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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第4章 アゼッタの酒 テキーラッ!
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◆◆⑭ガンゾウとテキーラ◆◆

「ぷっふぅぅ▪▪▪」


派手にではないが、なかなか美味そうに噴かすじゃねぇか。


目の前で猿族の長老カルが、俺がくれてやった葉巻を美味そうに噴かした。


「なる、ほど▪▪▪煙、の正体は▪▪▪葉巻▪▪▪か▪▪▪」


「あんたらが言う伝承のなんちゃらなんて俺は興味無ぇ。吸いてえから吸ってるだけだ。」


「む、む、そうか▪▪▪しかし▪▪▪この、葉巻▪▪▪良い物だ、な▪▪▪」


「だろ?美味い飯も美味い酒もあちこちに有るが、葉巻だけはデュラデムじゃねぇと、こうはいかねぇ。」


話の分かる長老さんじゃねぇか?


「わかっ▪▪▪た、通行▪▪▪を許可し▪▪▪よう▪▪▪」


「本当ですか!ありがとうございます!」


ポスカネルが嬉しそうに手を胸の前で握りしめて喜んだ。


「いや▪▪▪一つ条件が▪▪▪ある▪▪▪」


「何だよ爺さん?固え事言うなよ?」


「い、や、ヴァンパイア▪▪▪の事では、ない▪▪▪」


「じゃあ何だよ?」


「む、ガンゾウさん、とやら、貴殿は、残って、貰いたい▪▪▪」


「何でだよ?」


「む、間も無く▪▪▪伝説の、巨大竜、が来る、はずじゃ▪▪▪」


「だから?」


「魔王、バルブロの▪▪▪復活に備え、たい。お力、を▪▪▪お貸し、願い▪▪▪たい。」


「そんなつまらねぇ事で足を止めたくねぇよ?それにな、その巨大竜っつうのはコイツだろ?」


そう言って左手を鏡化して、アンブロシウスの目に映るブラウリオを映し出して見せた。


そこには、白竜族のぺスターと共に居るブラウリオが居た。


「おおおっ!」


猿族の重鎮連中からどよめきが上がった。


ガンゾウが鏡化したことにも驚いたのだが、何よりもブラウリオの圧力を感じ取っていた。


「コイツらはもうすぐアゼッタに上陸する。ここに着くのは四、五日後だろうな。俺は先を急ぐからな。留まるつもりはねぇ。」


「何を、そこまで、急ぎな、さる?」


「んなこたぁ決まってる。早く美味い米が食いてぇんだ。」


場が鎮まった。


「ああ、すまないね?もう一度言ってくれないかな?」


重鎮の一人が半ば顔を引き攣らせながら聞いた。


何度でも言おう。

「早く美味い米が食いてぇんだ!」


◇◇◇


ああ、ガンゾウさんはやっぱりガンゾウさんですね。


まあ仕方ないでしょう。


「何が仕方ないのですか?」


口に出ていたみたいですね。


「いえ、ガンゾウさんはブラウリオさん到着まで待たない、と言うよりも、この伝承のバルブロ退治には、砂粒程の興味も無いようですね。」


「そうなのですか▪▪▪嫌な者を無理矢理巻き込むことは出来ませんからね。」


ブラウリオさんは物分かりが良いのか、ノンビリ屋なのか?


「しかしブラウリオ様、伝承によれば巨大竜と煙を吐く男が居てバルブロを葬れると有ります▪▪▪ブラウリオ様のお力をもってすれば安心なのかもしれませんが、それでも伝承に背く考えは持てませぬ。」


「むう、しかし嫌な者を無理矢理巻き込めないでしょう?」


「それはそうですが▪▪▪」


そうですね。今更義理人情じゃ動かないかもしれませんね。

義理人情じゃね▪▪▪


「と言うと何か妙案がございますか?」


声に出てましたね。


「簡単です。アゼッタの美味いものを集めれば良い。ガンゾウさんを動かすならば、『飯』、『酒』、『葉巻』の三点です。」


「そんな事で▪▪▪」


「まあ、騙されたと思ってやってみて下さい。連絡は私がしますから。」


◇◇◇


『ガンゾウさん?』


『あ?なんだ?』


『私達が到着するまでお待ち頂けませんか?』


『やだね。』


『そうおっしゃらずに、ガンゾウさんの好きなものを御用意出きるようですよ?』


『あ?好きなもの?』


『そうです。』


『なんだ?』


『もちろん美味しい料理と美味しいお酒です。』


『▪▪▪本当か?』


『はい、特にお酒は猿族の名物だそうですよ。『アガベ酒』というらしいです。』


「何っ!テキーラが有るのか!?」


ああ、ガンゾウさんの目を通して見える猿族の方々がポカンとしてますね。


『猿族の方々に聞いてみて下さい。テキーラ?ですか?ガンゾウさんの元居た世界ではそう呼ぶのですか?こちらではアガベ酒と呼ぶそうですよ。』


「おい!爺さん?」


「な、なんじゃ?」


ああ、長老さんを掴まえて爺さんは失礼ですねぇ。


「テキーラ、いや、アガベ酒ってぇのが有るのか?美味いのか?」


「?」


「私から応えよう。」


ダブさんですか?お酒好きそうですねぇ。


「アガベ酒は猿族では盛んに作られている蒸留酒だ。アガベという植物が、この小高い山々が連なる我等の土地では良く育つ。数年をかけて育てたアガベから球根を取り出して丁寧に蒸し上げる、これを砕いて、水と酒の素を加えて発酵させるのだ。作り手其々に工夫を凝らして特徴あるアガベ酒を作るのだ。」


