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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第1章 至福のチーズ
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◆◆⑮ガンゾウと鬼火◆◆

教会本部は、街の中心地に有った。


街の入り口付近同様に人の気配がない。


イヴァンヌが言っていた通り、人間はイヴァンヌが避難隔離したのだろう。

しかしそこかしこに魔物の気配は充満している。


そもそも、魔物は人間世界において自己確立させることは出来ない。

だから人間に憑依し、肉体を得て存在を確立させる。


もちろんそうでないやつもいる。


このルピトピアのように、人間が居なくなり、魔窟と化せば瘴気に満ちる。

そうすると魔物どもが存在する異空間に近い空間が成立するらしいのだ。


あくまでも『らしい』だ。


なにせ行ったことはないのだからな。


これはデュラデムの町外れに有る店の婆ぁが言っていたことだ。

さすがに妖怪婆ぁだ。

無駄なことも知っている。


しかし魔物どもは襲ってこない。


上から命令されたのか、単に怖じ気づいているだけなのかは分からんがな。


「おっ!ここが『ポム・パイヤソン』の店か!」


入り口横のメニューに『名物!ポム・パイヤソン!』と書いてある。


「ここだけは何があっても壊しちゃダメだな。」


「なんで?」


クリスタが聞いてきたが面倒だから答えなかった。


「ご主人様!見えてきました!あれが教会本部です!」


ウラジミールが指差す先には、雲を突くように聳え立つ塔があった。


『ああ、なんだなぁ、面倒だから塔ごとぶっ倒しちまいたいが、そうすると街並みを壊しちまうなぁ・・・旨いものを食わせる店まで潰すわけにはいかねーしなぁ・・・』


「なるほど、そう言うことなのですね。」


クリスタが得心いったように頷いている。


「あ、また声に出ていたか?」


「はいご主人様、明瞭にィッ!」


腹が立ったのでウラジミールの頭を軽く凹ませた。


「まあ仕方ねぇ。入り口から順番に行くか。ああ、クリスタ・・・」


「なあに?」


「ああ、山頂みたいにブリザードブレス吐きまくるとあんな石造りの塔なんざぁ直ぐにぶっ壊れるからな。自重しろよ。」


「気が向いたらねぇ!」


まあ、竜種は気紛れだが分別はあるから大丈夫だろうな。


「さて。」


そう言って空間呪から葉巻を取り出し火を着けた。


「行くか!」


そして盛大に煙を吹かしながら歩き始めた。


◆◆◆


教会本部の入り口は、高さ3mは有ろうかという重厚な扉に閉ざされていた。


押してみたがびくともしない。


まあ、もっとも、普通にギルドの扉を開けるくらいの感覚でしかなかったのだがな。


「ご主人様、この扉は非常に固い木材を組み合わせてつくられております。

さらにはアアアアッ!」


ドッガァンッ‼


と、強烈な爆音と共にその重厚な扉は粉々に砕け散った。


なに、軽く蹴りを入れただけだ。


「非常に固い木材が何だって?」


盛大に煙を吐きながらウラジミールを見下ろす。


「いいえぇぇぇ・・・なんでも・・・」


扉が破られると、中から生臭い瘴気が溢れ出してきた。

あまりにも密度が濃いせいか、霧状の瘴気が視認できるほどだ。


そしてその霧に紛れて足元に絡み付く奴がいた。


足元から這い上がり、体内に潜り込むための穴を探している。


ゲルレブリマナス。

こいつはもう食っているから、今更取り込むべき能力は無いな。

ケツの穴をまさぐられるのも気持ち悪い。


なので、早々に消滅させる。


俺は右手の指を『パチン』と鳴らした。


途端に俺の足元から青白い炎が勢い良く立ち上がった。

その炎はゲルレブリマナスを包み込み、あっという間に消滅させてしまった。


因みにその炎は俺の体も服も焼いていない。


「凄いね!ガンゾウ!あんなに激しい炎なのに全然熱さを感じなかったわよ!その炎は何?」


クリスタが感心したように聞いた。


「まあ、いわゆる『鬼火』みたいな奴だな。奴等には覿面だが、実体が有るやつは焼かない便利な火だ。

もっとも、葉巻に火を着けられないのは残念なところだがな。」


などと言っている間にゲルレブリマナスやら何やらわらわらと湧いてきたな。


「ああ、ウラジミール・・・」


「はい!ご主人様!」


「自分の身は自分で守るように。」


「そんなぁ・・・」


「んじゃ、クリスタ、ぼちぼちヤるが、派手に壊すなよ。」


「約束は出来ないわね!」


空中でクルリと回るとクリスタはチビ竜の姿になった。


「キャオッ!」


そう一声鳴くと、物理的法則を無視して高速で飛び回り、出力を絞りながらブリザードブレスを吐きまくった。


クリスタのブリザードブレスは、広範囲を一気に凍てつかせるだけでなく、指向性を持って使うと氷の矢と化し、魔物どもを貫いた。


しかも、竜種の霊力が加味されたこの氷の矢は、ただの傷なら容易く回復させる魔物でさえも死に至らしめた。


「なかなか凄えな。」


のんびりと独りごちたが、そう言う俺も長剣と魔滅の剣を右に左に、縦横無尽に振り回して魔物どもを切り裂いていった。


『ん?魔滅の剣、また長くなったのかな?』


流石に元の2倍ほどに伸びれば疑いようもない。


この剣は成長している。

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