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今宵屋  作者: 深海魚
1/12

一話

くすんだ空の下に並び建つ古ぼけたビル。

その屋上には黒いパネルが日光を浴びて黒く輝き、風車がクルクルと回っている。


疎らな人と車。

何処か都会では無い場所。

この場所は『晴れの街』として有名だった。


比較的静かな空間に突然、音が響く。

ひっくり返った車と大男。

大男が溢れる力を放つかの様に爆笑すれば、彼の周囲の地面は声と共に抉れていく。

車から転がりでた男を片手で掴みあげた。


大男の顔にロケランの弾が一発命中し、男は放されて逃げ惑う。

男を追おうとした所に更に弾が二、三発撃ち込まれた。

煙が晴れ大男が無傷な事を確認した少女は舌打ちをする。



「無駄に硬いんだけど……ちょっと!皮を剥がしてくれない!?」



少女が傍に居た斧を担いでいる男に怒鳴る。

男は少女の言葉を聞いて信じられないといった表情を浮かべた。



「どうやって!?俺は社長じゃあるまいし、綺麗に切り取れる訳無いっすよ!斬りにいったって武器が負ける気がする!」


「この役立たず!」


「お前にだけは言われたくない!なんすっか?あの硬さ!」



男は近くに居た女性に思わず愚痴った。

女性は呆れた表情を浮かべてから気を引き締める。



「文句は言わないの。外が駄目なら内側からしか無いわ。ワカナ、手榴弾持っているかしら?」


「持っているわよ。はい、後は任せた。」


「全く……仕方無いわね。」



ワカナと呼んだ少女から女性は手榴弾を受け取ると大男に近付きながら眼鏡を外した。

目があった瞬間、大男は顔を赤くする。



「はい、あーん。」



大男は女性に言われるままに口を開けた。

そこにピンを抜いた手榴弾を入れると女性は急いで離れる。

爆発音がすると大男は口から煙を出して倒れた。



「止めお願いね、コガラシ。」


「了解っす。ただ武器壊れたら新しいの買ってくださいよ?」



コガラシと呼ばれた男性は女性に言われると大男に近付いて止めを刺した。

大男は紫の煙になって消えていく。



「はい、じゃあ帰りましょう。武器も壊れなかった事だし。」



女性の言葉に二人は頷き、去っていく。

その姿を修道服を着た女性と男の子が見ていた。



「聖女様?」


「……帰りましょう、私達の家へ。」



聖女様と呼ばれた女性は首から下げた十字架を握りしめながら、少年を引き連れていく。

少年は去り際にもう一度だけ戦っていた彼らの方を向いたが、既にそこには誰も居なかった。


聖女様と呼ばれた女性と少年が辿り着いた先には修道院がある。

その扉を開ければ教会のような部屋が広がっており、子ども達が思い思いに遊びまわっていた。



「あ!お帰りなさい!聖女様!」


「ただいま。今日もお菓子の大安売りをしていなかったから買えなかったわ。ごめんなさいね。」


「残念だなぁ。でも良いや!」


「ここは楽しいもん!」



聖女様と呼ばれた女性は微笑んだ。


この修道院には様々な事情で引き取られた子ども達が住んでいる。

けれど環境が悪いせいか一人、また一人と居なくなっていた。

居なくなった子どもが翌日になって骨になって見つかるという現象は周辺に住んでいる人からは大層不気味がられている。

最初は十数人居た子ども達は今では四人まで減っていた。


聖女様と呼ばれた女性も里親となってくれる人々を探しては居る。

けれど手を挙げてくれる人は居ない。

その筈だった。


部屋で遊ぶ子ども達。

それを見守る子ども達から聖女様と呼ばれる女性。

そんな音沙汰の無かった日々は終わりを告げる。


