十二話
今宵屋の開店後。
骨董品を買う為に来た客が数人。
理想の物があったのか、来た客全員が何かを買っていく。
それを見送り、時間が出来た時にホタルは夢の事を話す。
他の皆はホタルの話を面白そうに聞いた。
凄く中途半端な終わり方にワカナは文句を言い、コヨミは夢なら仕方無いと諭す。
もし夢の続きを見る事が出来たら、また皆に話すとホタルは約束した。
お昼が過ぎた頃、大人数が来る。
数人だが、顔色が悪い。
一番先頭に立っている人がカウンターの前に立つ。
その後ろに居る数人は不安そうな表情だ。
「今宵は邪が出るぞ。」
「どうやら被害にあった人間が多いみたいよの。病院にも被害者がおると見たが。」
「その通りだ。私達は近くに住む吸血鬼達の討伐を依頼にしにきた。」
「吸血鬼って言っても、人間を襲う奴は少ないと聞いた事があるのだけど。」
「前は確かに必要最低限の人しか被害を受けていなかった。それなりに他の妖魔を退けてくれていたから、共存していたのだが……リーダーが変わってしまってな。それからというもの、人を沢山襲う様になった。妖魔達が来ても守ってくれなくなってしまったんだ。」
「だから吸血鬼達の討伐って話になったんだ。でも、話を聞いた限りだとリーダーを倒したら問題が解決しそうな印象を受けるよね。」
「確かにな。本気で全員倒して欲しいのか?」
「……もしも、リーダーを倒して共存が出来る様になるなら一番それが良いのは確かだ。」
「じゃあ、一応吸血鬼達を統べている今のリーダーを倒して和解を持ち掛けるって依頼で受けておくかの。」
「ありがとう!こちらとしても他の妖魔を退けてくれる様になれば、頼もしい限りだからな。」
依頼に来た人々は深いお辞儀をする。
そしてカウンターに大きくて透明な石を置いた。
ツバメは、手袋をして石を布で吹いて眺めると頷く。
「これはダイヤモンドね。少し依頼料としては高い気もするけれど、吸血鬼のリーダー討伐と和解込みなのよね……。社長。やっぱりリーダーが人間を襲っているって事は強いわよね?」
「そうであろうな。少し過剰に襲っている様ではあるが……強いのには間違いないかの。」
「えー……。強い吸血鬼って骨折れるんだけど。だって弱らせる事が出来ても弱点以外で倒せないじゃない!」
「誰かリーダーの弱点を知ってる奴居るか?」
依頼した人々は揃って首を横に振る。
「だったら、これは妥当な依頼料ね。それなりに善処はするけれど手強いから失敗したら返すわ。まあ……私達が生きていれば、だけど。」
「それほど厳しいのか?」
「……正直に言えば相手にしたくないわ。」
人々は揃って不安そうな表情をした。
「なるべく良い報告が出来る様に努力すると誓おう。」
「……健闘を祈る。」
人々は不安そうな表情だが、立ち去る。
それを見送るとホタル以外は溜め息を吐いた。
「化け物になった吸血鬼の相手くらいなら、やった事があるけれど思い出したくも無いくらいに大変だったのに……最悪。」
「受けてしまった以上は、やれる事を全力でやりましょう。」
「吸血鬼って、そんなに厄介なの?」
ホタルにはイメージが付かない。
実際に見た事が無く、噂を少し聞いた事がある程度だ。
「再生能力は高い。力が強くて足が結構速い。弱点以外で倒せない。そして弱点が分からない。それだけで嫌になるだろ?」
「……確かに。今回の依頼、もしかして僕は居ない方が良い?人間狙うんでしょ?」
「判断出来ないね。この依頼をしている事を知られていないなら、連れていかないのがベスト。でも知られているなら一緒に居た方が安全なんだよなぁ……。」
ホタル以外は悩む。
ホタルは、彼らを見て困る事しか出来ない。
無言が続く。
そこへ入ってきたのは青年。
さっきの人々と同じく顔色が悪い。
