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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第5章 牡蠣は熱々のオリーブオイルをぶっかけて食うに限る
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◆◆⑭ウラジミールとタウリのお使い◆◆

「はあぁぁぁ▪▪▪▪」


見れば見るほど見事な断面ですぅ▪▪▪


しかも、崩れにくいように角度を付けてますねぇ▪▪▪


まあ、軟らかい地層が崩れているのは、致し方ありませんか?


「ウラジミール殿。」


「はい、何で御座いますか?」


このカスパル様も何か特殊なお力をお持ちなのでしょうねぇ。

この『戦車』と言いましたか?

自分で走る鉄の箱なんて格好いいですねぇ。


「あのガンゾウ殿というかたは、何者なのですか?

私が居た世界の未来からやって来たと言っていましたが▪▪▪」


あまり事細かに喋ってもいけませんからねぇ、考えながら▪▪▪


「ガンゾウさんは僕にとっては神様みたいな方ですよ!いえ!誰にとっても神様です!

だって父上を生き返らせてくれたんですから!」


あややややややや!

タウリさん!


「まさかそんな▪▪▪」


「本当ですよ!それどころかデュラデムで意識操作された反乱軍を気合いだけで正気に戻したり!とにかくいろいろ凄いんですよ!」


あややややややや▪▪▪


「ま、まあ!大分誇張されていますがぁ▪▪▪」


「え?ウラジミールさん!そんなごもぐもが▪▪▪」


口を塞ぎましたが、逆に真実味が出ちゃいましたか?


「まあ、多少は▪▪▪ちょっと失礼しますぅ▪▪▪」


狭い場所ですが、ちょっと離れてタウリさんの尖った耳を引っ張りました。


「タウリさん、まだ敵か見方か分からないのですから、ベラベラと情報流してどうするんですか▪▪▪」


「あ▪▪▪」


「あ、じゃ無いですよ▪▪▪」


もう、仕方ありませんねぇ▪▪▪


「もう黙っていて下さいね。護衛ですよね?

立場悪くしてどうするんですか?」


「すいません▪▪▪」


尻尾を丸めて上目遣いされると、イタズラな子犬みたいで可愛いのですがねぇ▪▪▪


「ああ、コホン、失礼しました。多少誇張が有りましたが、ご主人様が瀕死の方を助けたことは有ります。

それは事実です。

そしてその能力は、私も分けていただいてますから、完全に死んでいなければ私でも出きるのですよ。」


「まさか▪▪▪」


「いえ、『呪力』と申しますぅ。魔法と言う方もいらっしゃいますが、ご主人様は、『こんな呪われた力なんか無いほうが良い』と仰有って、『呪われた力』略して『呪力』と呼んでおりますぅ。」


「本当に怪我を治せるのか?」


「はいぃ。」


ああ、展開がまずいですねぇ▪▪▪


「停めろ!」


ああ、なんとなく▪▪▪

わかっちゃいましたぁ▪▪▪


「証明してもらおうか?おい!そこのお前!」


呼ばれたのは少年兵とでも言いましょうか▪▪▪


走ってやって来たその子は、カスパル様の前で直立不動の姿勢ですぅ▪▪▪


嫌な▪▪▪予感▪▪▪


『スパッ!』


カスパル様はなにも言わずにナイフを横に振りました。


少年兵の顔から鮮血が飛び散りました。


「治療してみろ。嘘ならば2人ともこの場で処刑する。」


あややややや、なんて事を!


「大丈夫ですよぉ、タウリさん!押さえてください!」


切られた顔を押さえて転げ回る少年兵を抱き止めてタウリさんに両手を押さえて貰いました。


「大丈夫です、治して差し上げますからね、お願いです、おとなしくしてくださいね、いきますよ!ウラジミィィィィィルッヒーリンッグッ!」


こういう時に、なんと言いますか『ピカーッ』と派手な光がでるとかの演出が有っても良さそうなものなのですが、なにせあのご主人様の力ですから、無愛想なくらい何も無いのですねぇ▪▪▪


と、少年兵が暴れるのを止めました。


いっちょあがりです。


「タウリさん、もう良いですよ。」


押さえ付けていた手を離し、タウリさんは少年兵の脇を支えて立たせました。


「ちょぉっと失礼しますねぇ。」


そう言って血が付いた顔をタオルで拭いてあげました。


ポカンとした表情の少年兵さんですぅ。

何が起きたのかわからないって顔ですね。


まあ、上出来でしょう。


若干▪▪▪

うすぅく傷痕が有りますが、そのうち消えるはずです。


「本当だったのか▪▪▪」


「ああ、カスパル様?疑いをお持ちなら証明の仕方はいろいろ有ります。

このような非道をなされるのであれば、私は帰らせて頂きます。」


いえ、勝手に帰ったら怒られますか?

