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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第7章 牛族の国でステーキ『ヨーグルトとアンチョビのソースで』
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◆◆⑪ガンゾウと封印の書◆◆

春が来た。


単純に冬が明けたってえ事だぞ?


まあ、どの地域のどの国のとか面倒なこと言うんじゃねぇ。


俺は北方大陸、ルルキーヌ大陸に居た。


「煙の兄ちゃん!」


「よお、ミードは出来たのかよ?」


「兄ちゃん気が早いよ!まだ花が咲き始めたばかりだよ!ミードを作れる蜜を集められるようになるのはもう少し先だよ!せっかちだなぁっブゲホっげほっ▪▪▪」


派手に煙を吹き掛けてやった。


まあそうだろうな。


ようやく雪を割って小花が咲き始めたところだからな。


ルルキーヌの最南端でこれだからな。


妖精の国がある中央部じゃぁまだまだだろうな。


「それにしてもチビスケ、何でこの時期にこんな南の端に居るんだ?」


「なに言ってんだよ兄ちゃん!兄ちゃんのミードを作るために少しでも早く少しでも多く蜜を集めるためじゃないか!」


▪▪▪なんかわりぃな▪▪▪


「そうか。わりぃな。」


「良いって事よ!」


「親父さんは元気か?」


「父上は元気だぞ!瘴気も無くなったからな!

みんなで『大地を祝福』して回っているぞ!」


祝福?


「ああ!瘴気で傷付いた大地を癒して回ってるんだ!

巨人の国も荒れてしまったらしいからな!巨人の王様に頼まれて、今はそっちにいるぞ!」


ビッグケリーのところか。


行ってみるか▪▪▪


「そうか、じゃあまた2ヶ月後に来るからな。

ミード、よろしく頼まぁな。」


「任せておいてよ!

でも何処に行くんだい?」


「鯨の腹の中さ。」


ブッッファァァァッと煙を派手に吹き上げて俺は角馬を駆った。


◇◇◇


「まぁったくぅ▪▪▪

ご主人様の気紛れにも困ったものですぅ▪▪▪」


「今更じゃぁ無ぇがな!どっこいせっ!」


「ああっ!またぁ!ヘリオスさん、そこじゃないですよ!

先程も言いましたけど、ほら!ここのラインに沿って打ってくださいよぉ!」


「うるせぇ!犬!」


「犬じゃないです!」


タウリが犬歯を剥いて喉の奥を唸らせた。


「なんだよ?やるのかよ?良いぜ!相手になってやらぁ!」


ヘリオスが手にしていた大木槌を放り投げた。


タウリも測量盤を放った。


「二人ともっ!」


一喝にヘリオスとタウリはビクッと首を縮めた。


地面に映る影は、その髪の毛がざわざわと立ち上がり揺らめいていた。


「いっつもいっつもそうやってケンカして作業の手を止めてっ!」


「そんなこと言ったってよぉ!」


ヘリオスは汗が浮いた頭をタオルで拭いた。


「毎日毎日こうして土方作業ばっかりじゃぁよぉ、何のためにギルド出たのか分からんからなぁ。」


「そうですか。ならばお帰りいただいて結構です。」


「な?そう言うこっちゃぁ無ぇだろう?そもそも▪▪▪」


「ならばこう言い直します。

暇潰しに誰彼無くケンカ吹っ掛けるような人は必要有りません。

迷惑です。」


ポスカネルはギリギリ髪の毛が蛇化するのを抑えていた。

口ではなんと言おうが、ガンゾウから任されたこの場所をガンゾウが帰ってくるまでに完成させたい。


その思いが蛇達をギリギリ抑えていた。


「なんでい、ガンゾウさんに会えねぇからって八つ当たりするなよ▪▪▪」


ヘリオスは本当に小声で毒づいた。

他の誰にも明確には聞き取れない小声で。


だが、ポスカネルの耳はそれを明瞭に聞き届けた。


その瞬間、怒りを抑えきれなくなった。


蛇が目を覚ました。


全ての蛇がヘリオスを睨んだ。


ヘリオスは固まった。


そして気が付けば、周囲の面々も石化してしまっていた。


◇◇◇


「あっらぁぁ▪▪▪

見事に固めちゃったわねぇ▪▪▪」


現場を離れていたドリアード(エルヴィラ)が腰に手を当てて呟いた。


心底ゲンナリした顔でポスカネルはエルヴィラを振り返った。


「まあ、解除出きるのよね?

なら問題ないでしょ?

