表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第1章 至福のチーズ
23/164

◆◆◆閑話休題ポム▪パイヤソン◆◆◆

「かあっ!こりゃうめえな!」


何がって?

『ポム▪パイヤソン』だ。


「うめえだろ!だがな、それはただのジャガイモなんだよ。」


店の親父が自慢気に言う。


「まあ!中にはチーズを入れたり野菜を混ぜたりするのも有るんだがな、『ポム▪パイヤソン』は基本的にジャガイモだけだ。」


『ポム▪パイヤソン』


ジャガイモを細く千切りにして焼き固めた物だ。


誰にでも作れるものだ。


だが、そのシンプルさ故に売り物レベルに仕上げるには『腕』が必要なんだと親父は言う。


「それとな、ジャガイモも何でも良いわけじゃねぇ、火を入れてホクホク仕上がる奴じゃ駄目なんだ、しっとり水気の多いものじゃねえと固まらねぇ。」


つまりあれだな。

男爵いもじゃ駄目でメークイーンなら良いっつうわけだ。


「親父!俺はヴァンが大好物だが、この『ポム▪パイヤソン』にはこのエールだな!だがチッと残念だ。」


「おいおい!うちのエールに文句でも有るのか?」


と、親父が息を巻く。


「まあ、待てや、おい!クリスタ!」


俺は別のテーブルで鶏の丸焼きにかぶりついているクリスタを呼んだ。


「なによぉ?食事中に呼ばないでよ?」


「ああ、悪いな。ちょっとな、この箱に氷を張ってくれ。出来れば永久凍土の呪も混ぜながらな。」


「お安いご用よ。」


そう言うとクリスタは、1m四方の箱に氷を吐き積めた。


箱の底が透けて見えるほどの純粋な氷だった。


「言われた通り呪を掛けたわよ。普通には溶けないわね。」


そういうと、物理の法則を無視した小さい羽でパタパタと自分の席に戻っていった。


俺は空間呪から細長いパイプを取り出した。

金属のパイプだ。


右手に火力を調整しながら業火を点し、パイプを焼いて氷に突き刺した。


さすがクリスタの氷だ、俺の業火を持ってしても火力を絞るとなかなか溶けねぇ。


それでもゆっくりパイプは氷を貫通していった。


パイプの先が氷を貫通すると、上に出ているパイプの口をエールの樽に繋いだ。


繋ぎ口にはコックを付けてやった。


こうすれば、コックを捻るとエールがパイプに流れ込み、永久凍土の呪を施された氷の中を流れるうちに冷やされるっつう仕組みだ。


早速冷えたエールをジョッキに注ぎ、ポム▪パイヤソンを頬張ってエールを流し込む!


「!!!っ!うめぇっ!」


「おおっ!」


周りから歓声が上がる。


「でわ、私も▪▪▪」


と、アンブロシウスがエールを注ぎ、口にした。


「!」


カッ!と見開かれた目に、驚愕の色が浮かんだ。


「な、何なのですか!これはっ!何百年もの間、いろんなエールやヴァンを飲んできましたが!こんなに美味いエールは初めてです!」


「私も私もっ!」


イヴァンヌまで飛び付く。


一口飲み込む。

カッと目を見開き飲み続ける。


ゴクッゴクッゴクッ!


と、勢いよくエールが喉に流し込まれる。


あっという間に飲みきった。

かと思うと、間髪を入れずジョッキにエールを満たした。


ウラジミールによると、エルフぅつうのはかなりの酒好きらしい。


「この美味さは何だ?ホントにうちのエールなのか?」


店の親父が半ば呆けたように呟いた。


「エールに限らず、炭酸は冷やすに限るからな。」


「炭酸?」


ああ、この世界じゃ、まだ炭酸の概念が無いか▪▪▪


「ああ、この泡を含んだ飲み物の事だ▪▪▪」


とだけ言っておこう。


チーズも美味い。


ウォッシュタイプにシェーブル、青カビも有ったのは嬉しい限りだ。


「おう!親父!この挽肉の煮込み!これもうめえな!」


「だろぉ?角豚の良い奴が手に入ったんだ、なかなかの上物だったぜ!こいつは脂がうめぇんだがな、上手く血抜きをしねぇと臭みが強くなるんだ。苦労したぜ。それにな、何種類もの香辛料とあとはトマテだな!甘味があるトマテじゃねぇとこうはコクが出ねぇ!」


はっ、親父、語るねぇ。


「全くでございますねご主人様。」


「ああ、また声に出てたか?」


「はい!明瞭に。」


「良いじゃねえか!分かってくれる奴に会うとよ、嬉しいんだよ!料理バカなのさ!」


親父が豪快に笑った。


一頻り飲み、食った。


ただのジャガイモのガレットだと思っていた『ポム▪パイヤソン』なんて、料理のやり方一つであの美味さだ。

フライドポテトを懐かしく思ったこともあったが、そんなジャンキーな食い物じゃなく、同じ芋と塩、胡椒だけなのに、格段に美味さが違う。

立派な一品料理になっている。


チーズも美味かった。


良い飯だった。



◇◇◇ポム▪パイヤソンの作り方◇◇◇


ポム▪パイヤソン


ポムはジャガイモ、パイヤソンは『藁の足拭きマット』の意味だそうです。

見た目が似てるかららしいけど、食欲をそそるネーミングじゃないね(苦笑)。


ジャガイモ(メークイン)五個


①出来るだけ細く千切りにする。

②油を引かず、フライパンでジャガイモに粘り気が出るまで中火で優しく炒める。少量の水を加えると、ぬとぬとしやすい。

③出来れば玉子焼き用の四角いフライパンに薄く油を引いて、ぬとぬとになったジャガイモを敷き詰める。

④あとは、厚焼き玉子を作る要領で返しながら焼き固める。

⑤塩、コショウは控えめに、お好みで足してください。


お好みで、最後にパルメザンチーズを振り掛けて焼き目を付けても美味しいよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