唐突に響いた扉をノックする音。

聖女様と呼ばれる女性は扉を開けた。

そこには、幾人かの人達が立っている。



「もしかして……。」



期待を込めた声は、震えていた。



「子ども達の里親になりたいんです。環境が悪くて子ども達が亡くなっている事は聞いていました。それが真実であれ嘘であれ、放っておけないんです。」


「……そう。ありがとう。」



聖女様と呼ばれる女性は人々を通した。

その顔には安堵が浮かんでいる。



「こんにちは!」


「貴方達が僕達のお母さん、お父さんになってくれるの?嬉しい!」


「思ったより健康そうで良かったです。」


「ええ……とても大変でした。」


「楽しみだなぁ!」



はしゃぐ子ども達に混ざって静かにしている子どもが居た。

ここに戻ってくるまで聖女様と呼ばれる女性と一緒に居た少年だ。



「皆、良かったね。」


「……あっ、そっか。聖女様の子どもだもんね、君。」


「ちょっと寂しいな。離れるの。」


「でも待ち望んでいたんでしょ?僕は皆に親が出来る事の方が嬉しい。だから気にしないで。」


「また、会おうね!」



聖女様と呼ばれる女性と子ども達、里親を希望している人々で相談が行われる。

子ども達の希望を出来るだけ聞いてあげているのは女性も里親になりたい人々も同じ気持ちだからだ。

一人、また一人と決まっていく。

そして三人は引き取られる。


引き取られる子ども達は思い思いに女性と残る少年に言葉を告げていく。

その目には期待と少しの寂しさが同じ様に浮かんでいる。

二人で見送ると妙な静けさが残った。


女性は胸元から下げている十字架をきつく握る。

それに気付いた少年は女性の手を握った。



「まだ僕が居るよ。ずっと傍に居るから。」


「……おまじないね。ありがとう。大丈夫、きっと大丈夫。」



女性の大丈夫という言葉は少年に言い聞かせているというよりは自分に言い聞かせているようだった。

少年は女性の手を握る力を少しだけ強める。



「入ろう、幾ら晴れてるからっていっても冬なんだから冷えちゃう。」


「そうね。そうしましょう。」



二人は修道院の中に入った。

特に何もする事も無く、夜を迎える。

静かな夕食と少し広いお風呂場、誰も居ない寝室。

少年にとっては久しぶりで忘れ去っていた感覚。

誰かが居ないという現実に慣れなくて少年は寝付けずに、とうとう起き上がって寝室を抜け出した。


静かな空間に少年の足音が響く。

少年が目指す先は聖女様と呼んでいる女性の寝室。

寝室に辿り着いて扉を開けば、布団の上には誰も居なかった。



「……やっぱり、おまじない効かなかったんだね。聖女様。」



悲しそうに少年は呟いた。

そして大きな十字架がある場所に向かい、そっと中を覗く。

何か生々しい音と泣き啜る声。

やがて泣き啜る声だけになった事を確認した少年は、そっと中へ入った。


十字架の前。

赤い水溜まりと白い物に紛れて、手と口元が赤く染まった女性が泣いていた。

強く強く胸元の十字架を握りしめて、ひたすら懺悔を繰り返す。

女性が少年に気付く気配は、無い。



「聖女様?」


「……っ!何故起きているの!?」


「静か過ぎで落ち着かなくて寝れなかったんだ。大丈夫。聖女様が『食人鬼』だって知っていたから。」


「……私は最初、貴方を食べ頃になるまで育てて食べようって思っていたの。でも思い出が出来ていく内に食べたくない、ずっと一緒に居たいって思った。治す為に色々したわ。子ども達を育ててみたのも思い出があれば食べないで済むかもって思ったから。結果的に失敗だった。私は私の内側に済む鬼に勝てない。漸く分かったの。許されない事を沢山したわ。」


