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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第6章 極北の海で鯨を堪能したい
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◆◆⑪牛とポスカネルのダンス◆◆

「ガンゾウさん!」


ちょっと葉巻の火を落とすのに視線を切った。


その途端、左側頭に衝撃が走った。


お?少し時間がかかるか?


ミノタウロスが振り回した棍棒は、俺の左側頭から顔半分を潰した。


「と、と、まぐじゃべれべぇびゃべえば▪▪▪」


自分がなに言ってんだかな?と、よろめいたところに他の2体の連続攻撃が来た。


一体は先頭を飛び越えて頭上から棍棒を振り下ろした。


頭を狙ってきたが、右に身を交わした▪▪▪

つもりだったが、見事に左肩に命中、左腕をもぎ取られた。


「ガンゾウさん!」


ああ、まあ大丈夫だ。

ポスカネル、お前は再生出来ねぇからな、ちょっと離れてろ。


口が潰れてるからな、念話を飛ばした。


って?おいおい?

ポスカネル?

何か熱くなってねぇか?

蛇が逆立ってるぞ?


なんて考えるのに0.000003秒。

いや、測ってないからわからんがな。


なんてところに、最後の3体目の一撃。


おれの右手から『鎌』を水平に振ってきた。

正確に首を狙って。


三連星か?


さすがにそこまで甘い顔を見せる訳にはいかねぇからな。


首に届く寸前、『ピタ』と右手人差し指と中指、親指の3本で止めた。


そのまま約2秒。


「まあ、俺に指3本使わせた事は誉めてやろう。」


潰された頭は再生を完了していた。


落とされた左腕も磁石が引き合うかのようにくっついて、切断面は白い煙を上げて、細胞同士が勝手に再生と治癒を完了させた。


まるで逆再生を見るかのようだろうな。


その間、俺に一撃を食らわせた最初の一体はポスカネルと対峙していた。


しばらくぶりに『蛇化』した頭髪は逆立ち、光彩は金色に、瞳孔は銀色に輝いていた。


だが、このミノタウロス達、なかなかの強者だな。

ポスカネルの蛇を見ても石化しねえ。


少し動きがトロくなった程度か?


両手を広げたポスカネルの掌には、片側3本、合計6本のクナイが有った。


ポスカネルはそれを宙に放ると、六匹の蛇髪がそれを咥えた。


おお、2本は見たこと有るが6本ヤれるのか?

絡まねぇか?


とか思っていると、他の二体が俺に襲い掛かってきたからな。棍棒のヤツには腹に蹴りを一発、鎌のヤツには鼻先に拳骨を叩き込んでやった。


おもしれぇもん見てんだ、邪魔するな。


「タタタァン▪▪▪タタタァン▪▪▪タタタタァン▪▪▪」


ポスカネルが歌っている。


ワルツだな。


『ダンッ!』


踏み込みの音が響いた。


テンポが変わった。


小刻みに足がステップを踏む。


んん、フラメンコだな。


リズムに合わせて頭を振る。

腰を捻る。

胸を反らす。


そして、そのステップがコントロールするかのようにクナイを咥えた蛇が伸縮自在にミノタウロスに襲い掛かり切り刻む。


『ブバァッホッ!ブバッ!』


悲鳴なのか呼気なのか分からねぇが!間違いなく苦しげな呼気だ。


ポスカネルの攻撃はそれに留まらない。


クナイを咥えていない蛇髪が、クナイを咥えた蛇髪の隙間を埋めるかのように威嚇と毒液での攻撃を繰り返す。


こりゃえげつねぇな。


毒液は強酸性なのだろう、毒液を浴びたミノタウロスの皮膚が『シュウシュウ』と音を出して焼け爛れ始めた。


だがコイツら、なかなかヤるな。


そもそもミノタウロスがチーム組んで行動▪攻撃するなんザァ聞いたことがねぇ。


しかも一体一体規格外の大きさだ。


俺がぶっ飛ばした二体も息を吹き替えしやがったし、その上攻撃意欲は失ってねぇようだしな。


「手強い!ガンゾウさん!この子達普通じゃ無いですよ!」


ふん、この状況でも『この子達』か?

ホンとお姫様だな。


「もう!そんな感想は要りません!」


ポスカネルが対峙しているヤツがボスらしいな。

先頭に居たしな。


クナイは仕方ねぇとしても、あの毒液はマンティコア並だと思うのだがな。

皮膚の表面を焼いた程度だな。


ん?良く見りゃぁ体表から何か分泌しているな?


