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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第2章 トゥナとリソ
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◆◆◆⑮宴2◆◆◆

港町シブルッカ。


ブリアラリア王国においても有数の規模を誇る港町だ。


その港町にあるバザールの広場が、過去に類を見ない程の人で溢れかえっていた。


賑やかに楽器が演奏され、人々は心地好く酔い踊った。


その中心にガンゾウ達がいた。


「いやぁ!あんた!これはなんの祝いなんだ?偉く羽振りが良いじゃねぇか?」


俺の隣に陣取って飲み食いしている男、この港の世話役だと言う。

なんつったか?

ああ、ロベルトだったか?


「ばい、ぞの通りでぶご主人だば。」


ああ、ウラジミール?酔ってるな?


「でんでん酔っでぱぜんがら!ひゃっひゃっひゃっ!」


ああ、笑い方も気持ち悪いぞ。


「ほんと気持ち悪いわね。」


こっちも酔っ払ったダークエルフが、浅黒い顔を赤くして酒をあおっていた。


「フロリネ、船酔いから回復させてくれてのはウラジミールなのよ?もう少し優しくしてあげたらぁ?」


クリスタが丸鶏に齧り付きながら言った。


「それが悔しいのよっ!」


と、また酒をあおるフロリネ。


まあ、好きにしてくれ。


「しかしこのトゥナ!美味いな!俺たちゃぁ長年この町で魚を食って生きているが、ここまで見事なトゥナは初めてだ!仮に掛かったとしても釣り上げられないだろう?それを事もなく釣り上げたってぇから驚きだ!」


ロベルトが鼻の頭を赤くして誉めそやす。


「なあ、おっさん?」


「ロベルトだ。何だ?」


「米を知らねぇか?」


「米?」


「ああ、こんなんだ。」


と言って、俺は空間に田園風景を投射した。


あちこちから悲鳴が上がった。


「お、お前さん?魔物なのか?」


いやいやいや、今更だろう?


「連れを見て何も感じなかったのか?青龍にダークエルフに鏡男と顔の気持ち悪い男だぞ?

仮にそうだとして、マグロを釣って金を出してまで誰彼区別なく宴に招いている俺がお前さんらの敵か?

敵だと言うなら今からでも皆殺しにしようか?」


ちょっとイライラした。


「い、いや、これは俺が悪かった!そうか、だからこんな大きなトゥナを仕留められたのか!」


んー、まあ否定はしないが、納得も出来ねぇなぁ。


「では、わたくしが皆さんに一部始終をお見せしましょう!」


アンブロシウスがそう言って一段高いところに上がった。


と、両の掌を空に向けて無駄に装飾が施された鏡に変えた。


その無駄に装飾された鏡の掌から夜空に映像が写し出された。


それは、俺達が船を買い、改造し、トローリングでマグロを掛け、仕留めて腸を抜く作業をしてまでマグロを運んだ映像だった。


人々は、ガンゾウの時に上げた悲鳴を忘れたかのように歓声を上げながらアンブロシウスの投射した映像に見入った。


「おおっ!」


「へえっ!」


「すげぇ!」


「あっはっはっはっ!」


一番盛り上がったのは巨大マグロが海面から飛び跳ねた映像だったな。


「ところでさっきの「米」は知っているか?」


「んー、あれは「リソ」だろうな。」


「「リソ」?」


「ああ、あんたが見せてくれた絵とはちょっと違うが東回り航路の先にある地方では主食になっているらしい。」


「それはこっちじゃ手に入らないのかね?」


「いや、有るよ。」


「有るのか!」


驚いた。

まさかこんなに簡単に見つかるとは。


「ああ、、この国でももう少し南へ下れば栽培しているが、小麦に比べりゃ不味いからな、あまり人気がないんだ。おーい!カストロ!」


カストロと呼ばれた男はコックだった。


「なんだい?」


「お前さん店でパエジャ出してただろう?この人がリソを探しているらしいんだ。」


聞き覚えのある単語が出てきたぞ。


「パエジャ?」


「ああ、リソに魚介を乗せて炊き上げるんだ。」


「パエリアだな!」


「ん?南部訛りはそう言うな。」


どっちでも良い!


「それを食いたい!」


「お安いご用さ、明日にでも食べに来なよ。この先にある店で蛸壺亭というんだ。」


「分かった!蛸壺亭だな!」


今すぐにでも食べたかったが、無限の時間をもて余す俺には、待つこともまた楽しみの一つなのだ。


などと考えるのに0.00003秒。

いや、測ってないからわからんな。

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