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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第4章 アゼッタの酒 テキーラッ!
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◆◆⑳ガンゾウとガンゾウの反則技◆◆

台風接近中につき、「暇潰し」にご利用いただければと思い、珍しく金曜日更新です。

ご一読頂ければ幸いです。


因みに第4章最終項です。

(もう一項、オマケ項あります。)

「臭ぇな▪▪▪」


バルブロが封印されていた陵は、魔物、魍魎、そして狼族戦士の屍に埋めつくされていた。


「父上▪▪▪」


タウリはその場所に膝を突き、震える腕に父の頭を抱いた。


「やってみるか▪▪▪」


何をって?


反則技だよ。


徐に頭を失ったルーベンスの胴体を引きずった。


「な!何をするっ!」


タウリが怒りに眼を吊り上げて牙を剥いた。


「まあ黙って見てろ。」


「ささ、タウリさん、我がご主人様はご遺体を辱しめるような事をする方では有りませんから。お父様の頭をお貸しください。」


ふん、ウラジミール、分かってるのか?

まあ、何となくだろうがな。


「おい小僧。」


「タウリだ▪▪▪」


「そうか小僧、少しお前の血を貰うぞ。」


「な、何をするつもりだ!」


「見てりゃあ分かる。」


狼小僧の指先に傷をつけた。


滴る血をルーベンスの胴と頭の切り口に垂らした。


「ジュッ」


と音を立てて紫色の煙が上がった。


「どれ▪▪▪」


そう言って頭を胴に押し付けた。


そして指先をこめかみにめり込ませた。


「うん、ここか?ん、こうだな。そして▪▪▪ここ、と、これ。ああ、ここもだな。」


ぶつぶつと一頻り呟いてから右の指だけ引き抜いた

左の指はまだ潜り込ませたまま。


「ああ、ここ▪▪▪」


右手で空間を引き裂いた。


「おっと、こっちだ、戻ってこい。」


引き裂いた空間の向こうでムンズと掴んだのは、青白く強い光を放つ珠だった。


「お帰り。」


そう言ってその光の珠をルーベンスの胸に押し当てた。


「ふん。」


そう鼻を鳴らして、ドンッと一つルーベンスの胸を叩いた。


「カッハァッ▪▪▪」


「な、なんと▪▪▪」


「神の所業か▪▪▪」


「ありゃあ、確かに反則技ですねぇ。」


「さすがに参りました。ここまでだとは思ってもいませんでした。」


アンブロシウスがホトホト呆れたように呟いたが▪▪▪


俺の足元には、呼吸を再開したルーベンスが横たわっていた。


切り落とされた首は、多少の痕が有るものの、ほぼ綺麗に繋がっていた。


幾分早い呼吸をするルーベンスの目は、しっかりと見開かれ、涙目で覗き込むタウリの顔を捉えていた。


「こ、これは▪▪▪」


同行した猿族のダブが聞いた。


「まあ、うまくいったな。」


「それだけ?ちょっとガンゾウ?死人を生き返らせるなんて神様だって出来ないことよ?」


「あ?そうなのか?」


「ありがとう▪▪▪ありがとう▪▪▪ああ、父上▪▪▪」


外野のご意見とは別に、この親子は喜んでるみてぇだがな。


「ガンゾウ殿▪▪▪流石に私も怖くなりました▪▪▪」


ディートヘルム、だから何だ?


「なるほどぉ、そういう方法なのですかぁ。」


ウラジミールが一人納得したふうな事を呟いた。


「分かるのですか?ウラジミール殿?」


「はい、ディートヘルムさん。」


で、チラッと俺を見る。


説明したくてウズウズしてるな。


「いいぞ。」


「ハイィ!」


嬉しそうに跳び跳ねた。


「コホンッ!つまりですね、これはご主人様の「治癒」と「再生」、そして「次元操作」の合わせ技なのだと推察いたしますが▪▪▪」


と言って俺を見る。


「続けろ。」


「ハイィ!えぇ、私も授かりました「治癒」と「再生」は、壊れた体組織を修復し、欠けた部分は呪力で組織の増殖を促します。ただ、これだけですと、死んだ身体を繋いだに過ぎません。ところが▪▪▪」