彼もカウンターへ真っ直ぐ来た。
「今宵は邪が出るぞ。」
「……吸血鬼関連なら、さっきの人々から受けてるわ。」
「それは知っているさ。吸血鬼全員がな。」
「お主、もしかして吸血鬼かの?」
「そうだ。俺は今のリーダーに不満を持っている奴等の一人。依頼に行ったって情報を掴んで来たんだ。俺が一番最弱で見向きもされていない。だから動きやすかったんだ。俺が代表として来たのは、そういった理由がある。」
「それで、どうして来たの?」
「知りたいだろ?リーダーの弱点。後は俺達にも協力させて欲しいって頼みに来たのも含んでる。」
「正直、助かるわ。渡りに船で少し不安だけど。」
「ツバメの気持ちも分からんでも無いが……協力してくれるなら、是非頼む。」
青年はスマートフォンを出す。
仲間に連絡して結論が出たようだ。
「それじゃあ、宜しく頼むな。」
コヨミと青年は握手した。
「俺達、吸血鬼の弱点は知っているのか?」
「噂では日光、ニンニク、鉄、十字架、流水、入った事の無い家には招かれないと入れない、粒状の物が沢山あると数える、何かしらの杭で心臓を貫くと死ぬ……と聞いた事があるかの。それ以外は知らぬ。」
「凄く話に尾びれ付いてやがる……。」
「少なくとも招かれないと入れないっていうのは違うみたいだね。」
「まあ、そうだ……って、うわぁ!」
ホタルが話し掛けて青年は彼を見た瞬間、声を上げる。
ホタルは胸元を見て聖女様から貰った十字架が出ている事に気付いて隠す。
「……悪い。俺は十字架とニンニクが苦手でな。」
「俺は、って事は吸血鬼によって弱点が違うのか。」
「そうだ。日光、ニンニク、十字架のどれかが弱点だ。俺みたいに弱いと弱点が二つだったり、全部だったりする。」
「もしかして顔色が悪いのって日光も少し苦手なのかしら?」
「ああ。砂になっちまう程じゃないがな。それより話が逸れたな。それでリーダーの弱点は日光だ。少しでも当たれば、その部分が砂になる。それは確認済みだ。」
「で、作戦決行するのは?」
「明日で良いか?俺達も準備が必要だからな。」
「分かったわ。じゃあ、こっちも用意しましょうか。」
「朝に迎えにくる。場所は俺が案内するから安心してくれ。」
「それじゃあ、明日は宜しく頼むぞ。」
「こっちこそ、宜しくな。」
吸血鬼の青年が去った後に今宵屋の皆で準備をする。
十字架やニンニクを詰めた荷物。
ワカナはニンニクエキスを詰めた弾を作成。
やれるだけの準備をした。
相手に住民達が出した依頼の事が筒抜けている事から、ホタルも作戦に参加する事になる。
身を守る為に当日は銃と予備の弾を持つ事に決定。
準備をしながらも骨董品を買いに来た客へ対応したので、準備は閉店直前まで時間が掛かった。
翌日の朝。
吸血鬼の青年が案内してくれたのは、窓が内側から塞がれた古いビル。
入り口付近には青年の作戦に参加している吸血鬼達。
彼らは頷くと中へ入った。
出迎えたのはリーダーを慕っている吸血鬼達。
互いに傷付け合い、弱点を付いていく。
今宵屋の皆も吸血鬼と戦いつつ、窓を塞いでいる板を剥がす。
暗い室内が明るくなっていき、日光が弱点の吸血鬼は砂になる。
リーダーを慕う部下の対処を作戦に参加している吸血鬼に、ある程度任せた。
吸血鬼の青年と共に上がっていき、遂に最上階へ。
一番奥の部屋に吸血鬼のリーダーが居た。
傍には他の吸血鬼も居る。
リーダーを守る為に傍に居た吸血鬼達が襲い掛かってきた。
それと擦れ違う様に吸血鬼の青年がリーダーを襲う。
今宵屋の皆で、まずはリーダーの周囲に居る吸血鬼を片付ける事にする。
ツバメが目を合わせて相手の動きを止めて、コヨミとコガラシで止まって居ない奴らの動きを鈍らせる。
ワカナが片っ端から敵の吸血鬼へニンニクエキスの弾を撃つ。
