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どんなことでも初仕事

 アンナが差し入れられた食事をとっているとようやくエドワードがやってきた。

「申し訳ありません、仕事が長引きまして何か不都合なことがありますか」

 そう聞かれてアンナは間髪入れずに答えた。

「お願いですから仕事をください」

 エドワードはいきなりそう来たので目を瞬かせた。

「あの、家から持ってきた荷物はこれから先心もとないんです、だからお金がいるんです、どこかで働くあてはありませんか」

「心もとないとは、いったい何が足りないのですか」

「主に着るものです、着替えがないんです」

「それなら届けさせますよ」

 そんなことかと気抜けしたエドワードにアンナはかみついた。

「仕事をくださいと言っているんです、私にできるのは家事くらいですけど、でも仲間のためにそういうことをする人間だっていてもいいでしょう」

「ああ、なるほど、それなら話は早い、しばらくあるところで働いてもらえますか?」

 どういう仕事か聞きもせず、アンナは頷いた。


 馬車に乗って随分と走る。

 再びなんだか森の近くまでやってきた。おそらくこれから仕事をしたら今日中にエドワードの屋敷まで戻ることは不可能だろう。

「この臭いは」

 アンナの鼻が懐かしい匂いを感じた。とても馴染んだ臭い。

「あれ、豚飼いだ」

 田舎の村では常に家畜のにおいが漂っている。

「牛もいる」

 豚も牛もアンナの知っているそれとは形状が少し違うが、変わった種類だと言えばそれで通じる程度には似ている。

「もしやここで豚飼いをやれと?」

 いつも村でやっている仕事なのでそれをやれと言われても抵抗はない。

 小さな小屋に行けば、最低限寝泊まりできる施設になっていた。

 粗末な小屋だがむしろ安堵した。触るのが怖いくらいの調度品に囲まれた生活というものがどれほど辛いか思い知った後だ。

 それに、今まで自分が寝泊まりしていた家よりちょっとだけましだ。

 寝台の横に置かれていたものは扉を開けると箪笥になっていた。

 飾り気のない頑丈なごつい生地で作られた衣類がまとめて入っていた。

 豚を飼うとなれば、選択のしやすい丈夫な生地でできた服でなければ。

 他には厚手の布でできた白いエプロン。

 小屋にはアンナが寝泊まりするための部屋のほかにもう一つ部屋があった。

 壁は木製だが、床は石が敷き詰められている。そして水が引かれている。そして作業台と思しい大きな台、そして大小さまざまな刃物だった。

「豚の解体用の施設ね、水を流して掃除しやすいように石の床なんだ」

 そして刃物を手に取ってみる。艶やかな光、刃先を撫でてみればかなり切れそうだ。

 作業台の下にはいくつもの瓶や壜がある。中を開けてみれば香辛料や塩や砂糖などの調味料がたっぷりと用意されていた。

「つまり、豚を料理しろってことか」

 屠殺された豚をここで解体し加工するための施設、水が引かれているのも頻繁に血などを洗い流さなければならないからだろう。

「後、足りないのはあれだ」

 燻製装置だ。それは家にあったものは置いてきてしまったが、一度作ったのだ、もう一度作ることは不可能じゃないだろう。

 小屋の周囲に何か壊れ物があった、多分あれの中に使えそうな部品があるかもしれない。

 アンナは慌てて小屋を飛び出し、材料集めに奔走した。


 


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