◆◆①ガンゾウとルルキーヌ◆◆
第6章スタートです!
「さっぶっ!」
だから防寒対策しろよって言っただろうが▪▪▪
「で、ですがこれは流石に▪▪▪」
「そうだな▪▪▪」
「イワコフさん?ルルキーヌ大陸ってこんなに寒いのですか?」
体に合うサイズの防寒着が無くて、毛皮をぐるぐる巻きにしたディートヘルムは、もはや怪物以外の何者でもないな。
「ひっ!酷いぃっ!」
こらこら、そんなキャラじゃねぇだろ?
ほれ、雪に嵌まるぞ?
ズボボッと一瞬でディートヘルムの姿が消えた。
「落ちましたね▪▪▪」
「ああ、落ちたな。」
「何を呑気なことを!忠也!ロープを!」
「はい!隊長!」
「▪▪▪もういや▪▪▪」
新喜劇か?
「イワコフ?」
「はい。流石にこれは異常です。
時期的にも気温が上がってくる季節ですから、でなくともルルキーヌ南部のこの辺りはそこそこ暖かい地域なのですが▪▪▪」
ふん、そうかい▪▪▪
「まあ、私達兄妹には何ともない天候ですが。」
「ブラウリオさん!そんなこと言ってめちゃめちゃ着膨れてますよ!」
だな、そう言ったタウリは冬毛なのか?暑いとか言って上着脱ぎやがった。
俺?
寒いぞ。
だがな、不死身だし凍死とかしねぇし。
暑い寒いは感じるがな。
それで動けなくなることもねぇ。
度が過ぎると嫌気がさすがな。
「そういやぁフロリネに初めて会ったときもやたら暑い幻覚見せられてたなぁ?」
「そうでしたぁ!ホントに性悪な幻覚でしたぁ!」
「う、う、うるさ▪▪▪い▪▪▪」
ああ、凍りかけてるな。
「幻覚だとすれば▪▪▪」
「何か思い当たるのですか?」
「はい。」
「じゃあよお!さっさとその元凶潰そうぜ!ヤってられねえよ!」
ヘリオス、腰が痛えのか?
さっきから擦っているな。
「しかし『潰す』訳にはいきません。」
「何でだよ?」
「ルルキーヌは、我ら巨人族が半数を占める大陸ですが、一方で妖精の棲む大陸でもあるのです。
この天候が幻術、もしくは妖精の天候操作であるなら、我々は何か彼らの機嫌を損ねるか、警戒させる事をしてしまったのだと思います。
ルルキーヌでは彼らを敵に回してうまく行くことなど一つも有りませんから、何とか『許可』を貰うようにしないと▪▪▪
何か思い当たる節は?」
有る。
有りすぎる。
が、俺の存在だろうな。
警戒しているだけだとは思うが▪▪▪
「ならどうやって許可を貰う?」
凍てつく風に晒されながらも葉巻は絶さねぇ。
派手に煙を上げ続ける。
「ね▪▪▪ねえ▪▪▪ガンゾウ▪▪▪」
フロリネ。鼻から氷柱が伸びてるぞ。
「もしか▪▪▪して▪▪▪だけど▪▪▪葉▪▪▪巻の匂いと▪▪▪かもダメな▪▪▪んじゃない▪▪▪の?」
「あ?何でだ?」
「私▪▪▪達エル▪▪▪フも妖精の仲▪▪▪間だけど▪▪▪葉巻の匂▪▪▪いは苦▪▪▪手▪▪▪純▪▪▪粋な妖▪▪▪精なら尚更▪▪▪か▪▪▪も」
ふん▪▪▪
まあ一因としては認めても良いが▪▪▪
「分かった。ポスカネル。」
「▪▪▪はい▪▪▪」
取り敢えず寒すぎるか。
空間を引き裂いて地下洞に繋いだ。
「ほれ、一旦退避だ。」
地下洞には温泉が湧いていた。
「おう!ありがてぇ!腰が痛ぇんだ!」
「私達は平気だけど、せっかくだからね。」
クリスタ?何がせっかくなんだ?
お前と兄貴は一番着膨れているぞ?
まあ、取り敢えず移動した。
◇◇◇
「いやぁぁぁぁ▪▪▪▪▪
いい湯だ▪▪▪」
地下洞に入るなり素っ裸になって温泉に飛び込んだのはヘリオスだ。
「ちょっと!ヘリオス!前くらい隠しなさいよ!」
「なんだぁ?こいつかぁ?ほれ、なんなら相手してやるぞ?」
「バッカじゃないの!爺ぃの相手なんかするもんですか!」
「そう言うな?ほれほれ、なかなかのものだろ?」
ヘリオス?隊長さんがお怒りだぞ?
「へ?」
振り返ったヘリオスは、ポスカネルの蛇化した髪に睨まれて固まった。
「忠也、隅に置いておいて下さい。」
「か、畏まった。」
「それでどうしましょうか?」
ポスカネル?『足湯』しながらか?
まあ良い。
「ああ、俺一人で行ってくる。
お前らはイワコフの案内で先に極海に行って『狩り』の準備しておけ。
金はウラジミールに預けてあるので十分だろ?」
「わかりました。
でも一人で行くのは駄目です。」
「あ?誰が来たって足手まといだろうが?」
「だからです。
お一人だと面倒になって何やりだすかわかりませんから。
付いていくのは、むしろ足枷です。」
「んあ▪▪▪」
ゲンナリする。
「とは言ってもそれが出来るのは私▪▪▪」
「お前はコイツらの面倒見る約束だ?」
「▪▪▪私が居ないうちはブラウリオさんに▪▪▪」
「駄目だ駄目だ、お前だからコイツらの面倒見れるんだ、ブラウリオが駄目なんじゃあねぇ、だから俺一人で▪▪▪」
「ならば私がお供しましょう。」
▪▪▪ブラウリオ▪▪▪空気読めよ▪▪▪
「それにガンゾウさん?一人で行くと言っても何処へ行くかお分かりなのですか?」
うっ▪▪▪
「じゃあ私がぁ!」
「ウラジミールさんは今回資金を預かっている立場ですし、何かあったら回復▪治癒をお願いしなければいけません。
ですからウラジミールさんはポスカネルさんのチームです。」
「はぁぁぁ▪▪▪」
「と言うわけで、ガンゾウさん?よろしいですね?」
まあ、ブラウリオなら荷物にはならんか▪▪▪
「わかった。良いだろう。」
チビた葉巻を揉み消した。
「じゃあさ!ガンゾウ!ここに壁を造ってよ!出掛ける前に温泉に入りたいよ!」
フロリネ、面倒だ。
「アックリスタじゃあさ!結局温泉に行かなかったじゃない!温泉に行くって約束したよね?」
そう言えばそんな話も有ったか。
面倒だな。
が、仕方ねぇか▪▪▪
急ぐわけでもねぇしな▪▪▪
「忠也、ディートヘルム、手伝え▪▪▪」
『え?』
『あっ!』
ディートヘルムを置き忘れてきた。
空間を開けて戻り、ディートヘルムを引き上げた。
カチカチに凍っていた。




