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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第6章 極北の海で鯨を堪能したい
131/164

◆◆㉔ガンゾウの鯨狩りとアンブロシウスの本気◆◆

「どおですかぁっ!これならばご主人様に褒められること間違いなしですぅっ!」


ウラジミールが買い付けた『捕鯨船』は、全長50mの巨船だった。


「でもウラジミールさん?これを動かすのに私達だけで出来るものなのですか?」


「▪▪▪▪▪▪▪あ▪▪▪▪」


そうですよねぇ、何かを動かすには人手が必要なのは当たり前の事ですから▪▪▪


でもさすがにこれは手に剰りそう▪▪▪


ポスカネルが見上げた船は、それほど巨大だった。


「ところでウラジミールさん?あの二人は?」


「さあ?」


もう、手の掛かる男ばっかり!


ポスカネルは溜め息が多くなったことに溜め息をついた。


◇◇◇


「や、やるじゃねぇかチョンマゲ野郎▪▪▪」


「そっちこそ▪▪▪禿ジジイが頑張りますね▪▪▪」


はぁはぁと二人は肩で息をしながら悪態をついた。


「息が上がってるぞ▪▪▪

それで終わりだろ?

さっさと降参しやがれ▪▪▪」


ゼェゼェと息を荒らげてヘリオスは剣を杖に立ち上がった。


「降参するのはヘリオス殿でしょう。」


忠也は短時間で息を整えた。


純粋な人間と、姿は人間に戻ったが、千年以上生きてきた半魔半人とでもいうべき忠也との差が出るのは当然の事だった。


「狡いぞ▪▪▪ハァハァ▪▪▪チョンマゲ▪▪▪」


ヘリオスはガクッと膝を折り手を着いた。


「さあ、終わりにしましょう。挑発に乗った私が悪かった。」


「なんでぃ▪▪▪詰まらねえこと言いやがって▪▪▪」


忠也は、槍を左脇に抱えて、ヘリオスに近付いた。


「さあ、」


そう言って右手を差し出した。


ヘリオスはその手を握り立ち上がろうとしてよろけた。


「おっと!」


忠也は思わず槍を手放しヘリオスを抱えようとした。


ヘリオスは握った右手を引き、左肩で忠也の胸を押し、左足を引っ掛けて忠也を引きずり倒した。


「クッ▪▪▪」


「まだまだ甘ぇな。誰が降参だと言った?

しっかり息の根止めねぇと、こういう目に遇うんだ。」


いつの間にかヘリオスの左手には短剣が有り、忠也の喉元に突き付けられていた。


「何してるんですか▪▪▪」


「え?」


ヘリオスと忠也が振り向くと、ソコには何千、何万もの『蛇の目』が有った。


二人は、ガンゾウが帰るまでそのまま放置された。


◇◇◇


「あの女の子は誰だったんですかぁ?」


「▪▪▪」


「ねぇねぇ?教えて下さいよぉ?」


海面を切り分けるように進む船は、一切水の抵抗が無いかのように滑るように進んだ。


「うるせぇ!」


「キュゥゥゥンッ▪▪▪」


まったく、キャンキャン吠えるな。


まあ、あの遠吠えはなかなか見事だったがな。


「でもあの娘が言ってましたぁ。」


「あ?何をだ?」


「ガンゾウさんのおかげで帰れるって。」


? 俺のおかげ?

意味がわからん。


「何のことですかねぇ?」


はん、知りたくもねぇよ。


「でも気持ち良かったぁ!あんな遠吠え、僕も初めてでしたから。」


ふん、一皮剥けてくれりゃぁ良かったのにな。


元のままだ。

まあ、潜在能力、持っている力の片鱗ってぇことで良いか。


「え?」


「何でもねぇよ、ほれ、陸が見えたぞ。吠えてみろ狼小僧。」


「へへへ、じゃあ▪▪▪ウオォォォォォォォッッッッ!ウオォォォォォォォッッッッ!ウオォォォォォォォッッッッ!」


まあまあだ。


見え始めた港は、あっという間に目の前に迫っていた。


◇◇◇


おいおい▪▪▪


接岸し、港に降り立ったガンゾウにポスカネルが抱き付いた。


「心配したんですよっ!」


何を?


構わずズカズカ歩を進めた。


抱き付いたポスカネルはズルズルと引きずられている。


何がしたい?