このおじさんは海に棄てようか?」


さすがにそれは出来ないとポスカネルは思ったが、そうしたい衝動を抑えるのに一苦労があった。


◇◇◇


「良くお越し下された。

その節はお礼を申し上げることも出来ず失礼いたした。」


そう言ってビッグケリーは頭を下げた。


「我等妖精族も世話になりました。

貴殿方が来られなければ、今頃このルルキーヌは第二の魔物の巣と化していたことでしょう。」


隣に座る妖精族の王ヴァイナモもそれに倣った。


「気にしなくても良い。

俺らの不始末がそもそもの原因だったのは了解している。」


王の間に隣接する接遇室で俺はビッグケリーと向き合っていた。


「しかしあの新たな青竜王を配下にするとは▪▪▪

貴方の力はそれ程お強いのか?」


いやいや、そんな話をしに来たわけじゃぁねぇんだ。


「ブラウリオの事か?

配下とかじゃねぇよ。

勝手についてきているだけだ▪▪▪面倒くせぇ▪▪▪」


苦い顔して煙を吐いた。


幸いビッグケリーは葉巻を好んだ。


デュラデムの葉巻をくれてやったらかなり喜んでいたな。


「ところでだ、ここに来たのには訳がある。」


「▪▪▪三人の神▪▪▪ですかな?」


やっぱり知っていたか。


「巨人族は神族の末裔だろ?。」


「▪▪▪どこまでご存知か?」


ビッグケリーは、ガンゾウから贈られた葉巻を咥えた。


「私は席を外しましょう。」


ヴァイナモはそう言って立ち上がった。


「どうも葉巻はいかん▪▪▪」


そう言うヴァイナモをビッグケリーは引き留めなかった。


「何処までもなにもなぁ▪▪▪」


「何故それを知ろうと?」


暫しの沈黙があった。


「腹が立つからだ。」


「腹が立つ?」


「ああ、鯨の腹の中で見せられたことは何もかもが腹が立つ。俺は他人の手の上で踊る酔狂は持ってねぇ。」


「リリス様は付いていかれたのだろう?」


「知ってるのか?」


ふん、神族の生き残りがあれじゃぁなぁ。


色々とポテンシャルは高いのだろうがな、如何せん幼稚だ。


「我々が知る事実は、全て神族の書き起こした伝承によるものです。

従ってそれが本当に事実なのか、彼等の都合の良い物語なのかは分かりません。

検証する術が無いのですから▪▪▪」


だろうな▪▪▪


「なら、その伝承とやらに現れる残りの二人は何処の誰なんだ?」


ビッグケリーは立ち上がり、書棚から一冊の古びてはいるが、重厚な装丁の本を取り出した。


そしてそれをガンゾウに差し出した。


その書には、厳重な封印が施されていた。


「ご覧のとおりこの伝承の書には鍵が掛かっています。

ただの鍵なら壊せば良い。

ですが、これは鍵を壊してもページは捲れない。

各ページがそれぞれ『鍵』によって張り合わせてあるからです。」


「で?鍵は?」


「有りません。」


ふん、何の茶番だ?


「だが伝承は伝えられてるんだろう?

どうやって?」


「口伝です。」


はん、それじゃぁその時々で脚色されててもおかしくねぇな。


「じゃあ何かい?

先祖代々伝わる物だから疑うこと無く鵜呑みにして来たって事だよなぁ?」


「そう▪▪▪なりますな▪▪▪」


ビッグケリーも半信半疑なのだろう。

立場が許せば壊してでも何とかしようと試みた筈だ。


ガンゾウは徐に魔滅の剣を抜き、その切っ先を鍵穴に当てた。


『ま!待て待て!乱暴な男じゃ!』


「なっ!」


ガタンッ!と大きな音をたててビッグケリーは椅子から立ち上がった。


「なんだよ?封印の錠が喋りやがった。」


俺はそう言いながらも魔滅の剣で鍵穴をほじくった。


『や!止めろと!止めろと申すに!』


「止めて欲しけりゃ封印を解きな。」


『そ、それは出来ぬ!

こら!止めいっ!』


「面倒だ、こいつで切れば封印自体が消滅するかもしれねえな▪▪▪やってみるか▪▪▪」


そう言って魔滅の剣をしげしげと眺めた。


『わかった!わかったから取り敢えず話を聞けぃ!』


「嫌だね。」


そう言って魔滅の剣を当てた。


『わぁっ!わぁっ!待ってください!お願いします!殺さないで下さい!解きますから!解きますからぁ▪▪▪』


俺は魔滅の剣を引いた。


ふん、初めから素直にそうしていれば良いんだ。


ん?ビッグケリー?


顔がひきつっているぞ?

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