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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第6章 極北の海で鯨を堪能したい
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◆◆㉘クリスタの帰郷と次の暇潰し◆◆

「ママ、そんなに▪▪▪」


「ああ、初めて見た▪▪▪

というより、母さんがあんなふうにキレたのって初めてなんじゃないかな▪▪▪」


宴の翌日、クリスタとブラウリオは、船着場の淵に腰を降ろして海を眺めながら話していた。


「クリスタ、母さんの側に居てくれないか▪▪▪」


ブラウリオは気丈に振る舞うフラウが心配だった。

本当は自分が側に居てやりたい。


だが、また追い返されるだろうとも思う。


「そうね▪▪▪

そうね、お兄ちゃんじゃぁママも心配事がふえるばっかりでしょうからね。

任せて、青竜島は私が護るから。」


少し背が伸び、大人びたクリスタだったが、この時、更に成長したとブラウリオは思った。


「もしかしたらさぁ▪▪▪」


クリスタは、何か言ってはいけない事で有るかのように言い淀んだ。


「私もそう思った▪▪▪」


ブラウリオはクリスタが何を言おうとしたのか明確に理解していた。


「でも、母さんに背負わせる訳にはいかないんだ。

伝承の巨竜は私だ▪▪▪

父さんの仇は私が殺る▪▪▪」


「そう、うん、わかった。ママの事は任せて。

たぶんお兄ちゃんは▪▪▪」


「ん?」


「ん!何でもないっ!じゃあ、みんなに挨拶してくるね。」


「そんなに急がなくても良いんじゃないか?」


「ううん、やっぱりママが心配だから、お兄ちゃん、頑張ってね。」


ブラウリオは、クリスタが何か言い淀んだ事が気になったが、あえて聞かなかった。


たぶん、聞いても言わないだろうと思ったから。


ブラウリオはクリスタの後ろ姿を見送った。


まだ幼さが残る後ろ姿だったが、何故か頼もしく思えた。


◇◇◇


「びべざばぁ▪▪▪ざみじぐだびばぶぅ▪▪▪」


「ちょっと!ウラジミール!鼻水汚いっ!」


抱き付こうとするウラジミールを蹴り止めながらクリスタが言った。


「クリスタ、寂しくなるわ▪▪▪」


とか言ってポスカネルとフロリネが泣いてやがる。


「何も会えなくなる訳じゃないし、そもそもこのパーティはガンゾウと私が始めたんだからね?

勝手なことヤらないでよ?」


いやいや、未だにパーティ組んだつもりは無ぇぞ?


「びべざばぁ、ざいびょにぐんだどばばだじでぶぅ▪▪▪」


最初に組んだのは自分だと言いてぇんだな?


だから誰とも組んじゃぁいねえってぇの!


