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インミシベルな玩具〜暗殺者として育った俺が普通の高校生に〜  作者: 涼月風
第4章

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第78話 日曜日は繁忙(5)




ラクーダ・ガーデンステージで繰り広げられているアクロバット。

高所から落ちてきた子をキャッチする子。

何故か連続バク転を繰り返す子。


でも、どういうわけか、ローズさんの作った曲に合っている。

興味半分で来た人も多かっただろうがちびっ子達のアクロバットは迫力満点だった。

そして、更にちびっ子達のトークがウケた。

小さな子達が可愛らしく軍隊の真似をするなど、どこからかクレームが入りそうだが、それでも愛らしい姿の方が優っていて余興として十分過ぎるほどのショーであった。


最後はHINAが出てきて終わりの挨拶をして幕を下ろす。

しばらく、アンコールが続いたがメンバー達が1度会場に上がり時間がないので今日はごめんなさい、と頭を下げると更にアンコールが湧き上がる。


会場責任者も時間が押してるのを気にしていたが、このままだとみんなが帰りそうもないので一曲だけ、ローズさん作のバラードを歌った。

今日2度目の曲である。


「ど、ど、どうしよう?」

「何がですか?」


蓼科さんが慌ててる。

嫌な予感がする……。


「あ、あのね。落ち着いて聞いてね」

「はい……」

「駒場ミュージック・ジャパンの会長さんの駒場源之助さんがね。褒めてくれたのよ〜〜!」


嫌な予感は外れたようだ。


「それって、アキちゃんのお爺ちゃんでしたよね。良かったですね」

「うん、これも東藤君のおかげよ」

「マンション、売りに出さなくても良くなりましたね」

「そう。ボーナスが期待できるわ!」


相変わらず、欲まみれに人だ。


「それで、打ち上げというか汗かいたので、みんなでスパに寄るの。東藤君達もどう?」

「俺は構いませんけど。汗かいてるし……」

「僕も行きます」


神崎兄も汗びっしょりだ。


「東藤君、クラスメイトのみんなも一緒でいいわよ」

「そうですか?じゃあ、連絡してみます」


鴨志田さんに連絡すると喜んで女子達は参加するようだ。

男子達は、近くのゲーセンに行ってるようで不参加らしい。

男女の連帯感があるかと思ったらそうでもないようだ。


スパで待ち合わせしてると鴨志田さん達がやってきた。

あれから彼女達は、それぞれ好き勝手に行動してたようだ。

ナンパしてくる男達がウザいとも言っていた。


お風呂は別だが、中で部屋着を貸してくれてくつろげる場所がある。

待ち合わせは、そこにした。



他人とお風呂の入ると驚かれる俺は、気を使って人のいない方に行くことにしている。だが、今回は、神崎兄と一緒だ。出来るだけ近づかないようにしていたら向こうから寄ってきた。


「東藤君、君、その傷はどうしたんだ?」


こう真正面から聞かれては仕方がない。


「海外暮らしが長くていろいろあったんです」

「そうか、だから銃創があるんだな」

「よく銃創だってわかりましたね」

「僕は警察官僚を目指してる。銃創は写真で見ただけだ。本物を見るのは初めてだよ」

「そうですか、警察官ですか……」


将来だが、知り合いとはあまり敵対したくはないな……


「ところで、眼鏡を外すと物凄く整った顔をしているんだな。俺よりモデル向きだ」

「俺にはそういうのはよくわからないです」

「モデルで貰った服がたくさんある。君とは背格好も似てるしもらってくれないか?」

「もう、着ないものでしたら」

「そうか、では用意しておくよ。陽奈に渡しておくから受け取ってくれ」

「ありがとうございます」

「それと、陽奈は君の素顔を知っているのか?」

「いいえ、知らないと思いますよ。学校では眼鏡は外しませんし」

「そうか、なら安心だ」


何が安心なんだ?


「君は随分苦労したようだね。身体が物語っている」

「生きるために必死だっただけです」

「そうか、そういう世界で生きてきたんだな。どおりで大人びてると思ったよ。俺よりずっと大人なんだな、君は」


兄貴がいたらこんな感じなのだろうか?

