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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第7章 牛族の国でステーキ『ヨーグルトとアンチョビのソースで』
150/164

◆◆⑮ガンゾウと異質なDNA◆◆

まあな▪▪▪


慣れちゃぁいるんだ。


何が?


この身体を溶かされる痛み▪▪▪


まあ、痛みなんてぇ生易しいもんじゃぁ無ぇンだがな▪▪▪


それにしてもこれは、いや、コイツは初めてのタイプだ。


あの世界、つまりウラジミール達が存在する世界な、そことは違う何処かに飛ばされた訳だ。

そしてそこで異質な何かに食われちまった。


既に俺の体組織は原型を留めていない。


俺を飲み込んだ生物の消化器官に分泌される強酸は、これまで経験したことがない程の強さだ。


このまま死ねるならそれも悪くはないがな▪▪▪


この俺を飲み込んだ化け物よりも、ここへ飛ばしたアイツへの怒りが勝る。


必然死ねねぇ▪▪▪


この化け物の解析も終わった。


なかなか面白れぇ奴だ。


DNAの構成が根本的に違う。


俺の能力はその異質なDNAをも取り込んだ。


そして俺の細胞達は集合する。


この化け物の性質をコピーしたからな。


もう溶かされることもない。


「魔滅」


俺は何処かに流されている魔滅の剣を呼んだ。


左手を握るとそこには魔滅が有った。


「ふん、出るぞ。」


そう魔滅に呟くと、化け物の『胃』と思われる壁に魔滅を突き立てた。


途端に化け物が身悶えし始めた。


魔滅の剣が刺さった場所からは黒い煙が立ち上がった。


「つまり魔物の類いなのか?」


魔滅が通用すると言うことはそう言うことだ。


もしくは『神族』。


あの世界じゃぁ三人と言われている。

まあ聞いた話だがな。


そこにリリスが含まれているのかは分からねぇ。


少なくとも、リリスと俺を飛ばした鱶野郎、その他に一人ないし二人。


摩滅を両手で正眼に構えた。


派手な演出も無く魔滅は刀身を伸ばす。


「ムンッ!」


上段に構え一息に切り下ろす。


ブバッ!っと化け物の身体が切り裂かれた。


切り口から黒煙を上げながら化け物は燃え落ちて行く。


ん?