「まあ、おっ母さんによろしくな。」


そう言って背を向けた。


無理矢理湿っぽい雰囲気造るんじゃぁねぇ。


ああ、序でにあいつら起こすか▪▪▪


俺は空間呪で洞窟にし舞い込んでいた『石像』を取り出し、解呪した。


「あ?」


あ、じゃねぇし。


「ヘリオスさん、忠也さん、いろいろご迷惑かけられましたが、暫く島に戻ることになったので、少しの間お別れです。」


クリスタ、うめぇな。


「▪▪▪よく事情が飲み込めねぇが▪▪▪、まあわかった。

達者でな。」


ほれ、気付いて無ぇ。


「確かに迷惑掛けました。お達者で。」


忠也は気付いたか。


「そうだなぁ、ちょんまげは存在が迷惑だからな。」


「本当にかわいそうになります。性根だけではなく耳まで聞こえないとは▪▪▪」


「んだとぉ?ごらあちょんまげぇ!」


うぜぇ▪▪▪


「ポスカネル▪▪▪」


「はい▪▪▪」


そして二人はまた石になった。


◇◇◇


「それで、これからどうするのですか?」


ふん、鯨も食ったしな、暗黒大陸もおメェ等が地均ししたみてえだからな、国造りに取り掛かるか▪▪▪


「分かりました。空間呪で移動しますか?」


「ふん、口にしてたか▪▪▪」


「はい、いつもの通り。」


「いや、地割りと街造りは大将軍と▪▪▪そうだな、ウラジミールとフロリネに任せる。」


「えぇっ!何でウラジミールと一緒なのよ?」


「フロリネはドリアードのサポートだ。

ダークだろうが、ホワイトだろうが、エルフなら協力出来るだろ。」


「それは構わないけど、なんでデカっ鼻が一緒なのよ?」


「まぁぁったくぅ▪▪▪こちらも我慢しようと思ったのですがぁ、そう言われちゃぁ一緒には無理ブゲベレッ!」


ぶん殴った。


「ウラジミールは前にも植物の種に複合型の呪を掛けて、自然を回復させた事が有ったからな。

短期間で自然形態整えるなら居たほうが良いだろ?」


「その通りでブベベッ!」


いちいちうぜぇ。


「でもご主人様はどうなさるのですか?」


ほんと気持ち悪ぃくれぇ回復が早ぇな▪▪▪


俺は牛集めに行ってくる。


つまりミノタウロス狩りだな。


もっとも、『狩る』つもりはねえんだがな。


牛との約束もあるからな。


「まあ、半年だな。半年後に南方大陸に上陸する。

どれだけ牛を集められるかわからんからな。

おい、牛1号。」


「はい、マスター。」


「牛2号は先に行かせるぞ。

牧場の整備をやってもらう。」


「かしこまりました。」


「集めた牛は順次送る、アウグスト。」


「はい、マスター。」


「アウグストさんだけは名前なのでブルゴギャッ!」


いちいちうるせえ。


「お前はここでしっかり牛の世話をして繁殖させろ、それが俺との約束を実行する第一歩だ。」


「はい!頑張ります!」


ん、さて▪▪▪


イヌッコロは牛探しで鼻が使える▪▪▪


「はい!頑張ります!」


ふん▪▪▪


ポスカ▪▪▪


「ついていきますから。決定ですから。変更できませんから!」


ふん、まあ、まとめ役だな。


そうだ▪▪▪


「おい、お前名前は?」


「?」


あの女の子が自分の事?っつう感じで小首を傾げた。


「他の奴らの名前は知ってる、知らないはお前だけだ。」


「₭∈∃₤₱」


あ?


