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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第7章 牛族の国でステーキ『ヨーグルトとアンチョビのソースで』
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◆◆⑨サロメの意地とごめんなさい◆◆

「婆ぁ、サロメ、居るか?」


ガンゾウは、ウラジミールとフロリネを伴ってサロメの店にやって来た。


「これはまた早かったね?

そんなに弱かったのかい?」


「はいぃ!それはもうご主人様にかかればバルブロの百や二百はばべぼげらっ!」


うるせぇからぶん殴った。


「まあな。エルゼは起きてるか?」


「寝てるよ。そうさね、日が落ちる頃には目を覚ますだろうさ。」


「それですと三時間ほどございますね。

では、お茶でもおいれしましょうか?

サロメ様、キッチンをお借りしても宜しいですか?」


「ああ、好きに使っておくれ。」


ウラジミールが鼻唄を歌いながら茶の用意をしに行った。


ふん、叩き起こしても良いんだがな。

まあ、急ぎが有るわけでもねぇからな。


「ガンゾウ?」


「あ?」


俺は葉巻を取り出して火を点けた。


「伝承の事だがね、だいぶ反れてきたようだね▪▪▪」


「そうなのか?

興味無ぇな。」


「原因はあんただよ。」


「▪▪▪」


伝承はサロメの予言を元に語り継がれてきたとサロメ自身が言っていた。


そのサロメが言うんだからそうなのだろう。が▪▪▪


「だからなんだ?」


「アゼッタで狼族を滅ぼしかけたのは間違いなくバルブロさ。ロボス様を殺した奴さ。

あんたそいつを逃がしたのかい?」


ほお?お慕いする男を殺した奴を解き放った俺は許せねぇって事か?


「だったら何だ?」


「理由を知りたいねぇ▪▪▪」


「んなもん無ぇよ。」


「▪▪▪そうかい▪▪▪」


「▪▪▪」

「▪▪▪」


「▪▪▪ねぇねぇ!ちょっとぉ!何か気まずいわよぉ?

もう、ガンゾウ?はっきり言ってよ!私も納得いかないわよ?」


フロリネが場の雰囲気に耐えられず声を上げた。


ふん。


「サロメ。」


「なんだい。」


「バルブロを殺さなかった事が不満かい?」


「▪▪▪」


サロメは目を伏せたまま小さく頷いた。


「バルブロにガストーネ。そして俺。あと二人か?今期の魔王候補とか言われるやつは?

そもそも、この魔王を決めるとか、誰が支配するとか何とかは誰が決めたことなんだ?

元より俺はそんなものに関わりたくねぇ。

面倒なだけだ。

聞けば初代魔王だというガストーネが復活してるわけだ?

ならそれで良いし、バルブロが魔王になりたきゃガストーネと雌雄を決すれば良い。

俺には関係ねぇ。

もちろん、誰が魔王となっても、俺にちょっかい出す奴はぶちのめす。

それだけだ。」


「だがお前さんは、その二人を圧倒して這いつくばらせている▪▪▪

ならばお前さん、ガンゾウが魔王と言うことなんじゃないのかね?」


「関係ねぇ。」


そう関係ねぇ。

そもそもここに、この世界に居る、

存在していることが違和感でしかない。


あの極海の鯨の腹の中で聞いた話はサロメの話とそう誓わねぇ。


だが決低的に違う事が一つ。


サロメも知らないことだろう。


この世界が3体の『神』と呼ばれる絶対者の『遊び場』だという事をだ。


◇◇◇


「ああ、無駄足だったようですね▪▪▪」


「どうしたの?」


レクオス王国に入っていたアンブロシウスとベルギッタは、カルアラレック王国の風聞を聞いて回っていた。


そこで聞いた話は意外なものだった。

だが、ガンゾウが介入したことで一気に終結してしまった。

レクオス王国にはまだ伝わっていない話だ。


「ガンゾウさんがウラジミールさんとフロリネさん、エルゼさんまで取り戻してしまったようです。」


「えっ?じゃあバルブロは?エルゼを飲み込んでいたバルブロはどうなったの?」


「うぅん、何と言いましょうか、実態を無くしたスタルシオンが一時的に▪▪▪

いえ、ガンゾウさんが無理矢理スタルシオンの身体にバルブロの核を飲み込ませたみたいです。」


「何よそれ?訳わからないわよ?」


「ですね、まあ仕方有りません。

詳しくは皆さんのところに戻ってから聞きましょう。

私もガンゾウさんが知らせてくれる不親切な情報でしか知り得ていないので▪▪▪」


「そう、じゃあガストーネはどうしたの?」


「さあ▪▪▪」


「さあって?」


「情報が不親切なのですよ▪▪▪」


これは本当です。

ガンゾウさん?もう少し詳しく教えていただけませんか?


