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異世界無頼 魔人ガンゾウ  作者: 一狼
第5章 牡蠣は熱々のオリーブオイルをぶっかけて食うに限る
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◆◆㉒ガンゾウとガンゾウの金◆◆

『ぐじゅっ▪▪▪』


だから汚ぇ青っ鼻啜るな▪▪▪


「酷いですぅ▪▪▪蛙に呑まれたのに置いてけぼりなんてぇ▪▪▪」


グジグジ泣いてんな▪▪▪

酒が不味くなる。


俺達はアックリスタに戻り、ジャビへの報告のためにあのバルに居た。


「そりゃ自業自得だろうが?テメェで細工した蛙に呑まれてりゃ世話ねぇやな。」


とはヘリオスだ。


「全くです。ウラジミールさんはもっと謙虚になった方が良いのです。」


タウリは大分ものを言うようになったな。

だがあまり天狗になるなよ?


「あらあら、暫く見ない間に扱いが一段と落ちたわねぇ?」


「姫ざばぁ▪▪▪」


「よ!寄らないで!鼻水が!鼻水ぅ!」


ああ五月蝿ぇ。


「ところでウラジミール?」


「ばい、ご主人ざば▪▪▪」


「ちゃんと掃除してきたんだろうな?」


「勿論でございますぅ!今後デュラデムが侵略戦争を仕掛けるのに都合が良いですから!綺麗にして参りましたぁ!」


「つうことはよ?デュラデムも攻め込まれやすいっつうこったな?」


「あ▪▪▪」


「それは困る!ガンゾウさん、むしろその山道は塞いでもらいたかった!」


まあ、ジャビの立場ならそうだろうな。


「じゃあよ、カスパル。」


「はい。」


カスパルは、俺達に同行、正確には、タウリに身柄を預けたのだな。


「おめえの『知識』で山道に関門を作れ。

ほしい材料が有ったら言いな。

大概のものは用意してやるよ。

そうだな、難攻不落の要塞みてぇなのが良いな。」


何かを作るのは最大の時間潰しだ。

土木作業、建設工事なら尚更だ。


「分かりました。

では、何処かに一部屋設計室を用意願えますか?

速やかに設計図を作成いたします。」


思った通りだな。

コイツは異世界転移で『知識の泉』を手に入れやがったな。


だからこんな異世界で戦車なんて作れる。


実は俺も持っている。


もっとも、専門チャンネルにはアクセス出来ないがな。


「じゃあ、その前によ、ジャビ?宴の準備は出来てんだろうな?」


「勿論だ、だが本当に良いのかい?今回の報酬を差っ引いてもかなりの持ち出しだぞ?」


「ああ、ここのギルドへ案内してくれ。預け金がある。」


「わかった。」


そんな流れで俺達はアックリスタのギルドへ向かった。


◇◇◇


アックリスタのギルドは、ヘリオスのギルドと遜色の無い規模を構えていた。


先頭を歩いて、如何にもな雰囲気でドアを開けたのはヘリオスだった。


「よお!邪魔するぜ!」


「ヘリオスか?おお!ヘリオスじゃねえか!」


「ベニート!久し振りだ!」


「禿げたなぁ!ヘリオス!」


「五月蝿ぇ!これもヘアスタイルだ!」


「アッハッハ!どうしたんだ?ゾロゾロとお仲間か?」


「おう!」


「何だよ?総督までいるじゃねえか?」


ベニートと呼ばれたギルド長は、艶やかな黒髪を後ろで束ねて洒落た刺繍が施されたシャツを着ていた。


なんだな、イタリアのイケてるオヤジをそのまま実践している感じだな。


「ギルド長、話は聞いてると思うが、こちらが大宴会の主催者、ガンゾウさんだ。」


「あ?あれマヂなのか?誰の悪戯かって話してたんだぞ?」


「ベニート、俺が保証する。マヂだ。でな、この標札の預かり高を確認してくれ。」


「お、おう、ちょっと待て。

おい!誰か預かり金の帳簿を持ってきてくれ。」


「いや、ベニート。見たこと有るはずだ。

とんでもないヤツが一人居るだろ?」


「▪▪▪待て待て待て待て?その人なのか?」


「ああそうだ。」


「嘘だよな?」


「だから標札と合わせてみろよ。」


一頻り押し問答が続く。


ギルドの奥がざわめき始めた。


そして、頭を掻きながらベニートが戻ってきた。


「いやぁ、驚いたよ。

最初に回状が来たときは間違いだろう、次の回状で訂正されてるはずだって取り合わなかったんだ。

ところがその後額が減るどころか増える一方だ。

しかも桁が違う。

小さな国の国家予算なんか軽く超える金額だからな。

良いのかい?

顔を晒して?