「ごめんなさい。はつおんできないわね。なら、『りりす』でいいわ。」


「リリスな。お前はどうすんだ?面倒見ねぇぞ?」


「まあ!ガンゾウさん!そんな可哀想なことを▪▪▪」


「そうか、じゃあお前が面倒見ろよな。」


「良いですよ。リリスちゃん?お姉ちゃんが面倒見てあげるから安心してね?」


「▪▪▪」


「ん?」


「こむすめが、わたしがいくまんねんいきているのかしったうえでいっておるのか?」


「え?」


クックックッ▪▪▪


まあ詳しくは知らねえが主と呼ばれた鯨が面倒見てた奴だ。

ポスカネルどころかこの世界の誰よりも長生きしている可能性のほうが高いよな。


おっと、睨んだってダメだ、おメェが自分から面倒見るっつったんだからな。


「まあ、しかたない。そういうならせわさせてやろう。

ありがたくおもえよ。」


「え゛▪▪▪」


「こむすめ、だっこじゃ。」


「え゛?」


「みみがきこえぬのか?おつむがすかすかなのか?だっこといった。

はやくだっこせい。」


クックックッ▪▪▪

おっと、睨んだってダメだぜ。


まあ、仲良くヤってくれ。


ブラウリオは▪▪▪牛狩りやってもらうか。


「承知しました。」


あとは▪▪▪コイツらか▪▪▪


俺は二体の石像を見た。


まあ良いか。


「ポスカネル、何かやらせるからよ、解呪してやれ。」


「はいはい▪▪▪」


ポスカネルはそう言うと左手で石像の頭を撫でた。


「あ▪▪▪」


目ぇパチクリさせたってダメだ。


「2人とも、面倒だから何処かへ消えてくれ。」


「まっ!待ってください!私は一方的に絡まれてるだけで▪▪▪」


「挑発に乗った時点で同じ穴のムジナだ。」


「おいおい?俺が何をしたんだ?」


「ヘリオス?面倒言ってると張っ倒すぞ?遊び方がガキなんだよ?おメェギルド長だろうが?」


ボリボリ禿げ頭掻いてやがる。


「そうだな、すまねぇ、ギルド長なんて固っ苦しい事長年やってたからな、外に出られて浮かれちまった。

丸橋、すまなかった。

おメェに絡むと楽しくてな、ついついエスカレートしちまった。」


「いいえ、私もいけなかったのです。

今後は喧嘩ではなく、鍛練として手合わせ願います。」


何丸く修めてんだ?


「まあ、おメェ等が仲直りしようが反目しようが、俺にはどうでも良い、だから消えろ。」


「待ってくれよガンゾウさん?マジで反省した!もう、ヤらねえ!本当だ!息子に誓う!」


「私も!申し訳ありませんでした!」


とか言って土下座しやがった。


「忠也▪▪▪安い頭だな。」


「な!何と言われようともっ!」


「もう、意地悪はその辺にしてあげてください。」


ふん、じゃあ引き受けるんだな?


「仕方有りません。

二人とも、今後は私の指示にしたがってもらいますよ。

特にヘリオスさん?」


「無論だ!異議は無ぇ▪▪▪が▪▪▪」


「ダメです。嫌ならサヨナラです。」


「▪▪▪んんんんんっ▪▪▪分かった!もう何も言わねぇ!」


出来ればホントに減らしたかったんだがな▪▪▪


ん?


なんだよ?リリス?


「なんでもないわ。」


そう言ってクスッと笑った。


「笑えるのか?」


「よけいなことはいわないの。」


そうか。


そうだな。


余計なことだな。


「犬。」


「はいっ!狼ですが。」


「ああ、牛の臭い追いかけろ。

ヘリオス、犬と先行、ブラウリオ付いていけ、獲れたら獲れ、逃がすなよ、無理なら俺に知らせろ。」


「大丈夫です。」


「ポスカネルと忠也は▪▪▪まあ、テキトーにな。」


「何ですか?適当って?」


ふん、さて、次の暇潰しといこうか。


ヘリオスにジャレつきながら走るタウリを見て葉巻に火を着けた。


「ブッファッ、アンブロシウス。」


「はい。」


「ガストーネを追え。」


「良いのですか?」


「ふん、行きてぇんだろ?顔に書いてあるぜ。

気のすむようにすれば良いさ。

お前にヤられるならそれまでの奴だ。

だが、手に余るなら俺が遊んでやる。」


「▪▪▪だからウラジミールさんを別行動に?」


はは▪▪▪


「さあな。呪は繋がってるからな。ホントにヤバくなったら引っ張ってやるさ。」


「わかりました。」


「で?何処へ行く?」


「そうですね▪▪▪西でしょうね。」


「ふん、人間の大陸か。奴ら程人間らしい人間は他に居ねぇからな。

魔女狩りには気をつけろよ。

狂信者ほど手に負えねぇ存在はねぇからな。」


「ご心配有り難うございます。

スタルシオンが死にきれなかったようですから、例の意識誘導を効果的に使おうとすれば必然、人間らしい人間に紛れることでしょう。

何とかなります。

ベルギッタさんも居ますからね。」


ふん、サッキュバスか。

確かに人間らしい人間には効果的だな。


「ブッファ▪▪▪そうか。じゃあな。」


「はい。では、行って参ります。

半年後、南方大陸にて。」


ああ。


そうだな。


タウリが走り去った道も、アンブロシウスが去った空にもどんよりと厚い雲が立ち込めていた。


はあ、面倒くせぇ。


ま、面倒も時間潰しには有効だがな。


なんて考えるのに0.000002秒。


測ってないからわからんな。


◆◆第6章 了◆◆

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