「ところが?(ハモる)」


「ハイィ、ところが完全に死んだ身体は、どうやっても繋がらないのです。たぶんルーベンス様の強靭な身体と、不屈の魂だからこそ復活の可能性が残っていたのでは無いでしょうか?」


「しかしその説明だけでは、可能性がある身体なら、それを繋げれば生き返ると聞こえるが?」


ダブがさらに追求する。

他の面子も頷いている。


まあ、ウラジミールの説明は間違いじゃぁないが、本質的には理解できてないからな。

まあ、理解は無理だわな。


と、空間を開いて葉巻を出す。


んん、少なくなったな。

デュラデムに一旦戻るか▪▪▪


指先に火を灯し葉巻に点ける。


「ハイィ、そこがご主人様ならではの技ですぅ!」


「というと?」


「ご主人様の『次元操作』とは、皆さんもご覧になったように別々の空間を繋いで物質を移動させる技なのですが▪▪▪」


アンブロシウス?流石にこれは出来なかったか?


思考波で問う。


ええ、空間を繋ぐ事は出来ますが、『魂の路』までは流石に▪▪▪


やり方を見てもか?


ええ、見たから出来る技でもありませんでしょう?


こめかみに汗が伝っているな。

鏡でも汗が出るのだな。


一応この姿では食事もするわけですからね。

汗ぐらいかきますよ。


そうか▪▪▪


「その次元操作とは?」


「ハイィ、空間はお分かりですね?今この時に存在する全世界、これは異空間も含まれます。ですが次元とは、時間や場所、物体など諸々を超越した『全て』を指します。そしてそこにはルーベンス様の飛び去ろうとした魂が流れる場所があり、ご主人様はそこからルーベンス様の魂を引き戻したのだと推察いたしますが?」


と、俺をチラ見する。


誉めて欲しそうな顔しやがって。


「概ねウラジミールの説明通りだ。まあ、なかなか言葉にするのは面倒な事だがな。」


「では▪▪▪では!死んだ他の者も▪▪▪」


「無理だな。コイツもあと少し遅かったら魂を掴めなかった。滲み始めていたからな。

繋ぎ止めるのに小僧の血で時間を稼いだ、そのくらい少しの時間も惜しいんだ、条件が揃えば出来なくもないが、まあ、成功することは万に一つ程度のものだな。」


「そうなのですか▪▪▪」


残念な雰囲気はあるが、それでもルーベンスが生き返った事は厳然とした事実だった。


そして皆が畏怖の目でガンゾウを見ていた。


潮時だろうな。

一旦デュラデムへ戻るか。

葉巻を買わなきゃならんしな。


アンブロシウス、おとなしくしてるな。

別に嫌われものになるのは慣れているからな。構わないが、意図的に貶められるのは流石に気分が良いもんじゃねぇからな。



この出来事以降、狼族では、ガンゾウをロボス並みに崇拝することになる。


そしてタウリは、ガンゾウに心酔し同行を申し出るのだった。


◇◇◇


「ゴブリンっ鼻の説明だとやっぱり分からないのよね。」


目の前には巨大な櫓が組まれ、ゴウゴウと炎が立ち上がっていた。

狼族の戦士を送る送り火だ。


音楽でも流れてりゃぁキャンプファイアと間違うようだな。


「まあな。要するにだ、俺の『不死』に起因するもんだっつう訳だ。」


「余計分からないわよ。」


ふん、面倒くせぇ▪▪▪


「俺はこれまで何度も切られ、砕かれ、潰され、そして溶かされてきた。喰われて腹の中でな。だが死なねぇ。俺を喰った奴は、俺の細胞の復讐に逢ってその身体を乗っ取られた。その過程で分かったんだ。」


