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第15話 昔からのやらかし組に一人仲間が加わりました

「鈴華……助けてくれ……」


朝どんよりした空気を纏って仕事に行った夫が、瀕死で帰ってきた。ちょっと理解が追い付かない。失礼かもしれないがこの生き物は本当にかの有名な血に飢えた冷酷な狼なのだろうか。


「どうかされたんですか陛下……」


私の中の冷酷王のイメージがどんどん崩れていくんだけど大丈夫? よく昼間王宮でぼろを出さないわね。樟石さん大変そう。というのは別に今問題ではなくて、重要なのは彼がなぜ私に助けを求めているのかだ。因みに瀕死と言ったがそれは精神状態のことである。


「宴をやる、と言ったところまではよかったのだが、責任者の件を失念していた……」


何それぽんこ……うん、殺されたくないから言うのやめとこ。


「私は青鋭と月華にやらせようと思っていたのに案の定二人の父親が自分を責任者にしろと圧をかけてきてな。しつこくて構わぬ」


あ~なるほど、昨日出仕しないといけなくなる理由をみたいなこと言ってたのってこれか。責任者だもん、休めないよね。というか……


「早く公言してしまっては? その方が早く進みますし……」


「私にあの圧の中でお前たちではなくお前たちの息子にやらせると公言せよというのか?」


あ、はい、ごめんなさい、殺さないでください。陛下といるせいで殺さないでくださいっていう機会が増えたじゃん。なかなか言わないよ、このセリフ。


「い、いやあ、その……」


私はそう誤魔化すように視線をそらしたのに、それも虚しく肩を掴まれる。


「ならば自分の息子はまだ未熟だから無理だと思っているあれたちを納得させる理由を考えてみよ。そもそも董家と葉家は敵対勢力だぞ」


あー、それは無理ですね。そもそも私月華さんって人に会ったことないもん。


「わ、私は青鋭様にしか会ったことがないので何とも……」


冷や汗を流しながら愛想笑いを浮かべると陛下の肩をつかむ力が弱くなった。別に最初からそんなに強くは掴まれてなかったけど。


「なら、会うか? 会えば何かいい考えが浮かぶやもしれん。玉蘭」


あ、理由考えるのは私に丸投げなんですね。了解です。はい。


「なんですかー?」


相変わらず第一声が緩いな。可愛いから良いけど。


「お前の兄を呼んで来い」


「それは無理ですわ。お兄様ったら昨日から陛下の覚悟しておけ、に怖がって部屋から出ても来ませんの」


私は今国王の要求をあっさり断った玉蘭に若干の恐怖を覚えてる。びっくりするでしょ普通。そして王宮に出仕できるぐらいには大人な男の人が怖がって部屋から出てこないという状況にとても驚いている。小さい子供を見ている感じがするから。


「お前なら鍵がかかっていようと簡単に入り込めるではないか」


「入り込めたところで説得しなければ出てこないではありませんか。それとも嫌がるお兄様を抱えてここまで来いとおっしゃるのですか?」


あれ、あなた十代前半の貴族令嬢じゃなかったんですか。私は余裕で持てるが、大抵のお姫様や貴族の女性たちは重いものなんて持てないし持たない。でも目の前にいるこの少女は自分より身長も高くて体つきもしっかりとしているであろう大人の男性を抱えて、いつものように軽快に屋根の上を飛び回れるといっている。隠密ってすごい。


「なんだ仕方のないやつだな……今回は特別に私から出向いてやろう。行くぞ鈴華」


「は、え?」


まって、主君自ら臣下の家に出向くの!? それってまずくない!?


「なんだ、何か問題でもあるのか?」


そんなにきょとんとされても困るんですが! でも無言の圧が怖いしこれはうけるしかないか……!


「い、いえあの……」


「陛下」


突然部屋に、今までと別の声が響く。それと同時に陛下の肩がびくりと震えた。


「しょ、樟石……」


よかったー! いいところに来てくれたよ、陛下のストッパー役! ちょっと纏う空気が怖いけど!


「陛下、まさか主君たるものが一介の臣下の家に真正面から乗り込むなんて馬鹿なことはなさいませんよね? もちろん変装して忍び込むんですよね?」


「ははは、そうに決まっているだろう。どこの世界にそんな頭の悪い王がいるというのだ?」


笑ってますけど完全に棒読みですね、陛下。そのまま乗り込む気満々だったんですか。


「三人では何かやらかした時の対処役がいませんからね。私もついて行かせていただきますよ」


「どうしていーがやらかし組に入れられておりますの!? いーほど有能な隠密はこの世にいませんわよ!」


樟石さんのまとめ方に猛反抗する玉蘭が可愛い。っていうかあれ、玉蘭って自分のこと“わたくし”って言ってなかったっけ?


「玉蘭、癖が出てるぞ」


「え? まあ、言われてみればそうですわ」


あら~、と彼女は頬に手を添えて驚いたような表情をする。癖? あれは癖なのか?


「玉蘭殿は昔から興奮すると一人称が変わるんですよ……“いー”に……」


「は、はあ……」


それで生きてこられたのが不思議だ。きっと他ではやってないよね。この空間だからこそそんな風になるまで感情が出せるってことか……? というか玉蘭って名前なのになんでいーになるんだろう?


「深くは私たちにも分かりませんので」


ははは、と若干乾いた笑いを私に向けつつ、樟石さんは玉蘭と陛下のほうを向いた。


「憶えているんですよ、玉蘭殿。あんなことやこんなことをやらかしたことをねえ? 主犯は陛下でしたけどね?」


「うぐっ」


心当たりあるんかい。

玉蘭の一人称をどうしてもいーにしたかった((

なんで玉蘭なのにいーなのかというと、中国語で読むとぎょくらんがいーらんになるんですね。可愛くないですか。めっちゃ好きなのでこういう形で参戦させました。因みにこの作品はあくまで中華後宮をモデルにしただけですので中国語はありません。なので本人もなんで自分のことを“いー”っていっちゃうのか理解してないです。


次回の更新は3月21日の予定です。間が空いてしまって申し訳ない。その期間はほかの作品を更新してるので良ければ覗いてみてください!

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