◆◆⑩ガンゾウと忠也◆◆
使い慣れたエディターアプリ不調で、取り合えず別のエディターで作成してますが、慣れてないのでデータ飛ばさないかビクビクしながら書いてます▪▪▪
基本的に週一回は更新する予定です。
感想頂けると嬉しいです。
突っ込みも大歓迎です。
「ぶえっくしっっ!」
「ガンゾウ殿?風邪ですか?」
「んな訳ねぇだろ?
おおかたアンブロシウス辺りが悪口叩いてんだ▪▪▪」
その通りだった。
「アンブロシウス?かの伝承の竜王ですか?」
ポスカネルが興味深そうに聞いた。
「伝承?知らねぇな。
つぅかよぉ?腹減らねえか?」
見れば、ポスカネルに続く家臣団は、フラフラと重そうに足を引き摺りながら!その隊列は延びに延びていた。
「忠弥!」
「はい!御主君!」
「あ?何だ?御主君?」
「あ、いいえ、あの▪▪▪」
「まあ良い、日本の諺にこんなのが有ったなぁ?『腹が減っては戦が出来ぬ』ってな?」
「はて?私は聞いたことが有りませぬが▪▪▪
しかしその通りです!腹が減っては戦が出来ぬ!
その通りです!」
「ならよ?この辺りに狩り場か釣り場は無えのか?」
「ご覧の通り砂漠のど真ん中▪▪▪
居るとすれば砂漠蟹くらいなのですが▪▪▪」
「おお!蟹か?良いじゃねえか?」
「ただ▪▪▪サイズが▪▪▪」
「小せえのか?」
「いえ、巨大でしかも群れで行動し▪▪▪獰猛です▪▪▪」
忠弥の視線が明らかに俺の頭上に動いた。
振り返ると、巨大な蟹がビクビクと目を振り動かしながら俺を見下ろしていた。
◇◇◇
『ドゥッボォワァァン!ドゥッボォワァァン!バフッ!』
派手に砂を吹き上げながら、地中からデッカイ蟹の群れがわらわらと湧いてでた。
「おおっ!これが砂漠蟹か!」
なんつうか、波打ち際に潮の満ち引きに合わせて橫歩きする蟹に似てるな?
デッケェけど▪▪▪
「こりゃ食いきれねえな?」
なんて忠弥とポスカネルを振り返ったが、その後ろに不規則に並んでいた家臣たちが、蟹に挟まれて持ち上げられ、どんな構造なのかわからねえ口に運ばれて擂り潰されていた。
ポスカネルは、頭髪を逆立てて蛇達を起こしたが、蟹には効かなかった。
「おい!ポスカネル!お前の子分を石にしちまうぞ?止めとけ!」
「で!でも!」
「仕方ねぇなぁ▪▪▪」
まあ、概ね人間に戻っちまってるからな。
中にはあの山犬野郎みてぇな奴も居るが▪▪▪
まあ、このサイズじゃな▪▪▪
俺は翼を展開して宙に舞った。
「いち、に、さん▪▪▪五十は居るな▪▪▪さて▪▪▪」
バチィィィンッ!と両手を胸の前で叩き合わせた。
その衝撃波で蟹どもの動きが止まった。
まあ、多少の巻き添えは仕方ねぇなぁ。
「息がありゃぁ治癒掛けてやるから!あとはオメェ等の運次第だっ!『雷土』!」
天に突き上げた両手の指先から上空に稲光りが走った。
一瞬の後、上空に集約された光の球から激しい轟音と共に雷が砂漠蟹目掛けて突き落とされた。
『バチィィィンッ!バチィィィンッ!バチィィィンッ!』
正確に砂漠蟹の数だけの雷が落ちた。
砂漠蟹は煙を上げて動きを止めた。
周囲には香ばしい香りが漂った。
◇◇◇
「うめぇか?」
「はい▪▪▪美味しいです▪▪▪」
「泣きながら食うんじゃねえよ?息が有った奴等は治してやっただろうが?」
「でも、でも▪▪▪」
「貴様ぁ!姫様を泣かせるんじゅぶぐるおうわぁっ▪▪▪」
山犬野郎も死にかけてたが、仕方ねぇから治してやった。
まあな、二十人ばかし食い殺されちまったからな。
俺のせいじゃねえぞ?
無計画に付いてくるのが悪い。
「分かっていますから▪▪▪」
「ああ、口に出てたか?
まあ、日も落ちたからな。
食って寝ろ。
明日も朝から歩くぞ。
めんどくせえと置いていくからな。」
ポスカネルは、俯きながら涙ぐみながら必死に蟹を飲み込んでいる。
まるで食われた奴等を我が身に移し代えようとしているようだな。
なんて考えるのに0.000001秒、いや、計ってないからわからんな。
◇◇◇
「ガンゾウ殿▪▪▪」
「あ?何だ?」
俺は睡眠を必要としない。
生身の人間だった頃の習慣で、「寝た」という充実感を得るために寝ている▪▪▪寝たことにしているだけだ。
で、就寝中の俺に忠弥が声をかけた。
俺にはその気はねぇぞ?
「はい、私にも有りません。」
声に出ていたようだな。
「そうか。で?何だ?」
でかい図体をモジモジさせて言い澱む。
「だからその気はねぇって!」
「違います違います!あの、昼間の件で▪▪▪」
昼間の件?
「あの、御主君と▪▪▪」
「ああ、ああ?で?」
「ポスカネル様よりお暇頂きました▪▪▪」
「そうなのか?」
「ポスカネル様が、ガンゾウ殿に仕えなさいと▪▪▪」
「要らん。」
即答した。
「え?」
「要らん。」
「まだ▪▪▪」
「要らねぇものは要らねぇ。」
「ま、待って下さい!」
「待たねぇ。誰かに言われたからとか気に入らねぇ。顔も見たくねぇ。」
忠弥は自分の失敗を覚った。
「申し訳ありません!」
忠弥は土下座した。
額に小石が食い込む。
「貴方に!ガンゾウ殿に惹かれる私を見てポスカネル様がガンゾウ殿に仕えなさいと▪▪▪
私の心を▪▪▪」
大の男が哭くんじゃねぇよ▪▪▪
「俺は由井正雪じゃねぇぞ?」
「はいっ!」
「俺は気儘だぞ?」
「はいっ!はいっ!」
「部下とか臣下とか要らねぇ▪▪▪」
グッ!と忠弥の両肩に力が入った。
「だが、付いてきたいなら付いて来れば良い、まあ、ウラジミールに話を聞けば良い。」
「そ、それは▪▪▪それは召し抱えて頂けると?」
めんどくせえな。
「だぁかぁらぁ!上とか下とか嫌なんだよ!まあ、だからと言って『仲間』とか言うんじゃねえぞ?虫酸が走る▪▪▪」
「では?何と?」
「何とじゃねえ。俺はカンゾウ、お前は忠弥だ。そうだろ?」
「は、はいっ!カンゾウ殿!」
んーっ、まあ『殿』はしゃぁねぇか?
「あ、私はカンゾウ殿と同じ世界に居ましたから大丈夫ですが、他の皆さんと同じく『ガンゾウ殿』とお呼びしたほうが良いでしょうか?」
どうでも良い。
「勝手にしろ▪▪▪」
「はい!勝手にします!ガンゾウ殿!」
また一人変なのが増えた。




