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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第6章 極北の海で鯨を堪能したい
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◆◆㉒ブラウリオの怒りと溶けたガンゾウ◆◆

「そのなまえはいっちゃいけないの。」


「そんなこと言ったってよ?俺の名前だ。」


「だめなものはだめなの。」


押し問答だな。


『カンゾウ』と言ったら、表情消して聞く耳持たなくなっちまいゃがった。


「ガンゾウさんの名前、ホンとはガンゾウだったのですかぁ?」


犬、呑気な声出してるが、言えてねぇぞ?


ん?ちょっと待て?


「あのな?俺は別にガンゾウでも良いがな?理由も無しに『名前』を否定されれば気持ち良くねぇ。

それから、『その名前』がダメな理由と、ここの奴らが発音出来ねぇのは何か繋がりが有るのか?」


「▪▪▪」


『それは我が話そう▪▪▪』


大きな洞窟に反響するような、地鳴りを伴うような声が響いた。

物理的に身体を揺らす程の太い声だ。


犬が身構えた。


◇◇◇


「我が盟主様がお召しだ。着いてこい▪▪▪」


潰れた口から発される言語は、ギリギリ聞き取れる程の物だった。


そしてそれは、ブラウリオにとっては聞きなれたはずの父親の声音に間違いなかった。


「きっ、貴様っ!父上の顔を▪▪▪っ!冒涜するにも▪▪▪程があるっ!」


ブラウリオは突進した。


怒りのあまり、メタモルフォーゼ起こしていることに気づいていないようだ。


ブラウリオは、人姿、竜姿、人姿に竜翼の三種類に変化出来るが、今は3メートル程の『リザードマン』と化していた。


竜翼の羽ばたきは、アンブロシウスらを吹き飛ばすほどの威力で風を巻き起こした。


その勢いのままブラウリオは父の顔を持つ『異形』にぶち当たった。


躊躇する事無く、引き絞った右拳を『父の顔』に叩き込んだ。


そう思った。


避けられる『間』ではなかったはずだ。


だがブラウリオの右拳は空を切った。


「そのような態度では、盟主様に会わせるわけにはいかぬな。まあ、お前は元々御呼びではないからな。」


雑音にしか聞こえない。


それがまたブラウリオの怒りを刺激した。


「ああ、はめられましたねぇ。」


そう、これはスタルシオンの計略ですね。


だから一人のほうが気楽だと言ったんですが▪▪▪


「はめられたってどう言うことよ?」


ベルギッタさん、スタルシオン怖さにディートヘルムさんの後ろに隠れていますが、付いてきたからには少しは頑張ってもらいますからね。


「ええ、御取り込み中失礼しますよ。」


ブラウリオさんとスタルシオンの対峙する間にゆっくりと分け入りました。


「ブラウリオさん。」


まあ、とりあえず冷静になって頂かないとやりづらくて仕方有りません。


「今貴方がどんな顔をしているのかご確認ください。」


そう言って右手を鏡に変えてブラウリオさんを映しました。


「!」


そうでしょね。

その姿は初めてでしょう。

我を忘れてメタモルフォーゼを起こした訳ですから、有る意味恥ずかしい姿ですよね?


「さて?スタルシオンさんで間違いなかったでしょうか?」


努めて淡々と音にしましたが▪▪▪


「お前だ。お前だけに盟主様は御用がある。」


返事は頂けないのは折り込み済みですが▪▪▪


「うるさい!下郎が!お前の主君はバルブロなる者だったはずだ!

経緯は知らぬが、主をころころ変える変節漢ごときにお前呼ばわりされる謂れはない!」


少し強めに出てみました。


「う▪▪▪うるさい!

主を変えたことなど無い!」


つまりバルブロは死んだ訳ではない、ガストーネに飲まれたと言う事で間違い無さそうですね。


意外にも動揺が激しいですね?


でわ、もう一押し。


「主を変えたことが無いと?

片腹痛いわっ!

ならぼ今現在お前は誰の命でここに居るっ!

どのような自己弁護を積み重ねてもっ!

今この場のお前の言動が『変節漢』だと正しく物語っているわっ!」


「グッ▪▪▪」


言葉に詰まりましたね。


「そもそもガストーネは下を面倒見るような器量は持ち合わせていない。

せいぜい脅して、圧して、無理を呑ませる。

そういう男だ▪▪▪」


そう、事実です。

ガンゾウさんに出会って知りました。


ガストーネの器量の『小ささ』を。


彼は、『魔王』どころか、『魔物』にさえも為りきれなかった半端者なのですよ。


それでも当時、ガストーネを凌駕するものが居なかったから『魔王』として君臨出来たのでしょうね。


「見てみろ。」


そう言って、今度はスタルシオンを映して見せてやりました。


「くっ▪▪▪」


スタルシオンは目を背けましたね。


「その子供のオモチャのような姿はなんだ?

