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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第3章 寿司ネタの宝庫
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◆◆⑪アンブロシウスと初代魔王◆◆

下から突き上げるような衝撃が氷山を揺らした。


その衝撃は2波、3波と続いて氷山を揺らした。


氷山を浮かせても伝わる衝撃の規模からも、ガンゾウさんの無茶ぶりは想像できますねぇ。


『我々も応援に行くべきでしょうか?』


ああ、ディートヘルムさん、ガンゾウさんと一緒に居るのならば、我が身第一に考えないと幾つ命があっても足りませんよ。


「まったくでございますねぇ。」


「おや?声に出てましたか?」


「はい、しっかりくっきりと。しかしなんですねぇ。ご主人様が独り言を漏らすのが我々に伝染りましたかねぇ?」


「そうですね、良くも悪くも影響力の有る方ですからねぇ

。ディートヘルムさん、我々はここでおとなしくしていましょう。行っても足手まといになるだけですから。」


「アンブロシウスさんでもそうなのですか?」


ディートヘルムは、海とアンブロシウスを見比べながら言う。


「ええ、まあ多少は役に立てるでしょうが、あの方は、既に魔王を越える力を待っていますからね、お一人のほうが周りを気にせずに無茶をやれますから。

初代魔王に造られた私だから分かるのですが、初代魔王からこのかた、初代を越える魔王は出現していませんでした。

でもね、ガンゾウさんは既に初代魔王の力を凌駕しています。

ガンゾウさんが魔王を名乗らず、今期の魔王候補を尽く始末すれば、ガンゾウさんは魔王ではなく『勇者』と呼ばれることになるかもしれませんね。」


どことなく嬉しく感じてしまうのは何故なのでしょうか?


「いくらなんでもガンゾウが勇者ってのは無理なんじゃないの?」


フロリネさんが胡散臭げに言いました。


フロリネさん、そんな事を言っている顔は、多少美形なのを不細工に見せますよ。


「ムッ!」


「失礼、声に出てましてか。」


「プフッ!」


「笑うな!顔の気持ち悪いウラジミール!」


クナイが飛びましたが、ウラジミールさんは首を傾げただけで交わしましたね。

ウラジミールさん、伝染るのは独り言だけじゃないようですね。


「勇者っていうのはですね、見た目とか普段の行動ではなくて、結果として人類を救った人のことを言うのですよ。

でも、ガンゾウさんは『魔王』にも『勇者』にもなりたがらないでしょうね。

ガンゾウさんはガンゾウさんなのですよ。」


ああ、初代を思い出しますね。


◇◇◇


「なあアンブロシウス?」


「はい、ガストーネ?」


「何で俺を魔王呼ばわりしやがるんだ?コイツらは?」


「そうですねぇ、結果的に人間達の世界を壊しちゃいましたからねぇ。」


「んなこと言ったってよぉ!絡んできた奴らをぶっ殺しただけだろうが?」


「はい、そのとばっちりを受けちゃったのが人間なのですけどね。」


「仕方ねぇだろう?俺は降りかかる火の粉を払っただけだぞ?」


「はい、その結果何も関係ない人間達を大勢殺しちゃいましたから。しかも『人外の力』でね。」


「かっはぁっ!めんどくせえなぁ!じゃあ何かい?俺は今後人間の敵として扱われるってことか?いやいや、確かに人外の力を使えるが、それだって俺が望んでこの世界に来た訳じゃねぇからな?何で異世界に滑り落ちたら魔法みてぇな力を使えるようになってんだ?俺のせいじゃねえだろ?」


「そうですね。ガストーネ。でも、見てください、この死体の山を。」


目の前には何処までも続く平原があった。

その平原一面に人間、魔物問わず隙間無く死体で埋め尽くされていた。


◇◇◇


ガストーネが、神とでも呼ぶしかない大いなる意思に翻弄され、異世界へ放り込まれた結果、そこには存在していなかった異能の力と限り無く不死に近い身体を手に入れたのですが、それをただの人間達が受け入れることは有りませんでした。


ガストーネは迫害されるようになりました。


本人は、『ただの人間』のつもりでしたからね。


悩んだガストーネは鏡を見ながら自問自答するようになり、ガストーネを写している鏡はガストーネが持つ呪力の影響を受け、その呪力を蓄積するようになりました。

そして鏡の中に私が擬人化されました。

ガストーネは、その私を相棒にしようとしたのです。


『人化』の方法ですか?


ガストーネが「人になれないか?」と聞くので、「なります。」と答えたら成れたのですよ。

大いなる意思としか言いようがないですね。

それだけガストーネが持たされた『呪力』は大きかったのですね。


『呪力』という言葉も、ガストーネが「こんな呪われた力▪▪▪」と言ったことがきっかけでした。


何故私だったかと言えば、単純にガストーネには仲間が居なかったからなのですね。


ガストーネを写し取ったような私は、ガストーネの考えていることが良く分かりました。


人外の力を得て、それをもて余したガストーネは、人間に受け入れられる事は無かったのですねぇ。


かといって、魔物達からも。


そもそも、魔物なんて居なかった人間世界に、ガストーネが転生してきたことによって時空間に歪みが出来てしまい、異空間から『魔物』と呼ばれる、人間にとっての『異形の者』が流入することになってしまったわけですから。


でも、『魔物』達にとっても迷惑この上ない出来事でした。


何故って?


そりゃ、平和とは言えなくても時空間の歪みに翻弄されて調和を保っていた世界を壊されたわけですからね。


そうそう、平和の定義は人それぞれですよね?


人間にとって、魔物の平和なんて想像がつかないですよね?


だって、他人(同族間)を殺すことは、人間にとっては犯罪でも、魔物にとっては、場合によっては捕食行為な訳ですからね。


ガストーネの出現によって出来てしまった異空間の裂け目は、気まぐれに開き、気まぐれに閉じました。


それは主に人間世界に驚異をもたらしたわけですが、かといって魔物達が自由に闊歩出来る世界でもなかったわけですね。


魔物達が『生きる』には、概ね『瘴気』が必要で、それは人間が呼吸する大気の中には極微量しか無かったのですよ。


ですから、異空間の裂け目(繋ぎ目)が出来ても、魔物達は大挙してやってこれなかった訳なのですね。


そしてこの『裂け目』は、人間には見つけられない物でした。

少なくとも常人にはね。


でも中には霊的感性が高い人もいて、そういった人達が興味本位で裂け目に手を出し、宗教や権力的な利用を始めると、あっという間に『瘴気溜まり』とでもいう『場』が形成され、そこで人間と魔物の『融合』が成されちゃったわけです。


もうそうなると、以前のような『人間の世界』と『魔物の世界』とに明確に区切ることが出来なくなったわけですね。


ガストーネはそれを戻そうとしました。


その結果、人間も魔物も敵にまわし、そして両者の死体を広大な平原に並べることになったのです。


そしてガストーネは『魔王』と呼ばれるようになりました。

ほう?

初代魔王は『ガストーネ』っつうんか?

なかなか強そうじゃねぇか?


何?

俺のほうが強いって?

まあ、最強らしいからな。

死なねぇしな▪▪▪

時間もて余すんだよ。


この間、火傷女に切られてブーツを変えたんだがな?

履き心地が良くねぇ。

今度自分で作るつもりだ。

時間潰しにゃァちょうど良いどろ?


なんて考えるのに0.000005秒。


いや、測ってないから分からんな。

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