魔滅が効力を発揮するのは神族と魔物。


そしてこの化け物にも通用する。


だが俺達には使えねぇ。


つまり俺達と奴らじゃぁ根本的に体組成が違うって事だ。


そしてその違う奴等に三人の神が居る▪▪▪


俺はこれ迄吸収してきた魔物達の情報を分析する。


なに、分析しようと思えば自動的に頭のなかで分析される。


元の世界のスパコンなんて目じゃねぇ。


そして出された結果は▪▪▪


◇◇◇


「ママッ!ごめんなさい!」


間断無く降り注ぐ火山弾の間隙を縫ってクリスタとフラウ、青竜達は走り続けた。


「仕方ない子ね▪▪▪

いいわ、私が時間を稼ぎます、クリスタは皆と早く島を脱出するのよ。」


こんな非常事態でも、フラウの言葉は穏やかで落ち着いている。


「ダメよ!ママッ!」


「ママ一人ならなんとかなるわ。クリスタ、お願いだから皆を避難させて。

お兄ちゃんの所へ逃げるのよ。」


「だって▪▪▪ママッ!」


「クリスタ、お願いね。」


そう言うとフラウはニコッと微笑んで竜翼を展長した。


上昇するフラウは、その姿を竜姿に変えた。


それは、ブラウリオをも凌駕する程の巨大な緑竜だった。


◇◇◇


「何者だい?」


南方からの威圧感に外へ出たサロメの前に、左目に竜眼を宿した男が舞い降りた。


「ああ、驚かせちまったか?すまねぇな。

いや、ここにな、強い呪力を感じたからなアイツが居るかと思ったんだ。」


「アイツ?」


「ああ、ガンゾウっていう奴だ。

居るかい?」


サロメは迷った。


この男は間違いなく初代魔王と呼ばれたガストーネであろう。


左目に竜眼を持つ男なぞ、他には聞いたことがない。


しかしガストーネはガンゾウと敵対していたはずだ。


それが旧知の友を訪ねてきたかのように穏やかな佇まいだ。


「いや、もう居ないよ、だが、ガンゾウに何の用だい?」


慎重に距離を計りながらサロメは幾重にも逃げ道を探った。


「いや、たいしたこっちゃ無ぇんだ。

ただ▪▪▪」


「ただ?」


「ああ、ただ一緒に酒を飲んでくれねえかなと▪▪▪」


そう言いながら照れ臭そうに鼻先を掻いた。


それでもサロメは警戒を解けなかった。


それ程ガストーネが発する圧力は強かった。


「酒?」


「ああ、まあ、色々迷惑かけてたからな、アンブロシウスにも会いてぇしな▪▪▪」


そうか、何処かで見たような感覚は、アンブロシウスに似ているからだ。


いや、経年の変化を取り除けばアンブロシウスそのものだ。

それはそうだろう、アンブロシウスは鏡に映ったガストーネその物なのだから。


反転して映せば双子と見紛うレベルだ。


サロメは急に肩の力が抜けた。


「そうかい。まあ良いさ、中に入りな。」


「ガンゾウは居ねぇんだろ?」


「ああ、でもね、せっかく来たんだ、お茶ぐらい飲んでいきな。」


「お茶▪▪▪

お茶か▪▪▪

ああ、飲ませてくれ、出来れば菓子も食いてぇ。」


「これは遠慮がないねぇ。

いいさ、さあ入りな。」


ガストーネは、サロメに促されるまま後に付いていった。


◇◇◇


化け物の腹から出ると、既に夜は明けていた。


空にはデッカイ月が▪▪▪


いや、こっちがあっちの衛星なのか?


重力は少ねぇし、大気も薄い。


案の定太陽光や宇宙線の類いが無遠慮に地表を焼いていく。


さっきの化け物、よくこんなとこで生きていられるな。


だが日本人だった頃の常識は通用し無ぇらしい。


一瞬で蒸発してもおかしくねぇ『水』が有る。


沼、まあ、小さめの湖か?


太陽光に焼かれて蒸発するかと思えば、水面にユラユラと陽炎が立つ程度のものだ。


幻覚か?


いや、アンブロシウスやウラジミールとのリンクが途切れている。


これは別次元か異空間に飛ばされたと見て間違い無ぇだろうな。


だが空間は切れた。


おもむろに葉巻を出し火を着けた。


空気か薄いのに火が着いて、呼吸も出来る。


楽に出来る。


理由は有る。


あの化け物、体内で酸素を生成していやがった。


その能力をコピーしたからな。


俺は煙を吐きながら二酸化炭素ではなく酸素を吐いていたんだな。


体内で生産した酸素を葉巻に供給して煙を噴かす。


何やってんだかな▪▪▪


そういやぁ、この空間移動▪空間加工能力を身に付けたばっかりの頃、面白くていろんな所を覗いたな。

あの時に覗けるが移動できない場所が何ヵ所か有った。


そうか、ありゃぁ別次元だったから見るだけなら出来たが実際に存在する世界とは異世界だったから移動出来なかった訳だ。


ならよ、ここに飛ばしたのはアイツ等の間違いだったな。


葉巻を出せたのが証拠だ。


俺は何時でもあっちに戻れる。


ならばもう少しこの世界を堪能させてもらおう。


神を名乗るアイツ等を泣かせるのはその後でも良いだろう。


まあ、アンブロシウスとウラジミールが苦労するだろうが、それはしかたねぇな。


さて、空気は薄いが飛べるか?


俺は翼を展長した。


羽ばたく。


んんん、やはり大気が薄いな。掴めねぇ。


しかたねぇ、俺は翼に呪力を纏わせた。

『圧』、つまり重力操作だな。


それを逆に解放する。


『反重力』とでも言うのかね?


このまま宇宙空間でも飛べそうだぜ。


俺は高く飛び上がり、面白そうな『何か』を探しに出掛けた。


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