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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第1章 至福のチーズ
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◆◆②ガンゾウと町外れの店◆◆

少し短めです。

飛んで行けば、おおよそ一日かからない距離であろう。


さらに、空間をひん曲げて潜れば一瞬でルピトピア国内に入れるだろう。


だが、不死の体を持つ俺には、『無駄に時間を使う』事が大事なのだ。


合理的な考えは、永遠の時間を持つ俺には大敵だ。


かけられるだけの時間をかけるのが、この終わらない時間を楽しむ唯一の手段なのだ。


というわけで、馬に乗るでもなく、俺は自分の足で歩き出した。


まあ、十日も歩けば到着するだろう。


ギルドを出て、特に何かを準備するでもなくルピトピアへの街道を歩き出した。


しばらく歩いて、町外れにある小さな店に入った。


「婆さん、居るかい?」


俺は店の奥の暗がりに声をかけた。


「ああ、カンゾウかい。いつもの奴だね?」


「ああ、頼む。」


そう言って俺はテーブルの上に大金貨を一枚放った。


婆さんは無言で大金貨を懐に入れ、一抱えもある木箱をテーブルに置いた。


そうそう、ギルドでは俺のことを『ガンゾウ』と呼んでいるが、『カンゾウ』漢字で書くと『勘三』が正解だ。


この世界の言葉では、『カンゾウ』とは発音しづらいらしく、『ガンゾウ』が通り名になってしまった。


まあ、どうでも良い事ではある。


「上物か?」


香りを嗅ぎながら婆さんに聞いた。


「わしがカンゾウに粗末なものを渡したことが有るかえ?」


「そうだったな。」


そう言って俺は渡された葉巻をザックに放り込んだ。


そして一本を取り出して火を着けた。


うん、なかなか良い香りだ。


「今度は何処へ行く?」


婆さんがゴソゴソと足元の箱の中をまさぐりながら聞いた。


「ああ、ルピトピアだ。」


「そうかい、もう何人も帰ってこないらしいねぇ・・・まあ、お前さんならそんなことにはならないだろうが、場合によっちゃルピトピアのほうが迷惑かもしれないねぇ・・・」


そう言いながらキシキシと軋むような声で笑った。


「これはおまけだ、持っていきな。」


そう言って婆さんに渡されたものは、古びた短剣だった。


「婆さん、ボケたのか?俺にはこんなもの必要ない。」


そう、便宜上帯剣している。


まあ、無駄に時間を使う事が大事な俺には、剣術の修練も大事な時間の潰し方だ。


なので、いわゆる『業物』的な大剣を装備している。


その俺に錆び付いた短剣を渡して何になる?


使いようがない。


「まあ、そう言わず持っていきな。婆の誠意じゃ。」


ふむ、道々研ぎながら歩くのも時間潰しにはなりそうだ。


「なら貰っていこう。」


煙を燻らせて俺は婆さんの店を出た。


「ルピトピアね・・・カンゾウでも苦労しそうだ・・・」


そう呟いた婆さんの言葉は、もちろん俺には届いていない。


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