237.第4章 プロローグ
『大賢者様の聖図書館』、第4章開幕です!
今週はプロット整備のため、プロローグのみの更新となります。
来週更新分からの本格的な第4章開始をお楽しみに!
空の旅は、案外快適だった。
びゅう、と吹き付ける風が少し冷たいし、高すぎて怖い……。けれど、背中に感じる温かさが頼もしくて、長く飛んでいる間に、怖さはだいぶ薄れてきていた。
余裕が出てくると、周囲の光景も落ち着いて見ることができてくる。
眼下に通り過ぎていく、どこかわからない村、街。
森、草原、きらきら光る川や湖……。
「……きれいだね」
零れるように呟くと、背後でぴくり、とルゥルゥが反応した。
「そうか?」
「うん。……人間は、こんなに高い場所まで来られないから」
「ああ。言われてみれば、そうだな」
妖精にしてみれば、珍しい光景ではないのかもしれない。
でもわたしにとっては――自然が美しいこの世界を、こんな風に見下ろすなんて、今まで想像したこともないような経験なのだ。
……オルフィード城を出発して、どのくらい経っただろう。
妖精の一団はものすごい早さで移動していて、今自分がどこにいるのかわからない。
ここはまだ、オルフィード国内なのだろうか?
それとも、もう別の国へと来てしまっているのだろうか。
私は城下街とロランディア村のことしか知らないのだけれど……それでも、オルフィード国から離れてしまったかもしれないことが、少し寂しく感じた。
そんな時。
ふと、身体に受ける風の感じが変わったのに気がついた。
先を飛ぶ妖精たちが顔を見合わせ、遠くの方を指差して頷き合っている。
「……?」
首を傾げているうちに、妖精たちはぐいん、と進む向きを変え、一団の速度がさらに上がる。
ぐん、と大鳥の角度が下向きに変わって、身体のバランスを崩した私を、ルゥルゥが支えてくれた。
「中継地点に着いたみたいだ。降りるから、しっかり掴まってろよ」