「聖女様。例え人々が許してくれなくても僕が許すよ。聖女様だって辛かったんだよね?苦しかったんだよね?治そうと努力したんだよね?僕はそれを見てきたから許せる。」


「努力しても結果が変わらなければ意味なんて……。」


「僕は生きてる。今、聖女様の目の前で生きてるよ。これだって立派な結果でしょ?」



少年はそっと女性を抱き締めた。



「何を……!」


「怖くないよ。だって、見てきたから。」


「……っ!」



女性は泣きながらも少年を突き放した。



「聖女様?」


「……お願い。」


「駄目!聞きたくない!僕は……!」


「聞きなさい!最初で最後の頼みなの!」



女性は首から掛けていた十字架を少年に掛け、ポケットから懐中時計を取り出して少年の手に握らせた。



「今宵屋に行って私の討伐依頼をしてきなさい。報酬にそれを出せば多分、応じてくれる筈。」


「なんで……?まだ大丈夫でしょ?」


「いいえ。一時的に戻っては居るけれど鬼になるのは時間の問題よ。だって貴方を美味しそうだと思ってしまったもの。貴方に鬼が危害を加えてしまう前にお願い。貴方だけは傷付けたくないの。」


「……分かったよ。僕をここまで育ててくれて、ありがとう。大好きだよ、聖女様。」


「此方こそ、ありがとう。貴方に何度も救われたわ。私も大好きよ。」



少年は涙を堪えながら女性の横を通り、外へと飛び出した。

微かに明るくなり始めた空の下を泣きながら走る。

やがて疲れて歩き始めた。


泣き疲れて空も明るくなった頃、今宵屋の扉の前へと辿り着く。

扉には『閉店中』の板が掛けられている。



「朝、速いもんね……。それもそっか。」


「おう、どうした?ガキ。」


「ひゃあ!?」



扉の方を気にしていた少年は背後から声を掛けられて驚く。

慌てて少年が振り向けばシガレットを咥えた男性と少女が立っている。


大男と戦っていた三人の内の二人だと気付いて少年は慌ててお辞儀した。



「えっと、こんにちは!」


「こんにちはと言うよりは、おはようございますだろ。詳しい事は中で聞くから扉の前から退いてくれないっすかね?」


「ご、ごめんなさい……。」



少年は慌てて扉の前から退いた。

男性は扉を開けると少年の方を向いて中に入れという風に頭を動かす。



「えっと、失礼します?」



少年は中に入り、見とれた。

様々な物が綺麗な状態できちんと並んで置いてあるからだ。



「ほら、奥に進め。」


「ごめんなさい……。」



少年は慌てながらも棚にぶつからない様に気をつけて奥に進む。

奥にはカウンターがあった。


二人はカウンターに入ると少年と向き合う。



「言うの遅くなっちゃったけど、いらっしゃいませ。ようこそ、今宵屋へ。可愛いねぇー、君何歳?」


「ワカナ。それ所じゃないだろ。少年を良く見ろ。」


「言われなくても気付いてるし。でもコガラシの態度に気圧されちゃってるよ?もうちょっと接しやすい雰囲気くらい作りなよ。」



ワカナと呼ばれた少女が少年に微笑むと、コガラシと呼ばれた男性は溜め息を吐いて少年に微笑んだ。

そんな時に誰か他の人が店に入ってきた。


入ってきたのは警察の制服を着た男性。

少年を一目見てから二人を見る。



「いらっしゃいませ。ご用件は何でしょうか?サバ。見ての通り接客中だ。後にしてくれ。」


「みたいだな。」


「で君は何のようでここに来たのかな?」


「……今宵は邪が出るぞ、だったよね?子どもばかりを狙う食人鬼の討伐依頼なんだけど。」


「おっ!それは興味深いな!俺もその件で何か情報掴んでないか聞きにきたんだ。」


「受けたいのは山々だが犯人の居場所を掴めていないんだ。実際、どうにかしてくれって依頼を沢山受けてるから調べてはいたんだが……。」


「君が掛けている十字架が手掛かりだとしてもそれだけじゃね。」


「……犯人を知ってるから来たんだよ。犯人から頼まれて僕はここに居るんだ。」


「……そいつは驚いた。あの子ども大好きな食人鬼の目と鼻の先に居て良く無事だったな。」


「僕にとっては親だもん。場所はこの街にある唯一の修道院。そこに住む聖女様が食人鬼の正体だよ。」


「何だって!?確か、あそこの修道院は親の居ない子ども達を育てている場所じゃないか!」


「おい!お前以外の残りの子ども達は無事なのか!?」


「大丈夫。里親になりたかった人達の所に居る筈だよ。」


「……一先ずは安心だな。」


「君は……本当に良いの?」


「ずっと居れば嫌でも気付くよ。いつか、こんな日が来るって分かっていたから覚悟は出来てる。本当は来て欲しくなかったけど……そんな都合が良い事なんて有り得ないから。」


