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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第4章 アゼッタの酒 テキーラッ!
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◆◆⑦アンブロシウスとアンブロシウスの名前◆◆

「客人、覗き見は感心しませんな。」


おっと、見つかってしまいましたか。


まあ、直接聞くのが手っ取り早いですからね。


「すいません。特に覗き見が趣味というわけでは無いのですが、何せ軟禁状態ですから出口を探そうかと思った次第なのです。」


アンブロシウスは壁に掛けてあった巨大な姿見から抜け出た。


「うん、それはすまないと思ってますが、簡単に結界を解くわけにもいかないのですよ。」


本当にすまなそうにブラウリオは俯きかげんに頭を掻いた。


「まあ、せっかくいらっしゃったのだからお茶でも如何です?それともお酒の方が良いですか?」


「では、お言葉に甘えてお茶を▪▪▪」


そう伝えると、ブラウリオさんはにこりと微笑んで大きな身体を丸めるようにして茶器を取り出し、お湯を沸かしてお茶を淹れてくれました。


◇◇◇


甘く香ばしい香りが鼻腔をくすぐります。


一口啜ると、甘やかな苦味が舌の表面を撫で、喉を通りながら呼気に香りを馴染ませて鼻から抜け出ます。


う~ん、至福ですね。


「本当にこの島のお茶は美味しいですね。」


「ありがとう。でも、もう作れなくなるかもしれない▪▪▪」


「結界を張っている理由と繋がりますか?」


「はい▪▪▪」


「この島にちょっかい出しているのは「バルブロの手下」ですか?」


そう言うと、ブラウリオさんは驚いたように目を剥いて私を見ましたよ。


「実は私達もここに来るまでの間、何度か彼らにちょっかい出されてきたのです。」


「▪▪▪アンブロシウス殿と申したか?」


「はい。」


「古の英雄、「ガストーネ」はご存じか?」


「英雄かどうかは知りませんが、私を作ったのがそのガストーネですから。」


「!」


驚いて急に立ち上がったブラウリオさんは勢い余ってテーブルを倒しかけました。


私は頂いた紅茶を溢さぬように素早くカップを持ち上げました。

溢れずにすんで良かったです。


◇◇◇


青竜島、王城の一室に青竜王アレクサンテリ以下重臣達が集っていた。


普段アレクサンテリが座る王座には、アンブロシウスが座っていた。


「あの?居心地が悪いので下りても良いですか?」


「いえいえ!滅相もない!アンブロシウス様!そのお名前は、我等が伝説の「竜王アンブロシウス」様のもの!

竜王アンブロシウス様の盟友ガストーネ殿が、竜王アンブロシウス様の仇を打ってバルブロなるものを封印した後、自らの盟友の名前をお付けなされたというのであれば、これは間違いなく我等が伝説の竜王アンブロシウス様そのものであると!

ならば、我等竜族は!貴方様を下に置くことなど出来るわけが御座いません!」


んん▪▪▪

ややこしいですね。


「まあ、名前はそうですが、私はガストーネの呪力の塊みたいなものですから、そちらのアンブロシウス様とは関係が無いかと▪▪▪」


「であればこそです!竜王アンブロシウスは、その心臓と左目をガストーネ様に捧げました!つまり!ガストーネ様はアンブロシウス様と同義なのです!」


これは否定しても埒が明きませんね。


「ねえねえアンブロシウスゥ?」


「これっ!クリスタ!気安い!」


「え?良いじゃない?だって私達ずっと一緒に旅してたんだから、私とアンブロシウスは仲間▪▪▪いいえ、もう親友ね!」


ははは、クリスタさん、お母様に小言を言われたお返しですか?

少々大人気ないですね。


「まだ子供だから良いの!」


「あ、声に出てましたか?」


「ガンゾウと一緒ね。ところでウラジミール達はどうしたの?」


「彼等なら暇潰しに散策に出ました。」


「そう?まあ、彼等なら大丈夫かな?」


「ん?何がですか?」


「ええ、この島はね、竜族は安全だけど、人間やエルフだと食べられちゃうかな?」


「誰にですか?」


「んん▪▪▪いろんな奴▪▪▪」


◇◇◇


「ハアッハアッハアッ!」


しつこいですね▪▪▪


ただヒーリングして回復呪をかけてあげただけですよ?

むしろ感謝してください?


ウラジミールは、根っこが足になったような二足歩行のチューリップに追いかけられていた。


「もう!しつこいです!怒りましたよ!

