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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第1章 至福のチーズ
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◆◆⑲ガンゾウと雑魚の糞に寄生する虫◆◆

上への階段を上り、上階へ出たが何も居なかった。


罠かとも思ったが、だとしても俺をどうこう出来るとも思えないから構わず進んだ。


その上の階も。


そして最上階まであっさりと辿り着いた。


気が付くとウラジミールも再生して追い付いていた。


呪力の鎧を解くと、ろくろ首の体液は消滅していた。


「ご主人様、あれがペドロです。」


ウラジミールが指差す方向には二人の男と一人の女が居た。


「まん中がペドロ、左の男がアズレート、ペドロの腹心です。右の女は分かりません、初めて見ます。」


ウラジミールが参謀よろしく説明する。


「おやおや?そこにいるのはウラジミールではないか?」


尊大な物言いでペドロはニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべている。


「そうかそうか、エルゼを仕留め損なった代わりにそこな成り損ないを連れてきたのか?」


俺はペドロの横の女に注視した。


『こいつ・・・ちょっとヤベー奴だな・・・』


女が醸す巨大な呪力は、隠そうとしても隠しきれないほどの強さを秘めていた。


『まあ、それでも負けることはないが、多少手子摺るかな?』


「ああ、ウラジミールは頭のなかを弄ったからな。既にお前みたいな雑魚の言いなりにはならんよ。」


女から視線を外さずに言ってやった。


「ざ!雑魚だとっ!貴様!この大司祭ペドロ様に向かいなんたる無礼!」


「ああ、自分に『様』をつけるやつなど『雑魚』に申し訳ないくらいだな。まあ、良くて『雑魚の糞』くらいか?」


ペドロは顔を赤く染めてなにやらわめき出した。


ああ、本当に雑魚程の価値も無い奴だな・・・


何で大司祭なんて地位に就いてんだ?


「それはですねご主人様。」


「ああ、また口にしてたか?」


「はい、明瞭に。」


「で?なんだ?」


「はい、ペドロの家は代々司祭を勤める名門なのですが、それはそれは質素倹約を旨とする国民の尊敬を集める家でありました。」


「そうは見えないがな。」


「はい、質素倹約を強いる父親、先の大司祭デニエス様を暗殺し、立場を利用して増やした財を撒き散らし、今の立場を買ったのです。」


「なるほどな、そりゃ『雑魚の糞』にも申し訳ないくらいだな。」


「き!貴様!この無礼者が!このような無頼の徒に貶められるなどプライドが許さん!ウラジミール共々飲み込んでやるわ!」


横の女がペドロを横目に見て小さく溜め息を継いだ。


「あんた名前は?」


女がペドロの憤りを無視して俺に声をかけた。


「カンゾウだ。まあ、こっちの奴らはガンゾウとしか発音出来ないようだがな。」


「そう。なら私もガンゾウと呼ぶわね。

ガンゾウ、魔鏡の欠片を取り込んだわね?」


ペドロが『えつ?』と驚いた顔で女を見た。


「人に名を聞いて名乗らない奴に答えてやる程お人好しじゃない。」


「あら失礼。私はベルギッタ。現魔王バルブロ様の手の者よ。」


「ああ、何でもいいがほんとに魔王なんて居るんだな?」


「ええ、いらっしゃるわ。で?その魔鏡はどこで?」


「ここだが?」


「!」


「下の奴等をぶっ殺したあと落ちてたのを拾ったんだ。」


短くなった葉巻を靴の裏で揉み消して、空間呪に放り込んだ。


俺はこう見えてゴミを撒き散らすようなことはしないのだ。


まあ、空間呪で開いた先まではわからないのだがな。


「そ、そ、そ、それは私達の物だ!」


「名前は書いてなかったぞ?」


青ざめるペドロを相手にするのも面倒だが、ペドロには一つ聞かなくちゃならないことがあった。


「あ、あの魔鏡がどれだけの力が有るのかわかっているのか⁉」


今度は赤くなりながらわめき散らす。

忙しいやつだ。


「ああ、こういうことだろ?」


と言って、俺は空間を掴み、壁紙を剥がすように空間を引き剥がした。

その剥がされた穴の先には、灼熱の炎が躍る劫火の世界があった。


「まあ、この世界の別の場所やら異世界やら、ああ、別の星にまで繋がるようだな。」


「!」


「ああ、さっきからプライドプライドとうるせぇがな、プライドってのは自分の成した実績に基づいた自信、人よりも秀でた能力に使う言葉だ。お前のはただの『見栄』だ。先祖の功績はお前の物じゃあない。雑魚の糞に寄生する虫の糞程の価値しかねえよ。」


思わず説教たれてしまった。


「なかなか面白い事を言うわね。」


ベルギッタがペドロをそれこそ糞虫でも見るような目でチラ見して向き直った。


「まあこいつらが雑魚の糞に寄生する虫の糞なのは同意するわ。」


「ベ!ベルギッタ様!」


「それでも使い用はあるのよ。それはそれで置いといて、魔鏡を返す積りはある?」


「いやぁ飲み込んじまったし、もう吸収しちまったからなぁ。」


「そう、じゃあとりあえず死んでもらうしかないわね!」


ベルギッタはそう叫んで床を蹴り壊す勢いで飛び込んできた。

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