「そうか……。じゃあ、行くぞ。ワカナ。」


「はーい。」


「俺も着いていって平気か?」


「足を引っ張らなければな。」



少年に三人は着いていき、修道院へと辿り着いた。

コガラシはそっと中へ入り、ワカナとサバと呼ばれた警察が続く。

最後に少年が入った。


部屋は薄暗くて気味が悪い。


うっすらと呼吸の音が聞こえた。

そして鬼と化した聖女は天井から落ちてワカナに襲いかかる。

慌ててワカナは銃で受け止めて、距離を取った。



「こいつ……馬鹿力だよ!」


「見た目に寄らずって事か!」



コガラシは斧で斬りかかるが避けられ、爪で攻撃してきたのを避ける。

そこにワカナが銃を撃つが全て爪で切り裂かれた。



「嘘っ!?」


「あんな芸当出来るとは……厄介だな。」



鬼は少年を見つけてニタリと笑みを浮かべる。

サバが少年を庇う様に前に出た。

にらみ合い、鬼が襲いかかる。

サバは鬼を蹴り上げるが顔を歪めた。

そのまま、遠くまで蹴飛ばす。



「……痛い。硬い。重い。」


「大丈夫ですか?」


「平気だ。思ったよりそうだったから愚痴った。」



鬼は空中で姿勢を治すと着地して再びサバに襲い掛かる。

今度はサバが吹っ飛ばされ、コガラシを巻き込んだ。

慌ててワカナが銃を放つと、それを避けてワカナも吹っ飛ばす。

少年だけが立っている状況が出来上がってしまった。



「逃げろ!少年!」



呆然と見ているだけの少年はハッとする。

鬼は少年に詰め寄り、襲い掛かろうとした。

鬼の爪が少年に迫るが彼は怯む事も無く、真っ直ぐと鬼を見つめる。

後少しの距離でピタリと、鬼の爪が止まった。


その間に三人は体制を立て直す。



「聖女様。やっぱり、最後の最後に鬼に勝てたじゃない。僕は信じてたよ。」



少年は鬼に微笑むと鬼は涙を一滴流した。

攻撃を止めた手が、少し震えている。



「だって、聖女様は僕の母親だもん。」



少年の声が少し震えた。

流しきった筈の涙が溢れる。

鬼は女性の姿に戻りかけた。



「お願……殺し……て……。」


「!今だ!」


「分かってるわよ!」



ワカナが撃ち、コガラシが止めを刺す。

少年は目を逸らす事も無く、その光景を眺めていた。



「……これで依頼は完了だ。」


「……すみません。」


「言いたい事は分かるわよ。私達に彼女を埋めるの、手伝って欲しいんでしょ?この修道院は潰されちゃうから外にある桜の木の下に埋めようか。大丈夫、私達がきちんと説明しておくから。」


「俺もちゃんと報告書に纏めておいておくよ。」


「……ありがとう、ございます。」



四人で女性を桜の木の下に埋めた。



「あの、これ……依頼料です。」



少年は女性から手渡された懐中時計を出した。

コガラシとワカナは顔を見合わせると頷く。



「私達、実は鑑定出来ないから面倒だけど戻ろ?店には鑑定士が居るからさ。」


「あ、分か……りました。」


「無理に敬語使わなくて良い。ガキはガキらしくしろ。」


「……うん。」


「俺はこれから書類纏めに行くから、ここでお別れだ。またな。」



サバはそう言って物凄い速さで去っていった。

その辺の車を上回るような速さで。


三人は店に戻った。

先ほどとは違ってカウンターにはワカナよりも年上の女性が立っている。



「あ、副社長。調度良かった。鑑定、お願い出来ない?」


「分かったわ。」



少年は副社長と呼ばれた女性に懐中時計を手渡した。

女性は暫く懐中時計を見ていたが、やがて驚いた表情を浮かべる。



「なんてこと……。これ、時計職人でも有名なクロック氏の独特な作りをしてるのに見た事が無いわ……。きちんと蓋に刻印までしてあるのに、これと同じ物が発売されたのを私は知らない……。これ……非売品よ……。」