「ご主人様ぁ!準備ばんたんですぅ!▪▪▪がぁ▪▪▪」


ふん、完全は期待してねぇよ。


「これか▪▪▪」


目の前に聳える巨船に満足した。


「あのぉ▪▪▪」


何かやらかした体でウラジミールが上目遣いで物言いたげだがな。


わかってるぜ。


しかも問題ねぇ。


「運行の人手だろ?」


「はいぃ▪▪▪」


「問題ねぇ。」


「で!ですよねぇ!ほらぁ!私のやることに間違いは無ビボロブワカッ▪▪▪」


うん、ぶん殴った。


ブワッフワァッと煙を吐く。


ああ、何か気持ちいいな。


「ところでポスカネル?」


「はい?」


「何時までそうしている?」


「てへっ。」


じゃねえだろ。


◇◇◇


「このままで良いだろ?」


「そのほうが面倒が無いと思います。」


「でもぉ、これを毎日見るのも辛くないですかぁ?」


「▪▪▪そうだな▪▪▪」


「でもバカやられるよりはましです。

見たくなければ何処かに仕舞い込んで下さい。」


「そうするかぁ▪▪▪」


「ええええ▪▪▪

僕はヘリオスさんのことわりと好きなんですけど▪▪▪」


「でもこんなですよ?」


「よし、じゃあな、鯨食ってから解いてやれ、まあ、居なくても狩りには支障ネェからな。」


「わかりました。」


四人に見下ろされた石像二体は、こうしてしばし隔離されることとなった。


◇◇◇


「では、なるべく早く戻りますから。」


「はい。でも、丁寧に弔ってあげてくださいね。ディートヘルムさん、くれぐれも取って返す様なことの無いように、お目付け役ですからね。」


「はい。任せてください。

しかしアンブロシウスさんも無茶はいけませんよ?」


はは、そう見えちゃいますかね。


「ガンゾウさんの言い付けは守ってくださいよ?」


「無論です。大丈夫です。こちらからちょっかい出したりしませんから。」


「駄目ですよ。ガストーネが来たら逃げること、約束してください。」


お見通しですね。

さすが大将軍。


「わかってますよ。さあ、ブラウリオさん、グズグズしてるとそれこそガストーネに感づかれますから。」


「では、しばし▪▪▪」


ブラウリオはそう言って竜姿となり、布でくるまれたアレクサンテリの首を抱えたディートヘルムを乗せて飛び立った。


アンブロシウスとベルギッタはそれを少しの間見送った。


「ねえアンブロシウス▪▪▪」


「なんですか?」


「あんた本当は一人でガストーネと決着付けるつもりだったでしょ?」


ふふふ▪▪▪


「さあ?どうでしょうか?

ベルギッタさんこそスタルシオンに睨まれたらどうするつもりだったのですか?」


「ふん、死んだやつなんてどうでも良いわよ。」


「そうですか。では、『牛の国』探し、再開しますか。」


「本気だとは思えないのよねぇ▪▪▪」


ははは、本気ですよ。本気で探してますよ。

その後は▪▪▪

そこも本気ですけどね▪▪▪


アンブロシウスとベルギッタはスタルシオンが引き連れていた魔物の残骸を後に探索を再開した。


「ちょ!ちょっと待ってよ!」


その後をドリアードが追いかけた。


◇◇◇


「エルヴィーラよ、よろしくね。」


「▪▪▪」


「ハァァァァッ!スッキリしたぁ!あのドラゴン顔ったらホンと嫌なやつだったのよぉ!

突然現れて無言でここまで連れてこられてさぁ、瘴気で汚染された土地に森を作れとか、小鳥の囀りが聞きたいとかさぁ、もう無理難題百連発!いいえ千連発の勢いよ!

ほんとやってられないわ!

でもさぁ、ここって本当は緑豊かで生命の躍動に満ち溢れている土地だったはずだからさぁ、まあ、アタシの力ならねぇ、出来ないことじゃ無かったけどぉ、まあ、そう言う意味じゃアタシに目を付けたのは間違いじゃ無かったわね。

そうね、その眼力だけは誉めてあげても良いわね。

でも遣り方がえげつないわよねぇ。

だってアタシの意思なんか関係無いんだものねぇ?

頼み事が有るならさぁ、頭下げるのが常識よねぇ?

だから力有るやつって嫌いよ!

ねぇ?

そう思わない?」


「▪▪▪」


「良く喋るわねぇ▪▪▪」


「あ?サッキュバス風情が上等なこと言うじゃない?

喧嘩売ってるなら買うわよ!」


「ムッかぁ▪▪▪」


「むっかぁって(笑)、それ擬音よ擬音?オツム弱いの?」


「キィィィィィッ!」


▪▪▪


どうでもいいのですが、先に行ってて良いですか?

良いですよね?

行きますからね?


ベルギッタとエルヴィーラの取っ組み合いを後にしてアンブロシウスは歩き始めた。


◇◇◇


「なぁるほどぉぉぉ!」


ウラジミール?

さすがに少し▪▪▪

いや、かなりわざとらしいぞ?


「いえいえ、本当に思いもよらない方法ですからぁ!

さすがと言いますか、当然と言いますか、もうご主人様のなさることに間違いとか手違いとか有ろうはずも無いと言いますか▪▪▪

ですから本当に▪▪▪

あ?ご主人様?