それで砂にならなかった奴には、ホタルが近距離で十字架を見せつけた。
こうして日光が弱点の吸血鬼を炙り出していく。
残った周囲の吸血鬼をホタル以外が相手にする。
その間にホタルが窓を塞ぐ板を剥がしていく。
リーダーは阻止するべく、ホタルと距離を詰めた。
その速さに間に合わないかと思った助けは、青年が盾になる事で間に合う。
ホタルは固まる事はせず、力いっぱい引っ張って板を剥がす。
青年が倒れてホタルが窓から退く。
リーダーは勿論、近距離で日光を浴びた。
悲鳴を上げながらも砂になる。
残りの板もホタル一人で剥がす。
部屋全体が明るくなって、リーダーを守っていた吸血鬼達も砂になった。
今宵屋の皆は座り込む。
力強く素早い吸血鬼の相手は流石に疲れたのだ。
倒れてしまった青年を見ると、手が動く。
やがてフラリと立ち上がった。
「大怪我しているのに立ち上がれるなんて、流石は吸血鬼。」
「……。」
「お主達の勝利じゃ。少しは喜んだら、どうかの?」
「……。」
青年からの返事は無く、何処か可笑しい。
階段から数人上がってくる音が聞こえて、今宵屋の皆は慌てて立ち上がる。
部屋に入ってきたのは味方で安心した。
それも一瞬、入ってきた吸血鬼を青年が襲う。
首に噛みついて血を啜り、吸われた吸血鬼は干からびた。
動揺から抜け出せない間にも次々を襲っていく。
やがて吸血鬼達は青年と交戦するが、無惨にも倒されてしまう。
無事だった味方の吸血鬼は全員干からびる。
青年は苦しみ出すと背中から蝙蝠のような翼を出し、耳の直線上の所から角が生えた。
今宵屋の皆の方を振り向き、牙を剥き出しにして威嚇してくる。
伸びて尖った爪を構えては、此方の様子を伺って何もしてこない。
ただ、此方を襲う為に様子を見ているのだと理解するのには充分だった。
皆が構えれば、青年が襲い掛かってくる。
最初に狙われたのはツバメ。
試しに眼鏡を外して視線を合わせてみるが、効かない。
それを確認すると槍を構える。
青年は大振りで右手を上げた。
爪を受け止める為に槍でガードする。
爪は槍の柄を簡単に切り裂く。
ツバメは、それは分かっていたらしく驚かない。
続いて左手が迫る。
槍の先を持ち、左手へ刺す。
怯む事も無く、振り下ろした。
それをコガラシが斧で受け止める。
その衝撃だけで斧は砕けてしまう。
コガラシは舌打ちをすると両手を変化させて目を狙った。
それを軽く避けて蹴りを入れ、ツバメとコガラシは吹っ飛んで壁に叩きつけられる。
追撃を加えようとするのを阻止する為にワカナは銃を撃つ。
青年の視線はワカナを捉えて距離を詰めた。
ワカナは出来るだけ銃弾を撃ち込むが、全く怯まない。
咄嗟に手をクロスさせてガードする。
手を切り落とされてワカナは顔をしかめた。
青年の後ろにコヨミが現れて翼を付け根から切り落とす。
青年は振り返りながらも回し蹴りをし、コヨミは慌ててガードした。
どうにか後ろへ移動するだけで済む。
「別に付け直せるから良いけど、痛いんだよね。全く。」
ワカナは愚痴りながらも口で右手を拾い、くっ付けた。
そして右手を動かし、確かめると左手も拾って付ける。
両手の動きを確認すると再び銃を構えた。
ツバメとコガラシも立ち上がり、体制を整える。
コヨミは刀を構え直した。
ホタルは目立たない様に部屋の隅で、その様子を見ているだけだ。
自分には手に負えない事も、あの場に居たら足を引っ張る事も理解しているから見ているしか出来ない。
正直、見ていて安心出来るような物でも無かった。
けれど目を反らす事はしない。
何故なら、ホタルは今宵屋の皆を信じているからだ。
ツバメが切り込みに掛かる。
それを簡単に避けると腹に蹴りを入れた。
ツバメは吹っ飛んで壁に激突すると気絶する。