「えっ、そんなに有名な時計職人だったの。あのおじさん。」


「!?生前のクロック氏と面識があるの!?」


「あ、うん。あの人の口癖は『長く使われた時計には、その人の人生が宿る。時計を大切にしなさい。』だったよ。良く結婚しよう?とか言って聖女様に言っていたけど僕には意味が良く分からないや。」


「なんてこと……。」



副社長と呼ばれた女性は軽く目眩を覚えたらしく、ふらついた。

少年はそんな女性を見て首を傾げるだけだ。



「ねぇ、副社長。それ、幾らぐらいになりそう?」


「……クロック氏制作の販売した時計は全て億単位が付いているのよ。非売品なんて、それの上に決まっているわ。これは私だけで金額を決められるような物では無い。ちゃんと正式なオークションにかけないと。始まりの値段は一億からで。後、なるべく綺麗にしなきゃ。」


「少年も付き合ってよ?元々は君のなんだから。」


「分かった。」


「だったら少年を綺麗にしとこうぜ?服はボロボロで髪の毛だって腰まで伸びてボサボサだし。」


「賛成ね。」



少年は店の奥へと連れられる。

そして少年はコガラシの手によって、風呂に入れられて新品同様の服を着せられた。



「いいの?」


「そのままの方が問題あったんだから良いんだ。髪、切るの勿体無いから結んで良いか?」


「うん。」



コガラシは手際良く少年の髪を束ねる。

慣れた手つきを少年は不思議に思うが何も聞かない。



「後、爪も切るぞ。ったく……爪、ボロボロじゃねぇか。」


「そうかな?皆こうだったけど。」


「あー……まあ、あれだ。あんまり粗末にしてると爪の神様に嫌われるぞ?」


「正直に僕の周りがそうだっただけで普通は綺麗なんだとか言えば良いのに。」


「……お前、可愛くないぞ。」


「?」



爪も切られた少年はコガラシに連れられて他の二人と合流する。



「じゃあ、行こうか。」



四人は車に乗って競売場へと向かった。

車内で手頃なお昼を食べ、お腹を満たす。


競売場に到着すると受付の人に番号札を渡されて席に案内される。

番号が読まれて人が立ち、商品を見せて説明すると競りが始まった。

次々と落札されていき、やがて順番が来る。


全員で壇上に上がると箱に入れていた品を手袋をしてから出した。

少年が彼らに渡した時よりも綺麗になっており、新品の様にも見える。

品を良く見せる為に近くに置いてあるカメラに品が映った瞬間に人々は、どよめいた。


ツバメが商品を説明し、一億から金額はスタートする。

あっという間に値段は上がっていき、最終的に400億円で落札された。

数人の鑑定士によって最終チェックもされたが、本物だと誰もが認める。

そして鑑定士の人々は唯一の品を鑑定出来た事を幸福に思い、ツバメ達に感謝の言葉を述べたのだった。


あまりにも凄い金額に誰もが無言のまま、今宵屋へと戻る。

カウンターまで行くと、和服を着た男性が立っていた。



「コヨミ社長。」


「何も述べなくても分かってる。儂も久しぶりに表に立てて楽しかった。」


「……あの、今日はありがとうございました。僕に色々してくれて。」


「あの、社長……。」


「ツバメの言いたい事は分かってる。お主、ここに住め。」


「……えっ?」



コヨミ社長と呼ばれた男性の発言に少年は固まる。



「先ほど、とんでもない金額が今宵屋の口座に振り込まれた。正直言えば依頼に対して釣り合ってない。これでは儂らが困る。だから、ここに住んで貰うぞ?少年。」



彼はニヤリと少年に笑いかけた。

少年は困るような、観念したかのような表情を浮かべる。



「はい。」



こうして少年の今宵屋での生活が始まったのだった。

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