しかも口を潰されてまともな会話など出来ないじゃないか?」


スタルシオンの目に暗い炎が揺らめく。


「何故そこまでバルブロに忠節を尽くす?

既にガストーネに飲まれて復活などあり得ないはずだ?」


「そんなことはない▪▪▪」


「しかも、お前のその不死性はガストーネに掛けられた呪いではないか?

それは私の名の由来となった竜王『アンブロシウス』を殺したからで、同情の余地もない。

そんなガストーネに少なくとも手を貸しているお前は裏切り者の変節漢と言われても仕方ないではないか?」


「殺す▪▪▪」


スタルシオンの身体が怒りで膨張した。

いや、微かに残っていた『理性』的な『鍵』、『箍』が外れた結果、完全な『魔物』と化した。


身体は膨張を続け、身の丈5mにも巨大化した。


「ちょっとちょっと!何よあれ!」


ベルギッタさん、あれがスタルシオンの正体ですよ。


巨大化したスタルシオンは、青竜王アレクサンテリの顔を持ったまま、左右に二本の腕を生やし異様に太く大きな脚と尾を大地に叩き付けた。

さらに、カラスの羽に鱗を纏わせて羽ばたき、その強風は周囲の木々を薙ぎ倒した。


「あれは私に任せて頂く▪▪▪」


ブラウリオさんが前に出ました。


▪▪▪良いでしょう。


怒りに我を忘れての事ならば止めますが、目の色は冷静そのもの。


人姿に戻っていましたしね。


無言で頷きました。


◇◇◇


グゴォォォッッッ!


巨大化したスタルシオンを凌駕するほどの巨大な姿は、それだけで伝承の存在であろうかと思わせるブラウリオの竜姿だった。


アンブロシウスが、ブラウリオは理性的だと思えたのは、ブラウリオが一旦巨大化したあと、スタルシオンと同程度まで身体の大きさを整えたからだ。


しかも、竜姿ではなく、動きが速そうな『リザードマン』型で対峙した。


「貴様が何者であって、どの様な事情があるか知らないし知りたくもない。

だが、お前とおまえが変節して従うガストーネが私の故郷を滅ぼし、父を殺し、更に亡骸を辱しめた罪は重い。

不死と聞いたが▪▪▪

良いだろう、手足をもぎ取り、異空間に閉じ込め、永劫の苦しみを与えよう。」


ブラウリオが言い終わらぬうちにスタルシオンは、その巨大な尾を振ってブラウリオに打ち付けた。


ブラウリオはそれを右脇で受け止め、身体を水平に回転させてその打撃の威力を逃がしながらスタルシオンの脚をすくい、地に叩き付けた。


『ズッダァァァンッッッ▪▪▪』


木々を薙ぎ倒すほどの衝撃波を発しながらスタルシオンは地面に叩き付けられた。


濛々と土埃が巻き上がる。


だが、何事もなかったかのように、その強靭な『脚』で尾を持つブラウリオに強烈な蹴りをかました。


『ドバゴッ!』


顔の形が崩れる程の衝撃がブラウリオの左頬に蹴り込まれた。


ブラウリオもまた、何事もなかったかのように立ち上がり二人は対峙した。


「何なのよぉ!怖すぎるでしょぉぉぉっ!」


「ディートヘルムさん、ベルギッタさんと少し下がっていてください、さすがにこれに巻き込まれたら無事では済まなそうですから、ウラジミールさんも居ませんから、怪我したら暫く痛いままになりますからね。」


「アンブロシウス!アンタはどうするのよ!」


「私は大丈夫です。

さあ、早く。」


ディートヘルムは頷き、ベルギッタを小脇に抱えて走った。


「アンブロシウスゥゥゥゥゥ▪▪▪」


「さてさて、折角の大勝負、水を差されないようにしましょうかね。」


アンブロシウスはそう言って振り返った。


スタルシオンが引き連れていた魔物達がジワジワと迫っていた。


◇◇◇


その声を聞いた瞬間、俺はあの臭ぇ胃液の中に落とされた。


『なんだよ?何なのか教えるんじゃなかったのか?』


ジュワジュワ言いながら身体が溶け始めている。


『ふん、なかなか痛ぇじゃねぇか?』


『そうだ?犬は▪▪▪』


『あの者は≪▪▪▪≫の相手をさせておる。』


ふん、無視されてた訳じゃねぇようだな。


『そうかい、だがこれは何だ?消化しようってか?』


『長い話になる▪▪▪ならば一度我と同化したほうが早かろう?』


なんだい?俺の能力知ってるみてぇな言い方だな?


まあ、そういうことならノってみるか▪▪▪


『そうかい、じゃあ任せたぜ。だがな、その結果お前さんの腹を食い破っちまうかもしれねぇぜ。

何せ俺の細胞は貪欲だ▪▪▪』


『フォッフォッフォッ▪▪▪楽しみにしているぞ。』


ふん、ああ、葉巻が吸いてぇな▪▪▪


俺は全身を溶かされた。


そして吸収された▪▪▪

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