「正にテキーラじゃねぇか!飲みてぇ!」


「▪▪▪我等、に▪▪▪力を、貸してくれ、るなら▪▪▪いくらでも▪▪▪飲んで頂こう▪▪▪」


「おう!良いぜ!テキーラ!ライムは有るのか?」


「ライム?」


「こんな果物だ。」


ガンゾウさんはまた左手を鏡化して、ライムを映しました。


「あるぞ。」


ダブさんはそう言うと、部下に指示してライムを含めた沢山のフルーツを篭に入れて持ってこさせました。


「良いじゃねぇか!」


ガンゾウさん、ライムを一つ手にとって香りを嗅ぎました。


「っつう訳だから、ポスカネル、忠也、お前らは先に行け。」


「ガンゾウ殿!ならば我等も共に▪▪▪」


「一刻も早くサスカールに行きてぇんじゃねぇのか?」


「ガンゾウ様、私達は既に国を失いし者▪▪▪望郷の念は有りますが、ガンゾウ様と共にあろうと付いて参りました。急ぐ理由も有りませんし、お供させてください。」


「食い扶持はどうする?猿族の縄張りだぞ?」


「な、ら、ば▪▪▪」


長老さんに何か案が有るようですね。


「そなた、達を、傭兵として▪▪▪雇おう▪▪▪」


「長老っ!」


「もと、もと、アゼッタだけ、でなく▪▪▪他の、大陸からも▪▪▪傭兵を、集めよう、と、話していた、ではないか▪▪▪ヴァンパイアでは、あるが▪▪▪バルブロに、土地を逐われた、身だ▪▪▪怨みも、有ろう▪▪▪いかがか?」


「ありがとうございます。アゼッタの為になるならば、お断り出きるはずも御座いません。何分長い年月海の底に身を隠しておりました。今の事情に疎い事も有ろうと思いますが、何卒お導きください。」


そう言ってポスカネルは頭を下げた。

こうなっては猿族は反対するわけにいかず、ポスカネルの臣下達も、反論する事も憚られた。


「そうかい。ならポスカネル達の事は任せたぞ?」


ガンゾウさん、そう言って長老さんに相槌をうたせました。


「で!テキーラだ!」


『その前にガンゾウさん?』


『あ?何だよ?』


『これを見て下さい。』


左手を鏡化して、眠らせているベルギッタさんを映しました。


『?誰だ?』


『ベルギッタさんです。』


『?ああ、火傷女か?火傷が消えてるな?』


『はい、ちょっと協力頂こうかと思いまして、ウラジミールさんに完治して頂きました。』


『そうかい。まあ、任せるよ。』


『ありがとうございます。それと、一応の結論が出たなら空間呪で行っても良いのですが?』


『何か考えてんだろ?任せるよ、早くテキーラ飲みてぇんだ。それと、悪知恵も程ほどにな。』


ありゃ、バレてました。


『では、少し寄り道して行きますね。』


『おう。』


◇◇◇


「ガンゾウさんは猿族の領地で待っててくれるそうです。それから、ガンゾウさんに同行していた旧サスカール王国の姫様が、彼女の臣下共々傭兵として雇われたようですよ。」


「アンブロシウス様?どのようにしてご連絡を?特段何かをしていた様には見えませんでしたが?」


「それはですねぇ、ご主人様はアンブロシウス様の欠片を飲み込んで同化されていますので、意識を向ければ意思の疏通を図れるのですよ!」


と、ウラジミールさんが誇らしげに喋ります。


「かく言う私もご主人様と繋がっていますから、ご主人様の呪力は使い放題なのですよぉ、もっとも、私がいくら使おうがご主人様の呪力が尽きる事はありませんが。」


「また自分の力でもないのに自慢気に、いけ好かないゴブリンっ鼻よねぇ。」


またまたフロリネさんが喧嘩を売るような事を。


「はぁ、そのゴブリンっ鼻に船酔いでゲロゲロしていたのを助けられたことなど忘れちゃったのでしょうねぇ▪▪▪ミミズ程の脳ミソも無いのでしょうねぇ▪▪▪可哀想▪▪▪ああ可哀想!」


「こ、こ、このっ!」


「はいはいそこまで。」


ディートヘルムさんナイスです。


「今はそんな事よりも重要な事が有るようですから、アンブロシウス殿の話を聞きましょう。」


ウラジミールさんフロリネさん、お互いにあっかんべーですか?

子供ですね。


「アンブロシウス殿、それで我々は何処へ?」


「はい、ディートヘルムさん、私達は一足先にバルブロが封印されている場所へ向かいます。」


「!!!」


「それは何処ですか?」


「はい、ディートヘルムさん、アゼッタの北方、狼族の治める土地です。」

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