこの子が優秀なことに驚きです。まる。こんなにちっちゃいのにすごいのね。
「私にとってはどの子も大切ですから優秀だとか関係ありませんが」
そう言いながら彼は一羽ずつ鳥たちを飛ばせて行った。諜報活動に向かわせたのだろうか。最後の一羽、鷲を飛び立たせて彼は大きなため息をつく。
「はあ〜、肩がこる……」
「お前も大変だな」
陛下が笑った。ほんとだよ。あの子、最後の最後まで月華さんの肩に乗ってたもん。
「陛下のおやつも作らないとですしね」
「そそそ、それは今関係ないだろう」
動揺しすぎですよ陛下。あれ、陛下の保護者多くない? でも月華さんは保護者って感じじゃないか。いやそうでもないか。どっちでもいいや。
「何だべってるんですかやらかし組。用が済んだのならさっさと帰りますよ」
しばらく放置されていた樟石さんが、眉間をおさえながら話に割って入ってくる。あ、月華さんもやらかし組なのね。
「樟石殿はどうして自分を棚に上げてらっしゃるので?」
「ん?」
月華さんがにっこにこの笑顔でそんなことを口にしたので私は思わずそうもらしてしまった。ちょ、どういうこと?
「そうですわ! よく考えれば片めが……樟石さんだってわたくしたちの中に加わっていたではありませんか!」
玉蘭、いまあなた、ね、樟石さんのこと片眼鏡って呼ぼうとしたよね。だいぶ言いかけたよね。確かに片眼鏡だけどさ。ほとんど言ったよね? 本人の前で。
「お前もやらかし組に決まっているだろう。私はおぼえているぞ、お前がやらかしたあんなことやこんなこと……」
「え、この一見つっこみ役そうな樟石さんも……?」
あまりにも衝撃的過ぎて私は思わず驚いた顔で樟石さんの方を振り返った。するととんでもない睨みが帰ってきた。ひえ、殺される。
「陛下、玉蘭殿、月華殿。いくらお妃様が我々の昔のことを知らないからといって、言っていい冗談と悪い冗談があることをご存じで?」
氷点下の微笑みが、三人に向いた。三人はそれぞれ思い思いの方向に目をそらす。
「さて、今回の冗談は後者ですが……常に自分勝手で自由気ままに何でもやろうとするあなた方を私が止めて差し上げたおかげでなにも起こらずに済んだことはいったい何件あったか……ご自分の手を胸にあててもう一度よく考えてみてはどうです?」
三人は、静かに輪になると……そっと隣の人の胸に手をあてた。
「自分の手は自分の胸にあてて考えて頂けますかねえ!?」
やっぱり樟石さんというつっこみ役がいないとこの人たちは成り立たないな。うん。
回復した理由なんですが、この話の新キャラと素晴らしい設定を思いついたからなんですね。新キャラを思ったより気に入ってしまって早く出したくなったので描かなきゃと思いました。随分休んでてごめんね。
次回の更新予定は六月九日です!