「何を?」


「生きている奴には魂がくっついている。これは漠然とそう思われてきたから『当たり前』と思われ勝ちだがな、誰かが証明した訳じゃぁねぇ。」


「▪▪▪そうね▪▪▪」


「普通なら切られたり喰われたりしたなら身体から魂が千切れて死んじまう。俺の不死はここに理由が有ったわけだ。」


「つまり?」


「何をされても魂は千切れなかったのさ。細胞の一つ一つに根を張って、取り戻そうとする。そして事実取り戻す。俺を喰った奴の能力を土産にな。」


「で?」


「千切れなかったのは事実だが、千切れようとする『摂理』も働いた。その行く先が『魂の路』だった訳だ。だから、これを実際に見るか行くかしていない奴にはここに『手を突っ込む』ことは出来ねぇ。と言うわけだ。」


「はぁ、ものすごいインチキスキルだって事は理解したわ。だからアンブロシウスは同じ様に空間を移動できるのに、『魂の路』なんて物には手を出せないってことよね?」


フロリネの問いかけに、ただ微笑んでいるだけ。

アンブロシウス?何なら今やるか?


「いえ、私は本当にそんな考えは有りませんから。」


みんなキョトン面しているが、アンブロシウス、いずれやらにゃあならんぞ?


「降参です。」


嘘つけ。


◇◇◇


「何れにしてもバルブロが死んだ訳ではない。アゼッタから消えたとしても、戻らない確約など無い。」


ルーベンスの見送る先には息子タウリの背中が有った。

その先頭に居る人影から派手に煙が立ち上る。


「ルーベンス殿、ご子息はよろしかったのですか?」


ダブが聞いた。


「止めても無駄、いや、むしろあの方達と共にあることでタウリが成長してくれれば、その方が良い。」


「しかし危険では?」


「なに、ここに居てもいつか来る危険を待つだけ。ならば、その危険に打ち勝てる器に成長してくれることを期待したい。」


「なるほど▪▪▪」


「それよりもダブ殿、この先アゼッタを守るためにも我々は今まで以上に緊密に協力していかなければなりません。カル殿を説得するのはお任せして良いのですな?」


そこでダブは大きく溜め息を点いた。


「あのじい様はなかなかの曲者▪▪▪しかし、ここで見たことを無かったことには出来ないでしょう。やるしかありません。」


ルーベンスはウンと頷いた。


もうタウリの影は見えなかった。


一礼して去るダブに答礼して、ルーベンスは息子が歩み去った道を何時までも見送った。


◇◇◇


「お前ら、何で付いてくるんだ?」


「私はご主人様の召使いですから。」


「私もガンゾウ殿に護送される身。」


「私はまだドリアードを見つけていないわ。」


まあ、この3人は分かる。

消極的にだがな。


「ポスカネル、忠弥?」


「忠弥はご同行の許可を頂いたはずです。私は面白そうだから付いていくことにしました。部下はルーベンス様に預かって頂きました。狼族の復興と、サスカールの跡地に土地を探してそこで国の再興を模索させます。」


「はあぁぁ▪▪▪で?狼小僧は?」


「はい!タウリです!」


尻尾振ってやがる。


「クリスタの兄貴は?」


「伝承の巨竜は煙を吐く男と共にあるとの事なので▪▪▪」


「アンブロシウス?」


「私もルピトピアで消極的許可を頂いてますから。」


「俺は独りが良いんだ。」


「諦めてください。誰も貴方に強制された訳ではないのに付いていくと決めたのですから。楽しくやりましょう。」


アンブロシウス?それは最大の嫌がらせだな。


そうですね。


否定しねぇな?


だって嫌がらせですから。


はんっ、笑ってやがる。この腹黒が。


「おい、飯にするぞ、アンブロシウス場所を探せ、ディートヘルム、忠弥、ブラウリオ、獲物を探せ、他の奴等は火の準備と寝場所の確保だ。」


「ガンゾウさん、殿、様、(呼び捨て)は?」


空間呪から酒を取り出した。

ヴァン、ラム、テキーラ!エール▪▪▪


「文句有るか?」


「ありませぇーん!」


皆飛び散った。


ふん、面倒くせぇ。

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