ウラジミール!ソードッ!」


呪を編み上げて剣を構成して走るチューリップを横薙ぎに切り捨てました。


「せっかく元気にしてあげましたのに、恩を仇で返すような事を▪▪▪」


ホッとしたのも束の間▪▪▪


「ボコッ!」

「ボコッ!」

「ボコッ!」


あちこちから真ん中に歯が生えた口を持ったお花が咲き乱れてきましたねぇ▪▪▪


「あぁか、あぁお、きぃいろぉ、どぉのぉはぁなぁみぃてぇもぉ▪▪▪」


「怖いですゥ!」


ダッシュでコテージに向かって走りました▪▪▪



◇◇◇


「ところで貴女?フロリネ?」


「なぁに?」


「ここまで良く来れたわね?途中でオークとかゴブリンに襲われなかったの?」


「▪▪▪え?」


「だからね、オークとかゴブリンに▪▪▪」


「▪▪▪居るの?」


「ええ、沢山。」


「青竜の島よね?」


「そうよ。だけど青竜しか居ない島では無いわ。」


何か絶望的に怖気が走る話なんだけど▪▪▪


「私はこの森を預かっている管理者だからね。彼らは襲ってこないけど▪▪▪

貴女は▪▪▪

ねえ?▪▪▪」


やめてやめてやめて!


アンブロシウスゥ!助けてよぉ!


◇◇◇


これだけ海岸線に生物ご居ないとなると、生態系が壊れているかもしれませんね。


何でしょう?


病害ならば一切合切種別を問わずにというのは頷けませんね▪▪▪


お?何か動くものが居ますね?

何でしょう?


形が▪▪▪?

黒い水?


「ああ、なんだ、スライムですか?魔物でも何でもない奴ですね。」


と、思って背を向けた途端▪▪▪


いきなり足首を捕まれて倒れました。

それはそれは物凄い音をたてて『ズッダァァァン!』てな具合に倒されました。


直ぐに足元からヌメヌメした感覚が登ってきました。

振り向くと、あのスライムが全身を飲み込もうとしています。


それも、あちこちから集まってきて私にのし掛かってきました。


あっという間に飲み込まれました。


暴れても水のなかで溺れるように手応えが有りません。

ガンゾウさんに付けてもらった「エラ」も、スライムの中では役に立ちません。


困りました。


なんて考えていられたのも0.01秒、いえ、計ってないから分かりませんが、意識が飛びました。



◇◇◇


「ここは?」


目を覚ますと、重厚な装飾が施された広間の固く冷たい床に寝かされていました。


「ああ、良かったですぅ!ディートヘルムさん、生きていましたぁ!」


「ウラジミール▪▪▪殿▪▪▪」


「危なかったですね。あのスライムは自然界の粘性生物ではなくて、魔物が連れ込んだものらしいのです。ほとんど戦闘能力は無いのですが、補食▪生存欲求の塊のようで、生きているもの全て、いえ、鉱物以外は殆どを溶かして吸収してしまうらしいですから、ディートヘルムさんも危ないところでした。」


「アンブロシウス殿▪▪▪」


「私達もね、危ないところをアンブロシウスが空間呪で助けてくれたの。もっとも私は一人でも帰れたけどね。」


「フロリネ殿▪▪▪」


「はぁ▪▪▪ホントにデカ尻エルフの嘘八百には辟易しますね▪▪▪

助け出された時は涙と鼻水を流しすぎてシワシワに枯れそうになってましたのにぃ▪▪▪」


チラリと横目でフロリネさんを見たウラジミールさんの額に、クナイが一つ、深々と突き刺さりました。


おお、最近は尽く避けていたのですが、今回はフロリネさんの怒りが勝ったようですね。


「まあ、ともかく、皆さん無事で良かったです。 」

最近出番が減ってますねぇ▪▪▪

出演者が増えましたから仕方ないのかもしれませんが、もっとのんびりしたいものですねぇ。

ご主人様ともはぐれたままですし▪▪▪

デカ尻の御守りも面倒なんですよ。


ほらまた涙と鼻水だらけになってぇ▪▪▪


もう仕方ないですねぇ▪▪▪


ああ、ディートヘルムさん、やっぱり今度ご主人様に弄ってもらいましょう。


貴方が死にかけると私の仕事が増えますから▪▪▪


もう▪▪▪


「ウラジミールヒーリンッグッ!」


はあ▪▪▪

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