狙われるぞ?」


ベニートとやらが俺を見ながら言った。


ヘリオスはニヤニヤ笑ってる。


ふん、面白くねぇな▪▪▪


空間から葉巻を取り出し、指先に火を点して点火した。


パスッパスッと、小気味の良い音をたてて煙を吐いた。


「魔道士なのか?」


「違うよ、魔王▪▪▪になりたくない魔人、っつうところかな。」


ヘリオス、勝手な事言ってんじゃねぇ。


「へへっ▪▪▪」


知らんぷりだ。


「まあわかった。で?どうするんだ?まさか全部下ろすとかじゃねぇよな?」


「ああ、上限有るのは分かってる。その上限いっぱいをジャビに渡してくれ。

足りねえならここから持っていけ。」


そう言って空間を開けた先には、目が潰れそうな輝きを放つ金銀財宝が無造作に積まれていた。


「な!何ですかぁ!」


ウラジミール、半分目が飛び出てるぞ?


「ウ、ウラジミールさんも知らなかったのですか?」


「はいぃ▪▪▪タウリさん▪▪▪」


「ガンゾウ?何処かの国の宝物庫に勝手に入ったんじゃないの?」


「あ?クリスタ?盗っ人扱いか?なんなら入って見てこい、何処かに繋がっているのかどうかな?」


「ごめんなさい、疑ってるみたいなこと言って▪▪▪」


クリスタがブラウリオの後ろに隠れながら謝った。

謝るくらいならもう少し考えてから物を言え。


「ごめんなさい▪▪▪」


声に出てたか。


「だがガンゾウさんよぉ、流石にこりゃぁ並みじゃねえぞ?まあ、要らぬ誤解を招かねぇようにするためにも出所明かした方が良いだろう?」


面倒くせえな。


「俺がな、この世界に転移した最初の場所は『魔物の巣』なんだよ。」


「なに?」


「あんなとこに飛ばされたらあっという間に食われちまうだろうが?」


「ああ、喰われたよ。」


「喰われたって▪▪▪」


「ご主人様ぁ、皆さんご主人様が『不死』だってことをお忘れのようですねぇ。」


らしいな。

まあいい。


「『魔物の巣』はな、その昔は人間の大陸だったらしいが知ってるか?」


「?」


「いや、そんな話は初めて聞いた。」


ポスカネルまで首を振りやがった。


「こう言っちゃぁなんだがな、あそこにはこんな金銀、玉石の類いはゴロゴロしてるぞ。」


「何でだ?」


おいおいヘリオス?

前のめりすぎだぞ?


「『魔物の巣』になる以前の遺産▪▪▪なんだろうな。

死ねねぇからな、復活しちゃぁ喰われを繰り返して、いつの間にか喰われなくなった。

喰われる前に殺すようになったからな。

そうなると時間という牢屋に閉じ込められたのも同じだ。

だから暇潰しにトレジャーハントしてたら溜まっちまったっつう訳だよ。」


ああ、面倒くせぇ。


チビた葉巻を揉み消して新しい葉巻に火を着けた。


「しかも魔物なんてぇのは、『喰う』のが最大の生存理由だからな、喰えねえ財宝なんつぅのは、奴等には意味が無ぇんだ。


「つまり何かい?『魔物の巣』に行って無事帰れたら大金持ちっつう事か?」


「▪▪▪まあな▪▪▪」


帰れたらな。


「はは、そりゃスゲェや▪▪▪

だがそんな夢見てあの大陸に渡ったらそれまでだな。

流石に俺も食いつけねぇや。」


ヘリオスの判断は正しい。


仮に最強のパーティーを組んだところで、人間である限り2日と持たないだろう。


それだけあそこはヤバイ。


勿論俺は平気だ。


何せあの大陸で喰われ続けて数年、結果、あそこで俺を喰える化け物は居なくなった。


つまり、あの当時という前提付きだが、おれは『魔物の巣』で最強になった訳だからな。


「でも不思議ですぅ?」


「何がですか?ウラジミールさん?」


「はいぃ、『魔物の巣』の化け物達は何故他の大陸に渡って来ないのでしょうか?

食欲を満たしたいのなら、魔物しか居ない大陸ではなくて、他の4つの大陸に来れば食べ放題ですぅ?」


「食べ放題ってぇのは些か不穏当だな。

だがその通りだ?

ガンゾウさんよぉ、何でだ?」


「知らねぇ。」


知ってるけど面倒くせぇ。


「大方飛べるヤツや泳げる奴が少ねぇんだろ。

それより金はこれで良いんだな?」


「ああ、大丈夫だ。」


「で?何時ヤる?」


「準備に三日欲しい。

四日後の真昼に開始ということでどうかな?」


「ん、良いだろう。

じゃあそれまでカスパルのケツを叩いて要塞造りの設計でも見物するかぁ。」


そう言って一際大きく葉巻を噴かした。


まあ、何れ魔物の巣には行かにゃあならんだろう。


アイツが俺より強くなっていれば死ねるかもしれんしな。


なんて考えるのに0.0000001秒。

いや、計ってないからわからんな。

飲食店就業者のお仲間さん!

頑張りましょう!

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