◆◆㉔大宴会の後で▪▪▪そして▪▪▪◆◆
お読みいただきありがとうございます。
第5章、終了です。
次章は、少し『ガンゾウの戦闘シーン』を増やしたいと考えていますが▪▪▪
彼等は勝手に動き出すので、作者的には制御に苦労しております。
読後感など頂けますと、超ウレシーです!
アックリスタの大宴会は三日三晩続いた。
ウラジミール達も、時に宿に戻り風呂と睡眠を取って戻り、飲み食いを繰り返した。
俺?
勿論寝ずに飲み食い続けた。
多少面倒なのはジャビを始め、役人達や豪商と呼ばれる有力者、また、海外の商人たち、果てはたまたまギルドに来ていた賞金稼ぎ達が入れ替わり立ち替わり挨拶に来たことだ。
最初はウラジミールが上手く捌いていたが、ウラジミールが宿に戻るとワラワラとやって来て話したがる。
面倒だが、まあ、適当にあしらった。
だがそこで面白い話しも聞けた。
北方大陸の巨人族の賞金稼ぎで、名をイワコフと言ってたな。
「やはりこんなに旨い酒が有ると『鯨』を食いたくなるな。」
「!何?」
「ああ、北方じゃあ最高の肉だと言われている。
まあ、もっとも捕獲するのは命懸けだからな。
高価だしそうそうお目にかかれるものじゃぁねぇ。
半端な魔物なんかよりずっと強いからな。
だが旨ぇんだ。」
食いてぇ▪▪▪
21世紀の日本じゃぁなんやかやと『捕鯨禁止』『調査捕鯨』やらと、鯨食うには面倒な時代だった。
ガキの頃は給食に出るくらいポピュラーな物だったがなぁ▪▪▪
竜田揚げ▪▪▪
オーロラ煮▪▪▪
鯨ベーコン▪▪▪
それこそ刺身なんざぁあのヴァン▪ルージュと最高のマリアージュじゃぁねぇか?
日本の文化だったんだ。
そもそも鯨の数が減ったっつうのも、別に日本の捕鯨だけが原因じゃぁねぇだろうが▪▪▪
いやいや、もうそんなことはどうでも良い。
「鯨は何処にいけば食える?いや、『狩れる』?」
「なんだい?本気で言ってるのか?」
「ああ、勿論だ。」
「そうかい、まあアンタならやれるかもしれんが▪▪▪
北方ルルキーヌ大陸の最北端、極海の『角鯨』が最上だと言われている。
だが、大きいものだと15メートルにもなる鯨だ。
深海に潜ってなかなか姿を現さねぇし、群れで行動してるからな。一頭だけを相手に出来る訳でもねぇ、狩るにもそれに見合った船を用意せにゃならんしな。
成果に対して費用は莫大になるぞ?」
「旨ぇんだろ?なら金は関係無ぇ。」
「分かった。じゃあよ、俺を雇いなよ。案内するぜ。これでも昔は漁師だったんだ。
まあ、極海付近で生まれた男はだいたい漁師になるがな。」
「良いだろう。頼むぜ。
おう!おメェら!次に食うものが決まったぞ!いきたくねぇヤツはここでおさらばだ。」
「行きまぁぁぁす!」
ハモるな。
こうして俺達はイワコフの案内で北へ向かうことになった。
◇◇◇
出発前、俺達はカスパルと別れた。
「こう見えてもな、この禿げ頭はデュラデム国王の義理の弟だ。要塞が完成したらコイツの紹介状を持って王都へ行って王太子のアシュリーに雇ってもらえ。」
カスパルは俺とヘリオスを交互に見た。
「だがな、あまり尖ったことやってると危険視されかねねぇからな。
なるべくおメェの特技は平和利用に限定しろ。それが長生きの秘訣だ。
異世界転移仲間として最後のアドバイスだ。」
「分かりました。では、行ってきます。」
そう言ってカスパルは国境の山道に向かった。
ジャビが集めた土木工を引き連れて。
必要だと言われた資材は順次送る手筈はつけた。
またまた俺の預け金と宝物を使った。
が、預け金の桁が減ることは無かった。
◇◇◇
「その『鯨』というのはそんなに美味しいのですか?」
おいおい、ポスカネル、俺がわざわざ出向くことが何よりの証明だろうが▪▪▪
「そうですね。ガンゾウさんが美味しいと言うなら間違いないでしょうね。」
声に出してたか▪▪▪
「ああ、皆に言っておくことがある。」
アックリスタで調達した角馬を止めて皆俺を見た。
「今からお前ら全員ポスカネルの手下だ。」
「ガンゾウさん?」
「ああ、単純に俺がいちいち指図するのが面倒なだけだ。
文句有るか?」
「ありませぇーん!」
ポスカネル以外見事にハモった。
「ま、待ってください!」
「良いじゃないですか隊長。」
「隊長って言わないで下さい!」
「じゃあボス?」
「それも嫌です!」
「じゃあ『姫様』!」
「お、良いねぇ。」
「タウリくん!ヘリオスさん!ふざけないで下さい!」
「じゃあ選んでよ。隊長か姫様。」
ポスカネルが真っ赤な顔してヘリオスを睨んだ。
ザワザワと髪の毛が逆立ち始める。
「おっとぉ!そりゃ無しだ!」
ヘリオスがおどけたように飛び退いた。
ヘリオス▪▪▪また腰いわすぞ?
「やっぱり隊長かな。ねぇポスカネル、諦めなさいよ。」
「私は姫様が良いですぅ。」
「雑音は気にしなくて良いから、決定ね、隊長!」
「もう、フロリネさんまで▪▪▪」
細かい小突きあいを始めたウラジミールとフロリネは放っておいて。
「そう言うわけだ、頼んだぜ『隊長』。」
「もう▪▪▪」
ははは。
さあ、行くか。
角馬の馬首を北に向けた。
晴れ渡った青空の彼方に真っ白な雪を被った山々が連なって見えた。
俺は新しい葉巻を出して、盛大に煙を吐いた。
◆◆第5章 了◆◆