彼女が持っていた槍の先が、ホタルの所まで転がってきた。
一応、拾っておく。
ワカナが銃を撃つ。
全て受けておりながらも平気な顔で殴った。
ワカナは殴った手を掴むと青年を投げて地面に叩きつける。
青年は直ぐに立ち上がるとワカナの頭を掴んで、お返しとばかりに地面へ叩きつけた。
コガラシが直ぐに攻撃に出るが受け止めると、肘の辺りに蹴りを入れる。
腕が変な方向に曲がりながらも負けじと腹に一撃入れた。
変化した腕は毛深いが爪が長い。
なので青年の腹から血が大量に出る。
初めて青年は、コガラシから離れてふらつく。
コヨミが距離を詰めて胸の辺りを刀で刺すと、日光が当たる壁に固定した。
青年は力技で抜け出し、刺さった刀を抜くと二人を睨み付ける。
フラフラしながらもコガラシに迫り、殴ろうとした。
コガラシは無事な方の腕で受け止める。
青年は、その状態でコガラシの股に膝蹴りを入れた。
コガラシは手を離すと後ろに数歩下がってから倒れる。
コヨミは、そんな彼を見て溜め息を吐く。
青年はコヨミに襲い掛かる為に飛び上がり、拳を振り下ろす。
コヨミが避けると、地面が抉れた。
刀を回収したコヨミは構え、目にも止まらぬ速さで移動する。
気付けば青年の後ろにコヨミが立っており、青年からは血が吹き出た。
青年が膝を付く。
ふと目立たない様にしていたホタルと青年の視線が合う。
ホタルは急いで移動しようとした。
間に合わない内に距離が詰められ、首もとを噛まれる。
コヨミが気付く。
ホタルは自分から何かが抜かれていく感覚に恐怖を感じた。
感情のままに持っていた槍の先で、青年の角を根元から切る。
すると、どうだろうか。
青年の口が離れてホタルから遠退き、頭を抱えて叫んだ。
暫く頭を抱えながらも首を横に振って、遂には踞ってしまった。
「……一体、今のは?」
「どうやら正気に戻す条件は角を折る事だったみたいよの。」
「ごめん。ごめん、なさい。俺、こんなつもりじゃ……。今さら言い訳したって……。」
青年は謝った後に咳き込んで血を吐く。
その中には弾が混ざっている。
震えて踞る青年にホタルは、そっと近寄って触れた。
ビクッと体を大きく跳ねさせて顔を上げる。
その顔は涙に濡れて酷い有り様だ。
青年はホタルの手を慌てて払い退ける。
ホタルは安心させる為に、しゃがむ。
青年に笑いかけると、優しく頬に触れる。
頬を包み込むと青年の震えが伝わってきた。
「駄目、だ。危ない。離れて……離れてくれ。」
「もう大丈夫。自分でも知らない部分が出て、凄く怖かったよね。仲間を沢山殺して苦しいでしょ?」
「俺は最低だ……。最低なリーダーと一緒だ……。殺してくれ。こんな俺なんて……生きているだけ無駄だ……。」
「貴方とリーダーの違いは自分の意識で傷付けたか、そうじゃないか。仲間に対して悪いって思っているんだったら、死ぬのは間違っていると思うよ。誰だって大切な人や仲間を失えば、その後を追いたくなる。僕だって、思わなかった事は無い。」
「分かるならなんでだよ……!なんで罪償いの為に死んだらいけない!死刑だって同じようなもんだろ……!」
青年は漸く体を起こしてホタルに訴える。
離れた手で青年の手を取ると胸に当てた。
「死刑とか……その辺りの事は僕には分からない。凄く難しい事だから。でも仲間の事は大切に思っていたんでしょ?」
「勿論だ。死にかけて自分が生きる為に血を吸うなんて……本当はしたくなかった。でも飲まれたんだ……!これは言い訳になんてなる訳が無い……!」
「仲間を大切に思っているなら、尚更死んだら駄目だよ。貴方が死んだら、その仲間の事を覚えていてくれる人は居なくなっちゃう。貴方が死んでも仲間が生き返る訳でも無い。僕はね、罪償いをしたいなら大切な人の分まで生きるべきだと思うんだ。苦しくても悲しくても、カッコ悪くて醜く抗って。どうしようもなくなるまで生きて償うべきだと思う。それが残された人が出来る、たった一つの罪償い。正直死ぬよりも、ずっと辛い事だと思う。けど、その事に一番意味があると僕は信じてる。」
