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嫁のイケメンオーラに負けそう

フリードリヒ=ベルヘルドの朝は早い。

朝日が昇る少し前に目を覚まし、広大な屋敷の周りを1時間ほどかけて哨戒、侵入者用の罠に異常がないかを確かめ門に向かう。数ヶ月前におよそ300年続いた人間と魔族の戦争が終結を迎え、魔族領と人間領の行き来に制約が()()()()()()()()()()屋敷の門は厳重な結界陣と鋼鉄で組み上げられたなんとも厳しい作りに変わった。

細かく編まれた格子の門の奥、まだ鶏すら鳴いていない薄暗い中から甲高い声が響き渡る。


「アミーリア様ぁあ!」 「こっち向いてー!!」「貴方との一夜が忘れられない!!」「指差してえ!!!」


防音陣を張っていても木霊する歓声、その目当てはフリードリヒの視線の先にいる。

スラリと伸びた手足、長い金糸を高く結い上げた後ろ姿。切れ長の涼やかな瞳は神秘的なグレー。令息に混ざっても見劣りしない長身をもつ美青年、もといフリードリヒの『妻』、アミーリア=ベルヘルド、社交界では麗の貴公子と呼ばれた歴とした女性だ。


「散れ!!アミーリアは僕の妻だ!!!!!」


数ヶ月前、戦争の終結と和平の証としてフリードリヒに嫁いできた妻の親衛隊を蹴散らす。


フリードリヒの朝は早い。


――――――――――――――――――


「迷惑をかけてすまない」


一通り喚いた門の親衛隊は朝の鐘が鳴ったと同時に解散した。


「今日はどうして門にいたの、アミーリア」


真四角のテーブルに紅茶を並べる。本来はメイドの役目だが雇い入れた3人が揃ってアミーリアに惚れ、怪我人が出る騒ぎになりかけた為、屋敷には兼ねてから務める家令と庭師、料理長ほか数名しかいない。

しかもみな人型魔族であるが男性型のためにアミーリア付きの侍女が不在である。料理の配膳は家令が行うものの紅茶を入れたりの細かなことは自分たちでやることになった。


アミーリアは眉を下げ、礼を言うと紅茶に手を伸ばす。ちなみに彼女は紅茶を赤黒い粘性の液体に変身させた時から茶器に触れることは禁止になった。


「毎朝、フリードリヒには迷惑をかけているから自分でなんとかしようと思って」


「別にいいんだよ、むしろ君が行くと…うん…盛り上がるから…」


一応名家の令嬢たちである親衛隊はアミーリアの姿が見えないときは10分ほどで帰っていくため、毎朝フリードリヒが行うのは結界の整備と確認だけである。

統率の取れた非常識集団だ。


「悪い子たちではないはずなんだ」


アミーリアも婚礼直後は仕方ないにしても数ヶ月も早朝訪問が続くとは思っていなかったようで、ここ最近は屋敷からあまり出ようとせず、奥まった中庭で過ごしている。


「まあ…仕方ないんじゃない、かな。彼女たちからしたら魔族に人質に取られたみたいなものだから」


フリードリヒの伏せた目に陰が差す。

青白い手の甲に魔王の刻印があるのを見て、紅茶を啜った。

和平が成ったとしても、互いを疎む気持ちが消えて無くなるわけではない。

フリードリヒ(主人公)

アミーリア(嫁)


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