いえいえ、ご主人様なら分かって頂けるでしょう。


「すまなかった。少々乱暴だったことを謝罪します。」


まあ、少々ではないですけれども▪▪▪


とりあえず、これで私の言葉にも重さが出ますかね?


◇◇◇


血の成せる業とでも言うのか?


ブラウリオは真っ直ぐクリスタの飛び去った飛跡を辿った。


「?」

「!」


これはまずいわねぇ▪▪▪

お兄ちゃんの波動よねぇ▪▪▪


そう、クリスタはブラウリオが放つ強烈な波動を嗅ぎとっていた。


それだけ我を失った『伝承の巨竜』が放つ波動は強烈だった。


高速で飛行するブラウリオが通った跡は、木々が薙ぎ倒され、建造物は崩れ落ち、生物は吹き飛ばされ息絶えた。


「?ちょっと待って?

おかしいよね?

お兄ちゃん何で島の方から飛んでくるの?

ガンゾウ達と一緒に居たはずよね?

しかもあんなに怒り狂って▪▪▪

!島で何かっ!」


クリスタは一転竜姿となって、ブラウリオの強烈な波動目指して飛び上がった。


◇◇◇


ほぉぉぉぉぉぉっっっ▪▪▪▪▪


これはまた凄いお城ですねぇ▪▪▪


山全体をお城▪▪▪

と言うよりは『要塞』化していますねぇ▪▪▪


でも、造りは綺麗ですねぇ▪▪▪


「凄いでしょ?

これは女王陛下がほぼお一人で造られたものなのですよ。」


「▪▪▪」


つまり、この国の女王様は『人間』ではないと言うことでございますね▪▪▪


「ほ!本当ですか!凄いですね!僕には十年掛かっても出来ませんよ!」


▪▪▪タウリさん、千年掛かっても出来ませんから▪▪▪


「でもカスパル様ぁ?」


「はい、何でしょうか?」


「国民の皆様は女王様に任せっきりでお手伝いなされなかったのですかぁ?」


前回デュラデムへ侵攻してきた時は、軍の皆様は忠実な感じがしましたが?

忠実過ぎるほどに▪▪▪


「いえ、大枠を陛下がお造りになられた後は、陛下のお住まいや議場等の公式会場を除いて軍が中心となって仕上げたようです。

その頃は私はまだこの世界に来ていなかったので、それ以上は知らないのです。」


なるほどぉ▪▪▪


戦車はキュルキュルとリズムを刻んで街に差し掛かりました。


何となくですが▪▪▪

違和感を感じますぅ▪▪▪


「ウラジミールさん▪▪▪」


珍しくタウリさんが小声で話し掛けてきました。


「さっきから嫌な音が聞こえてきます▪▪▪

それも何百、何千と、カサカサ虫の足音のような▪▪▪

それから大きな街特有の人が作る食べ物の匂いやお酒の臭い、そう言ったものも含めた人の気配がしません▪▪▪」


「でも見てください▪▪▪

たくさんの人が道を歩いていますよ?

とても忙しそうに整然と▪▪▪」


うーーーん▪▪▪


確かにおかしいですね?


人間と言うよりはまるで蟻や蜂みたいに、感情を持たないかのように働いていますねぇ▪▪▪


つまり▪▪▪


◇◇◇


何が?


何を?


何故飛んでいる?


何故怒る?


何故▪▪▪


父さん▪▪▪


お母さんっ!


全力の咆哮は、極寒のブリザードとなって、その届く限りを凍らせた。


怒りが理性を凍らせつつあった。


「お兄ちゃんっ!」


聞き覚えのある声のような気がした。


「お兄ちゃんっ!」


「▪▪▪」


誰だ?


いや知っている▪▪▪


知って▪▪▪いる▪▪▪


クリスタ▪▪▪


「クリスタ!」


目の前が急に開けた。


その視界にはっきりと妹の姿があった。


「お兄ちゃんっ!」


認めた。

はっきりと認めた。

我が妹クリスタ。


今となってはたった一人の肉親。


「クリスタッ!」


翼を大きく広げブレーキをかけた。


付け根が悲鳴を上げる。


それほどの高速飛行だった。


「お兄ちゃんっ!」


ドォォォンッ!


胸に衝撃が走った。


一瞬、ほんの一瞬だけ息が詰まった。


それは衝撃によるものなのか?感情によるものなのか?

ブラウリオにはわからなかった。

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