「なかなかおもしれぇ事するじゃねぇか?」


後ろから声をかけられて、持っていた棍棒を横殴りにしてきた。

が、二度も食らうわけが▪▪▪


ベグベギッ!


いや、訂正、二度も食らった。


左脇腹▪▪▪

肋骨イカれた▪▪▪

内蔵に刺さった▪▪▪

粉々になった肋骨くっついた。

骨が刺さった内蔵再製した。


その他もろもろ回復した。


この間0.00005秒。

測ってないからわからんがな!


久し振りに『獅子丸』を抜いた。


ちょっとコイツらに興味が湧いたから魔滅は抜かねぇ。


しかも抜いた獅子丸を『峰』に構えた。


「どうした?何を驚いている?」


頭を潰した男が何事もなかったかのように声をかけてきた。


更に普通なら全身の骨が砕けた肉袋になるほどの一撃を食らわせたにも関わらず、平気な顔をしている。


いや、手応えは有った。


だが男は何も無かったように葉巻の煙を吐いている。


恐怖心?


これが恐怖なのか?


ミノタウロスは濁った思考の中でそれを確信した。


『コイツはアイツよりもヤバい!』


「ブブムオッホゥッ!」


「牛!わかんねえよっ!」


ミノタウロスはポスカネルとの対峙を解き、筋肉を一回り大きく隆起させて襲い掛かってきた。


振り下ろす棍棒を獅子丸が流す。


左に流し、その反動で円を描くように右からミノタウロスの左肩に獅子丸を振り下ろした。


獅子丸の峰がミノタウロスの左肩に食い込む。


「グバッバァヅ!」


苦悶の咆哮を上げるミノタウロス。


峰だ。

腕は落とさねぇよ。


仲間を助けるかのように他の二体も襲い掛かってきた。


棍棒を振り下ろす。

その間隙を鎌が埋めてくる。


ほお、なかなかヤるじゃねぇか?


それぞれの一撃は俺の背をかすめた。


おうおう、久し振りに骨のある奴等だ。

なんちゃらいった魔王なりたがりとは訳が違うな。


もっとも、ミノタウロスだからな。

筋肉バカには違いねぇからな。

俺みてぇな物好きじゃなきゃ、呪力攻撃でとっくに灰かもしれねえがな。


何て事を、三体の攻撃を獅子丸で受け流しながら、時に『優しく』一撃を入れながら楽しんだ。


30分も遊んだか?


俺はまだまだ遊べるが、三体は無惨なほどスピードが落ちたな。

スタミナ切れだな。


「もう終わりか?」


そう言って獅子丸を構え直し、棍棒を切り飛ばした。

鎌の刃を切り折った。


ふん、もう少しやりたかったがな。


俺は新しい葉巻を出して火をつけた。


指先に灯った火を見たミノタウロスのリーダーっぽいヤツが膝を折った。


で、何か言ってるが『牛語』なんか分かるわけもねえ。


「何か言いてぇ事が有るのか?」


ぶっふぁぁっ▪▪▪

と、派手に煙を吐いて聞いた。


「なら聞いてやる。だがな、牛語は分からねえ。ちょっと弄るからおとなしくしてろよ。」


そう言って無造作にリーダーっぽいヤツに近付いた。


「ガンゾウさん!危ないですっ!」


ポスカネル、大丈夫だよ。

コイツら敗けを認めたようだからな。

もともと牛だからな。

飼われる資質は有るんだよ。


で、リーダーっぽいヤツの額に右手人差し指を『ズブッ』と差し込んだ。


一瞬身じろぎしたが、案の定大人しい。


ふん、今までミノタウロスなんて懸賞首でしかなかったからな。頭の中なんて覗こうとも思わなかったが、意外にまとも、いや、獣人族あたりとあまり変わらねぇな▪▪▪


で、思考表現と言語中枢を強化してやった。


むりっと指を抜いた。


「どうだ?喋れるようになったか?」


俺の問いかけに何か答えようと口を動かしているのだがな、なかなか上手くいかねえようだな。


「まあ、待つからよ、焦らねぇで喋ってみな。」


俺はちびた葉巻を揉み消して、新しいのを出した。


「ば▪▪▪まろく▪▪▪が▪▪▪つがえだのでずか?」


んんん、惜しいな、もう少し待ってやる。

頑張れ。

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