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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第7章 牛族の国でステーキ『ヨーグルトとアンチョビのソースで』
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◆◆⑰ガンゾウと神という名の詐欺師◆◆

まったくよ、あの鱶野郎は何の目的で俺をここに飛ばしたんだ?


まあ、コイツらに喰われて死ぬことを期待したんだろうがな。


俺は派手に煙を吐いた。


「ブッファァァァッ▪▪▪」


目の前には、あっちの世界では見たこともない異形の怪物がゴロゴロと転がっていた。


皆既に死んでいる。


もちろん、俺の仕業だ。


無闇に殺生した訳じゃねぇぞ?


襲ってくるから撃退したんだ。


まあ、そのお陰で面白ぇ能力も少なからず身に付けたがな。


「おや、まだご存命でしたか?」


不意に声をかけられた。


あの鱶野郎とは違う気配だな。


2人目の神とやらか?


「その通りです。

しかし見事ですね。この子達は一匹でも彼方に放せば世界滅亡の危機にしかなりません。」


はん、周りに誰も居ねぇと独り言が多くなるな。

もっとも居ても多いがな。


「そうかい。で?」


俺は葉巻の灰を落としながら聞いた。


そう言えば最近うまい飯を食ってねぇなぁ▪▪▪

もうコイツらブッ殺して田んぼ仕事でもしてたほうが楽しいよなぁ▪▪▪


「いえいえ、勘弁してください。

もっともそうなれば死ぬのは貴方ですが。」


ほう?


「一つ聞かせてくれ。」


「お答えできることならば。」


「死ぬのは俺?つまり俺は死ねるのか?」


「はい。私達が造り上げた世界です。

その中には貴殿方が含まれます。

つまり不具合があれば何時でも排除出来ます。」


ブッファァァァッと煙を吐いた。


「論理が破綻しているな。」


「▪▪▪どういう事でしょうか?」


「また綻びが増えたぞ。」


「▪▪▪」


「この世界はお前らが造ったと言う。

俺を何時でも殺せると言う。

何でもお見通しだと言う。

なぁ?」


「▪▪▪」


「だがここに来て最初に何と言った?」


「▪▪▪」


「まだ生きていたか?と言ったんだ、つまりおれの生死を把握できないと言うことだ。それすら出来ないのに何時でも殺せるとはヘソで茶を沸かすぞ?」


「▪▪▪」


「それに俺が目障りならこんなところに飛ばさねぇでとっとと殺っちまえば良かったんだ。

それは殺らなかったんじゃない、殺れなかったんだ。

何故なら俺が既にお前らを凌駕する力を持っちまったからだ。」


俺は両手を前でバッチィィィィンッと叩きあわせた。


開いた掌には真っ黒い小さな玉があった。


俺はそれを怪物がゴロゴロと転がるほうへ放った。


黒い玉を中心に強烈な渦が巻く。


「それに『どういう事でしょうか?』だと?

全てを知るならそんな聞き方するわけが無ぇ!

黒孔」


まあ所謂ブラックホールだな。


その球は地に転がる怪物達を物凄い勢いで吸い込み始めた。


その『神2号』は、まあ、それなりの力は有るんだろうな。

黒孔の渦に飲まれることは無かった。


黒孔は怪物どもの死骸を吸い込み、その周囲の雑多な岩くれやら何やらを吸い込み消えた。


「ほれ、キレイさっぱり舞台を整えてやったぞ?

俺を殺せるなら殺してくれよ。

死ねねぇと思ってたからな、もっともお前の言い分は癪に障るからな、簡単には殺されねえぞ?」


葉巻を燻らす。


今回ばかりは逃げは許さねぇ。


俺はあの世界に何も求めてはいなかった。


俺があそこに転がり込んだ理由など今更どうでも良い。

どうでも良いが、気分が悪いことに変わりはねぇ。


そんで次はここだ。


俺を別次元か別世界に飛ばせば済むと思うその安い見方に腹が立つ。


そしてそこへのこのこ出てきた神二号は貧乏くじだな。


「無用な争いは好まない。」


「そうかい。だったら無用じゃねぇっつう事にしろ。」


「それこそ無駄だ。」


「だったらよ、俺が仕掛けるからよ、防御、正当防衛で付き合ってく!れ!よっ!」


俺はノーモーションで地を蹴りダッシュした。拳を振りかぶるなんてダッセェ真似はしねぇ。


ダッシュの勢いを殺さずに左肘を鳩尾に叩き込んだ。


まあ、ラスボス的な相手なら交わすのだろうな。


だがまともに肘が入った。


「ドブゲロォッ!」


「なんだそりゃっ!」


吹っ飛んだ神二号が転げ落ちる前に追い付いて更に膝をぶちこむ。


「デバゲヒャッ▪▪▪」


おらおら、胃液吐き散らして鼻水ぶったらして、みっともねぇったら無ぇなっ!

何でもお見通しの神二号様なんじゃねぇのかっ!


地に落ちる前に止めの右こぶしを鼻っ面に叩き込むっ!


「ブジッ」


障害物の無くなった地面を砂煙を上げながら神二号が転がる。


力入れすぎたな。

右こぶし砕けた。

砕けた骨同士が相手を呼び寄せるように密着する。

そしてくっついた。


この間0.00000003秒、測ってねぇから分からんな。


チビた葉巻を揉み消し、空間を開く。


ポイ捨てはしねぇ。


マナーは守らねぇとな。


「神ねぇ。結局神という種族に過ぎねぇっつう事だな。

他の奴らよりは能力たけぇんだろうがな。

いわゆる『絶対神』っつうわけじゃねぇ。

ぺてん師、山師の類いだな。」


砂煙が収まると、そこに神二号の姿は無かった。


ふん、また遊んでやるよ。


俺は新しい葉巻を出して火を着けた。

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