◆◆⑯ガンゾウと鮫顔◆◆
で?
このロールプレイングは何時まで続くんだ?
飽きたぞ?
面倒だな。
次も同じならもうまとめてぶっ殺すか▪▪▪
か?ではなく、か▪▪▪
つまり決定事項ね。
分かったか?
◇◇◇
「さて、皆さん、ガンゾウさんイライラし始めたようですので、この海域を至急脱出しなければならないのですが▪▪▪」
「ちょっと待ってよアンブロシウス?クリスタが作ったこの氷山って永久凍土の呪が掛かってるのよ!クリスタが起きないと船を動かせないわよ!」
「そうですねぇ。もうそろそろ最低限の回復は出来ていると思うのですが▪▪▪
クリスタさん、クリスタさん、起きてくださいませんか?」
ダメですねぇ。ピクリともしません。
「アンブロシウス殿の空間能力で氷山ごと何処かに移動できないものでしょうか?」
「流石に大きすぎて重すぎますねぇ。ガンゾウさんなら出来るでしょうが、私の力では不慮の事態を招きかねません。」
「不慮の事態って?」
「はい、空間に挟まって抜けられなくなり、身体半分この世界、あとの半分別世界▪▪▪なんて事になりかねません▪▪▪」
「ううんんんんっ▪▪▪」
皆さん唸ってしまいました▪▪▪
あ?
ウラジミールさん?
どちらへ?
「▪▪▪▪▪▪」
氷に手をついて何か言ってますが?
ちょっと嫌な予感がしますね▪▪▪
「あ、出来た▪▪▪」
そうウラジミールさんが言った途端、一瞬で氷山が消滅しました。
消滅ではなく、『溶解』つまり『水』に戻ったのですね。
結果▪▪▪
「キャァ!ウラジミール!こら!気持ち悪い顔!何やらかしたのよ?!」
私を含め、皆さん船の外に居ましたから、海にドボンでした。
◇◇◇
まあな、ウラジミールは俺の影響をダイレクトにうけてるからな▪▪▪
予想できない力を発揮したとして不思議は無いのだがな▪▪▪
にしても、クリスタの呪を解くなんざぁ、並大抵のこっちゃぁないのだがな。
さて、お次は?
事と次第によっちゃぁこの城丸ごと消滅させるからな▪▪▪
とか思いながらのんびり階段を上がった訳だがな。
お約束の無駄に装飾されたでっかい扉が立ちはだか▪▪▪らない▪▪▪
向こうから開けてくれた。
で、中に入ると▪▪▪
おぅっ!今度はウジャウジャいるじゃねえか?
しかし下の三匹と同じ奴も随分居るな?
そりゃそうか?
ウツボもアサリもウニも海の中にゃあごろごろ居るわけだからな▪▪▪
▪▪▪
▪▪▪
っつう事は何か?
『美味しい食材』を『汚ぇ魔物』に変えて『食えなくした』って訳かい?
「許せねぇ▪▪▪」
「ハンッ!ナァにが許せねぇのかな?小物の魔人風情が?
弱えの二三匹潰したぐれえで意気がってんじゃねぇぞ?」
ああ、お前、鮫顔▪▪▪
「ああ、面倒くせぇ▪▪▪おい、お前がポスターカラーとか言う海限定の小者か?」
イライラ▪▪▪
葉巻を出し火を着けた。
イライラが無意味に葉巻を短くする。
パスッパスッパスッと煙が吐かれる度にみるみる葉巻は短くなる。
「てめえ!ポスカネル様に対して無礼な▪▪▪」
とか言い始めたから魔滅の剣を抜き放った。
背中に担いだ魔滅の剣を右上から袈裟懸けに切り着けた。
が
意外なことに鮫顔はそれを三ツ又のジャベリンで受け流した。
「ほおっ?そのジャベリン、魔に属する物じゃあねえな?」
そうだとしても成長した魔滅の剣で切断出来なかったのには驚いた。
前にキュクロプスの棍棒を切り落としたのは獅子丸だったはずだ。
それよりも強力に『魔物属性』を切り裂く魔滅の剣の一撃を跳ね返しやがった。
魔滅の剣は魔物や神属には効果覿面だが、それ以外は斬れない。
が、意思を持たない物質、石や木、鉄等の鉱物は「物理的」に負けなければいくらでも斬れる。
刃毀れしても、自己修復する。
もっとも、研いでほしいらしく、研がないと切れない状態のまま拗ねてるのだがな。
意外に面倒な奴なんだよな。
「これはなぁ!ポスカネル様から頂いた『海神のジャベリン』だ!貴様ごときが太刀打ちできるものではないわぁっ!」
おお、やっと少しは骨の有る奴が出てきたな▪▪▪
◇◇◇
「ウラジミールさん、次からは何をするか言ってからお願いできますか?」
空間移動で船に戻り、その後皆さんを空間を開いて助け上げました。
「すいませんでしたぁ、いやぁ、あんなにうまく行くとは思っていなかったものですから▪▪▪」
「な!何やったのよぉ!顔の気持ち悪いウラジミール!」
あ、ウラジミールさん、チラリとフロリネさんを見ましたが無視するつもりですね。
だからですね、そんなことしているから気を引くのですよ?
「何とか言いなさいよ!キモォジミールッ!」
ああ、徹底的に無視ですか?
余計熱くなりますよ?
「それでウラジミールさん?
何をやったのですか?」
「はい、氷山に『治癒』を使いましたぁ。
永久凍土の呪を施されてましたから、それを『治癒』しましたぁ。
そしたら凍結状態が『完治』してしまって水に戻ったっていう訳ですぅ。」
なるほどね。
「何で無視するのよぉっ!」
ほらほら、フロリネさんが拗ね始めましたよ。
「これならアンブロシウス殿の呪力で移動出来ますか?」
ああ、ディートヘルムさんは空気が読めないですね。
「はい、出来ますよ。早速脱出しましょうか?」
と言いながら船の船首に立ち、空間を両手で掴み引きちぎるように爪を立てて引き下ろした。
その空間の裂け目には『海』があった。
「何やってるのよ!早く逃げないと!」
「はい。では行きましょうか?」
勘違いしているフロリネさんには後で説明してあげましょうね。
ではガンゾウさん、頑張ってくださいね。
本当に仕方ない父娘ですねぇ。
間に挟まれる私の身にもなっていただきたいものですわ。
あっ!お兄ちゃん!ちょうど良いわ!
あの二人またやってるのよ!
仲直りさせてあげて?ね?
やだよ、面倒くさい。
ほっとけば良いんだよ。
父さんもかまいたくて仕方ないだけなんだから。
そのうち収まるよ。
でも、ほら、今回はお友達が巻き込まれちゃってるでしょ?
死なれたらそれこそ本当に災害級の喧嘩になるわ▪▪▪
ああ!もう!分かったよ!
ちょっと行ってくる。
お願いねぇ!
そう遠くない未来のとある島での母子の会話でした。