◇◇◇


うるせえ。

後でウラジミールに聞け。


「そうかい。じゃあ私の役目もここまでだね。

この時間での事柄は見届けたからね。

50年後、あんたの選択が正しかったのか間違っていたのか見させて貰うよ。」


「行きたきゃ行けば良い。

だがな、どんな結果になっていようとそれがこの世の選択だ。

俺のじゃねぇ。

物事を『正しい』『間違い』で白黒つけるのは結構だが、その基準はお前と俺とでは違う。

他のやつでもそうだ。

正しいと思うのも、間違いと思うのも自己満足に過ぎねぇ。

まあ、オメェが居なくなりゃぁ葉巻の売場を見つけなきゃならねぇがな。」


「そうだね。だからこそ見届けないとね。」


「ふん、好きにすれば良い。

50年。

犬っころも年寄りだな。生きていればだがな。」


「▪▪▪ズルいねぇ▪▪▪」


ん?

いや、そんなつもりじゃねぇんだが。


「良いだろう、そこまで言うならここで見届けてやろうじゃないか!」


「いや▪▪▪

遠慮するな▪▪▪

行ってくれ。」


「な!残ると言っておろう!何かと役に立つぞ?ほれ葉巻の売場を探すのも面倒であろう?」


「いや、オメェと話す方が面倒だ。」


「な!何を言う!そんなことはなかろう?」


「▪▪▪」


「▪▪▪」


「犬っころの事を持ち出されて未練が出たのか?」


「ち!違う!そうではなくて!だから、あ▪▪▪その▪▪▪」


「ごめんなさいは?」


「いや、それは▪▪▪」


「なら」


「いやいや!いや!悪かった!言いすぎた!私が悪かった!」


「で?」


「▪▪めん▪▪▪い▪▪▪」


「あ?」


「ごめんなさいっ!」


「ふん。」


素直にな。


◇◇◇


エルゼが目を覚ました。


俺はウラジミールの中に保護したエルゼの『核』を取り出した。


「クボォッ▪▪▪」


気持ち悪い音立てるな。


「いやあ、バルブロと違って綺麗なものですねぇ▪▪▪真っ白だ。」


「でも冷たさを感じないわね。淡く黄色やピンクが溶け込んでいるよう▪▪▪」


「そうですねぇ、フロリネさんならドギツイ紫とか爛れたような赤とかでしょうかぁ?」


「あんたなら溝鼠色でしょうね。」


とか言いながら小突きあってる。


仲が良いよな。


「良くないです!」


ハモるな。


「エルゼ、オメェの半分だ。」


そう言って俺はエルゼに真っ白な核を渡した。


両手で核を受け取ったエルゼは、それを両の掌で包み込んだ。


そしてそれは眩い光を放ちながらエルゼに吸収されていった。


3分ほどエルゼは動かなかった。


心配したフロリネが顔を覗き込んだ。


「大丈夫ですよ、フロリネさん。」


エルゼはそう言って微笑んだ。


「ありがとうございます。ガンゾウさん。まさか帰って来れるとは思っていませんでしたぁ。」


ふん、説教はお師匠さんに任す。


「じゃあな、俺は行くぞ。」


「どこへ行くんだい?ガンゾウ?」


「米を作って牛を飼うんだ。そのための道具を買いにな。

思ってたより時間が掛かりやがった。」


そう言ってサロメの店を出た。


外はとっぷり日が暮れていた。


久しく一人でいることなんて無かったからな。


空間呪から葉巻を出した。


指先に点した火を移す。


ブッッファァァァッ▪▪▪


高密度の星ぼしがひしめき合う夜空に煙を吐いた。


「綺麗ですねぇ。雲一つ有りません。」


▪▪▪一人になりてぇんだがな▪▪▪


「さあ!ご主人様!ギルドはこの方向です!今からならまだ部屋を取る時間に間に合いますぅ!」


「そうか▪▪▪」


そうだよな。居たよな。


俺はデュラデムのギルド目指して歩き始めた。

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