この感じは賢ちゃんと過ごした日々を思い出す。


「さて、俺はそろそろ出るよ。正直いうと暑いのが苦手なんでね」

「わかりました」


神崎兄は、カラスの行水よろしく、湯船に使ったと思ったらすぐに出て行った。

あの人はシャワーだけで足りる人らしい。


俺も人が混んできたので、出る事にする。

知らない人にじろじろ見られるのは良い気はしない。


レンタルの部屋着に着替えて男女共通エリアへ行くとちびっ子達が優雅に寛いでいた。


俺は駒場アキがいたので話しかける。


「おじいさんが喜んでいたと聞いたぞ。頑張ったな」

「はい、ありがとうございます、閣下」


最初にあった時と大違いの変わりようだが、容姿の愛らしさは変わらない。


「カズキお兄ちゃん、ほら、見て」


穂乃果の妹花乃果がスマホを見せてくれた。

とある有名な動画サイトに今日のコンサートの様子が映っている。


「凄いアクセスだな。それにコメントもみんな良い反応だ」

「うん、すごく嬉しい」


花乃果は本当に嬉しそうに良い笑顔を向けてくれた。

自分が認められるということは、この世界に存在が許されているようなものだ。

喜ぶのも当たり前だろう。


すると今度は穂乃果と陽奈がやって来た。

少し慌てた様子の陽奈は、照れているようだ。


「どうかしたのか?」

「あ、うん、クラスの子が来てたでしょう。それで焦っちゃって」

「そういうことか、いい機会だし正体明かして仲良くなれば良いのでは?」

「それは、まだ、ちょっと怖いかな。でも夏場はウィッグが蒸れるから髪の毛黒髪に戻そうと思ってるんだ」

「仕事に影響はないのか?」

「うん、今度は仕事でウィッグを被るかも知れないしね」


これは陽奈にとっては大きな一歩なのだろう。


「自分のペースで少しづつ歩んで行けばいい」

「うん、そう言ってくれてありがとう東藤君。あっ、クラスの子達が来た。私向こうに行ってるね」


陽奈と穂乃果はそう言って神崎兄がいるところに行ってしまった。

今度はクラスの女子がやってくる。


「東藤、お昼とこのスパに誘ってくれてありがと」


そう言ったのはなんと鈴谷だった。

俺が意外そうな顔をしてると、


「お礼を言うのは当たり前でしょう。結衣にも言われたし」


そう言うことか……それでも意外だった。


すると、次々とクラスの女子がお礼を言ってきた。

意外と言うか、こちらが面食らってしまう。

でも、悪い気はしない。


「東藤君、少しいいかな?」


俺は鴨志田さんに言われてその場を離れた。

俺と鴨志田さんは、みんなに内緒でその場からいなくなった。





「これ、東藤君と2人で乗りたかったんだあ」


今、鴨志田さんと2人で観覧車に乗っている。

あれから直ぐに着替えてスパを出てここまでやって来た。


「みんなと乗らなかったのか?」


「うん、乗ろうって言われたけど、私と木梨さんだけ乗らなかったんだ。どうも木梨さん高いところが苦手みたい。隠しててもバレバレだったんだけどね」


木梨、バレてたぞ……


「女子はいろいろあるんだな」


「そうだよ。苦手な事もある程度みんなと合わさないとダメな時って結構多いよ。でも、そんな事してると疲れちゃうからたまに息抜きするんだあ」


「鴨志田さんの息抜きってなんだ?」


「今だよ。東藤君と一緒にいる時が私の息抜きになるの。だからたくさん付き合ってね」


そう言われても俺にはよくわからないな。


「そうか、わかったよ」


「わ〜い、ありがと。今度映画にでも行こうよ。海でもいいよ。私、頑張ったから」


何を頑張ったのかよくわからないが……


「構わないけど、俺と一緒でいいのか?」

「何言ってるの?東藤君と一緒じゃなきゃダメなんだって。他の子じゃ無理」

「俺には、正直よくわからない。なんで俺がいいのかとかな」

「それは、まだ、秘密だよ。その方が楽しいでしょう?」

「秘密か……そうだな、少しワクワクするな」

「そうそう……ねえ、そっち行ってもいい?」

「いいけど揺れるぞ」


鴨志田さんが動いて俺の隣に座った。

そういえば聡美姉ともこうやって観覧車に乗ったっけ。


「東藤君はなんで私の事結衣と呼んでくれないの?」

「そっちこそ俺のこと東藤君と呼ぶじゃないか?」


「じゃあ、私、カズキって呼んでもいい?そのかわり私のことは結衣と呼んでね」


「わかったよ。結衣、これでいいんだろう」

「そうそう、カズキ、よくできました」


そう言って子供扱いするように俺の頭を撫でてくる結衣。

そして、


「ねえ、あれ見て」


結衣が指さした方を向くと……


俺の唇に暖かい感触が伝わった。


「結衣……これって……」

「いいから黙ってる!わかった、カズキ」

「ああ……」


そう言う結衣は恥ずかしそうにしており、その顔は真っ赤だった。


そしてもう一度優しく2人の唇が重なった……




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