あの?」


「なんだ?」


「はいぃ▪▪▪あの、何時もの?」


「飽きた。」


「▪▪▪えっ?えええええっ!」


「飽きた。」


「▪▪▪えっ?えええええっ!」


「飽きた。」


「えっ?えええええっ!」


「もう良いか?」


「▪▪▪すいませんでした▪▪▪」


と、フェイント噛まして▪▪▪


「バブグルブワッ!」


お望み通りぶっ飛ばしてやった。


まあ、お約束は大事なのは分かってるよ。


まあ、そんなのは置いといてだな。


ウラジミールが段取った捕鯨船は、なかなか壮観な見応えの有る風体だった。


で、ドックに繋がれた捕鯨船に手を入れ始めた。


お約束のマストを切り倒し、動力の『業火』を通すパイプを設置し、スピードに耐えられるよう補強を施した。


これに砲門付けたら、一隻で戦争請け負えそうだな。


砲門と言えば、船首に一門の『銛』を射つ『捕鯨砲』を設置した。


あっちの世界じゃあ当たり前に『火薬』を使っていたがな、ここじゃぁ何故か『火薬』は開発されてねぇ。


そこで、俺の『業火』を圧縮して銛の射出に応用した。


▪▪▪難点があった▪▪▪


俺が操船していると銛を射てねぇ▪▪▪


銛を射とうとすると船が止まる▪▪▪


こりゃ参ったな▪▪▪


ってえ事で、捕鯨砲は操舵室の右横に付けた。


何故右かと言えば、仕留めた鯨を船上に引き揚げる『揚げ場』が右に有るからだな。


合理的だろ?


◇◇◇


50m級の船とは思えない早さで捕鯨船『ネグロ▪アマーロ号』は海上を疾駆した。


船名?


ご想像にまかせるよ。


「犬っ!見えるか?」


「はいっ!ええと?二時の方向?かな?鳥が海上で飛び回ってます!」


何だよ、『かな』ってのは?


教えただろうが?


時計の概念をよ?


案の定、二時じゃなくて十時だった訳だ。


犬畜生が▪▪▪


まあいい、犬の鼻は当てになる。


俺は十時の方向へ舵をきった。


轟々と耳横で風切り音が唸る。


「でもガンゾウさん?主と話は着いたのですか?」


「あ?んな訳ゃねぇだろ?だがまあ、邪魔はしねえだろうな。」


「何故ですか?」


「何でかな!おうっ!出るぞ!一時の方向!ウラジミール!銛を構えろ!」


ポスカネルの質問は適当にいなし、俺は操船に集中した。


楽しいじゃねぇか!


「はいぃっ!何時でもどうぞぉ!」


小魚の群れに次々ダイブする海鳥の大群がサアッと退いた。


次の瞬間海面が盛り上がり、小魚を一網打尽にしようも大きく口を開けた巨大な鯨が空間ごと飲み込もうとするかのように海上に飛び上がった。


「今だッ!」


「は!はいぃっ!」


ウラジミールが捕鯨砲の引き金を引いた。


『バシュッ!』


破裂音を残して銛が放たれた▪▪▪


のだが▪▪▪


ひょろひょろと飛んで、鯨が遥か遠くに見える海上に『ボチャン』と落ちた。


「ウーラージーミールゥー▪▪▪」


「い!いやいやいやいや!引き金を引いただけですから!」


「俺が悪いと?」


「え▪▪▪

まあ、そう言うことに▪▪▪なる▪▪▪の▪▪▪かなぁ?」


ふん、仕方ねぇ。


今度は十倍の業火を圧縮して詰めた。


「犬っ!次は?」


業火の熱で砲身が赤く焼け始めた。

十倍はヤバかったか?


「犬っ!早く探せっ!」


「そんなこと言ってもぉ▪▪▪

その焼ける臭いはキツいですぅっ!」


いいから探せよ▪▪▪


「出ましたぁ!十一時の方向ですぅ!」


つまり一時の方向な。


おう!良いナブラだ!


「ウラジミールっ!次は外すなよっ!」


「はいぃぃぃっ!」


「今だっ!」


『ドガッ!』


捕鯨砲の砲身は、発射の衝撃で裂け折れ曲がった。


しかし銛だけは見事に射出され、今当に小魚の群れを飲み込んで深海へ潜ろうとする巨大な鯨の頭を直撃し、脳を射抜いた。


銛を射込まれた鯨は即死だった。


身体を痙攣させながら沈んで行く。


『ギャリギャリッ!』っと銛に繋がれたワイヤーが悲鳴を上げる。


そうはさせるかっ!


「ウラジミールッ!操船代われっ!」


そう言って後部甲板の揚げ場に走った。


沈む鯨に引きずられ延びて行くワイヤーを素手で掴み止める。


くぅっ!さすがに重いな▪▪▪


そう思いながらも、少しずつワイヤーを引き戻す。


一時間ほどで仕留めた鯨は、海上に浮き上がった。


「おう▪▪▪やっぱり重てぇな▪▪▪」


「鯨漁って手でするものだったんですねぇ?

僕には出来ないやぁ!」


犬▪▪▪んな訳ねぇだろ?


「タウリさん?あれはご主人様だからこそですよぉ!」


「そうかぁ!そうですよねぇ!」


犬▪▪▪

うぜぇ▪▪▪

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