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ジャムの日

 アンナはガラス瓶とコルクを求めた。

 手ごろな大きさのガラス瓶があれば、瓶詰が作れる。

「コルクに似たものでもいいんだけど、知らないかしら」

 ゴロウアキマサはコルクを見たことがなかった。

「木でできているんだけど、とても柔らかいの、なければあれみたいなの」

 そう言ってアンナが指し示したのは蝋燭だった。

「ハゼの実ってこのあたりにあったかなあ」

 ゴロウアキマサが首をひねる。

「ハゼの実って?」

 首をかしげるアンナに怪訝そうな顔をする。

「ハゼの実じゃなくて何を使うんだ?」

「蜂の巣?」

 ゴロウアキマサは仰天した。

「そんなものを使っていたら命がいくつあっても足りないだろう?」

 蜜蝋を使うのはゴロウアキマサの故国では一般的ではないようだ。アンナととしても蝋燭にそんなものをヒョイヒョイ使えない。 

 普段は豚の脂を使って明り取りをしていた。

 だが、果物の瓶詰を作るときは蜜蝋でなければならなかった。獣脂は臭いがうつるのだ。

 結局蝋燭屋に蝋燭を買いに行けばいいということになった。

 臭いを確認したが獣脂を使っていないようだ。


 工房ないには大量の金属パイプが転がっている。

 そのパイプには恥に大小の数字が刻まれている。

 蒸気機関者は蒸気を使って動く。そのため蒸気を通すためのパイプが必要不可欠なのだ。

 太さも長さの様々な金属パイプを金属所定の位置に並べていく。

 茶色い髪のマックはそのパイプを軽く指ではじく。

 いくつものやけどに覆われた手を見下ろした。

 この膨大なパイプを組み合わせてこれからボイラーを造るのだ。高温の蒸気を通すためにパイプには相応の耐熱性が求められる。

 耐熱性のある金属、そこからまず始めなければならなかった。マック一人ではまず完成しなかったであろう作業だったが。

「おい、差し入れ」

 彼の相棒である一人が現れた。

 異国の鍛冶屋の過去を持つゴロウアキマサ。過去の死亡年齢は彼のほうが上だったが、現在の肉体年齢はマックのほうが上。

 そのためか、年齢のことはこだわらないようにしようとお互いに約束しあっていた。

「アンナが持って行ってやれって」

 そう言って渡されたのは封をされたガラス瓶だった。

「果物の瓶煮込みだと」

 アンナは平たい大きな鍋にひたひたに水を注ぎ、そこに果物を詰めた瓶を並べた。そして火をつけて湯煎にしてある程度火が通ったらと化した蝋燭を注いで固めた。

「こうしておくと何年でも持つのよ」

 そう誇らしげに語る。

「ジャムか、しばらく置いておくもんだなこれは」

 ジャムにすれば、しばらく熟成を待たなければならない。

「そういうもんなのか?結構おいしそうだったけど」

 ゴロウアキマサは首をかしげる。

「これから組む作業だ、ある程度終わったら彼女もつれてくるといい」

 マックはそう言って工具を取り出した。

 


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