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第12話 隠密の身体能力が高すぎる

そうして玉蘭が隠密としてそばにいる生活が始まったのだけど、意外と面白い。玉蘭はずっと部屋にいていろんな話を聞かせてくれるし、自分の作った物語を聞かせてくれることもあるからやっぱり年頃の女の子なんだなあと思う。でもやっぱり身体能力はとてつもなく高いし私なんかより全然頭がいいから本当にすごい。


「お妃様、用があるので少しだけ外しますね」


「ええ、行ってらっしゃい!」


くるりと宙返りして窓枠に手をかけた彼女はそのまま華麗に屋根の上にとび出していった。


「本当に、どこからあんな体力がわいてくるのかしら……」


気になったのでためしに部屋の中でいろいろ動いてみたのだがなかなか大変だ。これは私だけだろうけど服は重いし髪飾りも重いし。何よりあんなに跳躍力がないので人並みぐらいにしか跳べない。宙返りなんてもってのほか。すごすぎよ玉蘭……


「ふ……くっ……」


「え?」


なんか今誰かの笑い声が聞こえたような……


「何をしているんだ我が妃よ。先程から目が離せないのだが」


「陛下!?」


まさかさっきの見てたの!? 悪趣味すぎじゃない!? いるのなら声をかけてほしいわ。


「続けてくれていいぞ」


「続けません」


なんで陛下が見てる前でやらなきゃいけないの。恥ずかしいでしょ。髪飾りを直して椅子に座った私に陛下が声をかけてきた。


「玉蘭は?」


「用があるって言ってさっき出ていきましたけど……」


そう言って私は窓の方を向く。そして、目に映ったものに目を言葉を失った。


「お呼びですか?」


玉蘭が窓枠の細いところで片膝を立てて座っていたからである。


「いや、特に何もない。用事は終わったのか?」


「もちろん。見た感じ特に変わったことはありませんでしたわ」


今の陛下の"玉蘭は?"の声で来たのかな……っていうかさっき出ていったばっかりなのにしっかり調査済みってどういうこと??


「お妃様、おひとりにして申し訳ございませんわ」


「ううん、全然大丈夫よ」


謝る玉蘭に私は慌ててそう言った。良かったというように彼女はほっと息をつく。


「このあたりをどこかの密偵がうろうろしていましたからお家に帰してさしあげに行ってきますわね」


「またか……頼んだ」


今からまた動くんですかあなた……ほんとに、疲れないのかな……


陛下がすぐに仕事に帰ってしまったので一人になった私はなんとなく書物を読み始めた。玉蘭は女官に正体がばれてはいけないので基本外にいるのだ。確かさっき、女官が持ってきてくれたお菓子があったはず。近くにあったお菓子の入ったかごを引き寄せて、私はそこに手を伸ばした。


「あ……」


小さな声が聞こえた。聞きなれた玉蘭の声。横からさっとかごを取り上げられ、彼女の方を振り返る。


「玉蘭?」


「お妃様、少し手違いがあったみたいですの。お妃様の分はあとから持ってまいりますから少し待っていてくださいませ」


手違い? 何のことだろう。さっぱり見当がつかない。でももう玉蘭は行ってしまったし結局謎なままになった。


「お妃様、こちらですわ」


「ありがとう。さっきの、何がいけなかったの?」


さっきとは微妙に違ったお菓子をつまみながら、私は玉蘭にそう聞いた。少し私の方を見つめてから玉蘭が答える。


「お妃様、今度からあまりむやみに食べ物に手を付けないでくださいませ。おなかを壊したらいけませんわ」


つまりさっきのは傷んでたのかな? それならわかる。こんどから気を付けよう。


「わかったわ。本当に玉蘭ってすごいのね」


「いえいえ、お妃様には到底及びませんわ」


「私にすごいところなんてないわ」


くすくすと笑いながら私は彼女にそう言う。もう、と少し不満げな顔で、頬を膨らませて玉蘭は言った。本当に癒し。


「ところでお妃様、わたくしずっと気になっていたことがありますの」


突然そう言われたので、私は首を傾げる。


「紅蘭国って、どのようなところですの? わたくし行ったことがありませんの」


薄紅蘭がどんなところなのか。これは結構、私には難しい問い……何せ私はあの国のこと書物にかかれていた分の知識と王都がどんなところなのかぐらいしか分からないのよ……


「え、えっと……その……」


ただ目を輝かせて私の言葉を待ち構えているので知らないだなんて口が裂けても言えない。


「し、自然が綺麗なところかしら? それに街の活気がいいの」


「まあ、そうなのですね! わたくしも一度訪ねてみたいですわ!」


あれ、玉蘭は薄紅蘭に一度も来たことがないの? 隠密だというのなら来ていそうなんだけど……


「紅蘭国って変な噂がほとんどないでしょう? 全くないと言っても過言ではないぐらい。ですからわたくしではない方が調査なさったのですわ。ああ、わたくしが調査しに行ければお妃様に感想をお伝えすることができましたのに」


悔しそうにしている姿さえ可愛いのでたぶん玉蘭は本物の天使。

今日は挿絵を入れようと思っていたんですが、スマホが使えそうにないので次回にしたいと思います。すみません……

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