「死ぬ事は何よりも楽な道って言いたいのかよ……。死ぬのに度胸とか必要なのに。」
「死んだら、その先は無い。そう思うでしょ?仲間を大切に思うなら、仲間が生きる筈だった分まで生きるべきだよ。それとも、こう言った方が貴方の為かな?死ぬなら、散々苦しんで悲しんで足掻いてから死ねって。」
「……ひっで。呪いに近いじゃんかよ、それ。」
青年は苦笑いを溢す。
涙も震えも止まっていた。
青年は立ち上がるとホタルに手を差し伸べる。
「……ありがとう。俺なりに決意したよ。頑張って仲間の分まで生きてみる。」
「どういたしまして。それを聞いて安心したよ。」
ホタルは青年の手を借りて立ち上がった。
コヨミ達は安心したかのような溜め息を同時に吐く。
気が気では無かったようだ。
「ホタルは幼いわりに色々と凄いの。ちと意地悪な質問かもしれぬが、もしも人々を好んで殺すような奴でも生きて罪を償うべきと考えておるのか?」
「流石に、それは無いよ。生かしてて危険なら速やかに殺されるべきだと思うよ。生きていたら被害者ばかりが増えちゃうもん。」
「つまり、適材適所って事ね!」
「ワカナ。それは何か違う気がするけど……まあ、終わり良ければ全て良し!深く考えるのは止めだ!」
「そうしたら生き残っている吸血鬼達を集めて依頼の続きと行きましょう?」
ツバメの提案で生き残った吸血鬼達を集め、再び人々を守ってくれるかを交渉する。
否定的な意見は無く、寧ろ賛成の意見が多かった事から成立した。
その足で依頼してきた人々の元へ向かい、経緯を説明。
こうして苦労しながらも依頼を終わらせる事に成功する。
コヨミ達は今宵屋へ戻ろうとした。
行く手を塞ぐ様に立ったのは吸血鬼の青年。
「俺の名前はカザバナ。お前達が知っている通り、吸血鬼だ。今回、リーダーの討伐を手伝ってくれて助かった。それから迷惑を掛けて、済まない。助けてくれた礼を返せる物が無いが、いつか必ず返す。本当に、本当にありがとう!」
カザバナは深く、お辞儀した。
片方だけの角が少し目立つ。
コヨミはツバメやコガラシと視線で会話。
そして意地悪な笑顔を浮かべる。
「そのいつかってのは信用出来ぬな。お主、今宵屋で働かないか?どうせ、そう言うつもりだったのだろうが。」
「えっ!?いつから気付いたんだよ!?」
カザバナは驚いて顔を上げた。
「お主が儂らの前に立った時からじゃ。」
「っ……!宜しくお願いします!」
顔を赤くしてカザバナは投げやりに叫ぶ。
ホタル以外は成功したとばかりに笑顔を浮かべる。
ホタルは純粋に嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「宜しくね!カザバナさん!」
「言っておくが別に入りたいから入る訳じゃないからな!ちょっと悪いって思ってるから入るだけだ!そんなに仲良くするつもりもねぇ!勘違いするなよ!」
「うん!でも、仲間が増えて嬉しいよ!僕!」
「ばっ……!勝手に仲間にすんな……!嬉しくない訳じゃねぇけど、ぜってぇ嬉しいなんて思わねぇから!」
「真っ赤な顔で言われても説得力ゼロね。」
「チッ……。まあ……どうしても仲良くしたいんなら、仲良くしてやらない事もない。」
「素直じゃないな。」
「それね。さて、自己紹介とかしながら帰ろっか!私達の家に!」
今宵屋の面子に新たにカザバナが加わる。
六人になった今宵屋は、明日も骨董品を売りつつ依頼を受ける事だろう。
合言葉は口調は違えど意味は一緒。
『今宵は邪が出るぞ』




