寝具の上で思案へと
異世界恋愛じゃなくてハイファンタジーとかのほうがいいんですかね
この世界は男性の扱いが愛玩動物、ペットや宝石、宝の如く扱われている。それはこの世界のどこに行っても恐らく変わることがない。
だが大事に扱われると言っても限度がある。僕は奇跡的に体験しなかったが実際、男性がこの世界で監禁される確率というのは非常に高いそうだ。
母親が息子に依存、執着しておりどうしても離したくない場合。幼いころからまるで刷り込むように外の恐怖や家にいることへの安心感を教える。
そうして男性の中にはあることないこと吹き込まれた結果、外に出ない少年が完成する。
僕から見ればこの世界の男性は前の世界の女性よりも、ナヨナヨしている所や弱々しい所が目に付く。
まるで小動物のようで、同性の僕から見ても可愛らしいと思うときがある。
まるで少女のように整った容姿をしている少年たちが僕の部屋にいた。
ベッドで寝ている僕にお見舞いに来てくれたらしい魔法学園で同クラスの男子生徒たちであった。
「アハトくん、大丈夫?」
「アハトくん起きちゃった」
僕より二回りほど小さい彼らは僕の取り巻きのようなものでアーリやリリー、アカネたちと少し近い関係性。
彼女たちと彼らで違う点と言えば僕を肉食獣のような目でチラチラ見るか、縋るような目で僕を見るくらいの違いだ。
アルトと言う名の少年がベッドに入った僕の手を両手でぎゅっと握りしめる。
「アハト君、勝手に入っちゃってごめんね。アハト君が倒れたって聞いて、いても立ってもいられなくて……」
「いや、いいよ。気にしないで」
正直あまり気にしていない、と言うのが僕の言葉であった。勿論嘘は吐いてないし部屋に勝手に来られても隠すものもない。
今僕のメインの部屋はここではなくて、僕のことを婿、夫として迎えたいという女子生徒(女子と呼んでいい年齢の奴が何人かいるが)がかなり多くいるため、この世界では逆ハーレムと言う感じで彼女たちと一緒に生活している。
無論、全員と同じ部屋で過ごすというのは学園の中にある学生寮の中では不可能なので、僕がその逆ハーレム――彼女たちの個人の部屋に寝泊まりしに行くということで今の所落ち着いている。
この魔法学園に編入して半年、この奇妙な生活形態にも慣れてきて彼女たちの部屋で堂々と眠ることができるようになった。
こういう話を聞けば中には結婚しちゃえばいいじゃない、とか別に気にせず好きなように生活すればいいじゃないか。そう言われるのだがそこまで簡単な話でもないのだ。
まず僕のハーレム(定義的な意味で実際そう呼んでいいかは不明)の中にいる女性たちはとにかくハイスペックで色々とおかしい。
ハーレムの中にいる彼女たちは皆が皆、個人で国を落としてきたり、国を救ったり、世界を救ったり、逆に支配しようとしていたり。つまり戦闘能力が高すぎるのだ。
ハーレムに最近加わったアーリ、彼女はハイエルフと呼ばれる種族でエルフの中でも選ばれた魔力の持ち主の事をそう指す。
実際遺伝子なんかは違うのかもしれないが僕は細かいことは気にしないし気にもできないのでここでハイエルフとはいったいなんなのかと言う疑問は置いておく。
そういったわけでハイエルフのアーリの持つ力は自然魔法と呼ばれる自然を操る魔法だ。
彼女の支配範囲は彼女を基準に数十キロ先まで自然魔法の射程距離になっており、この魔法学園――この国、この領土のほとんどを覆いつくして情報を管理している。
このことを知っているのは僕のハーレムのメンバーと後は残り少数のみ。
彼女に掛かれば風で伝わる音や下水を流れる水、はたまたそこらに生えているただの雑草からでもその周囲の情報を知ることが出来る。
きっと僕がこの場で彼女を呼びつければ、ものの十数秒でこの場に来るだろう。いや分からないけどやったら本当に来そうで怖いのでやめておく。
僕のハーレムにはまだまだメンバーがいるが、つまりそういう強力な力を持っている者同士で争いが始まると止められるメンバーが他にいなかったりする。そうするとどうなるか――
国一つが焦土と化すのだ。
僕は以前、通っていた別の魔法学園でその事件に近しいことを起こしてしまい、それによりほぼ強制的にこの学園に転校を余儀なくされていた。
そんなことがあっては放っておくことができない。
逆に結婚してしまえ! そう言えばそうかもしれない。しかし考えてみてほしい。
せっかく魔法と言う素晴らしい技術がこの世界では妙に進歩しているのだ。しかもそれを自分が使えるとなれば練習して魔法を使ってみたい。
更に言えばもっと自由に世界を旅してみたい。そんな考えをしてる中で結婚のことを話されても何も反応が出来ないのだ。
そもそも今は結婚したくないのだから。
そのうえ人族以外の種族は非常に性欲が強い。勿論人族の性欲が弱いわけではないが他の種族と比べても差が顕著に出るほど多種族の性欲はおかしい。
僕の知り合いにいる男性がげっそりとした表情でいるところしか見てなかったというのも恐怖を煽る。
そしてそれを裏付けるように彼女たちから時折僕を見る恐ろしい目つき。
とにかくもう少し自由に生活したいという僕の希望はどうにか彼女たちに通り、現在のハーレムと少し変わった生活形態で収まったのだ。
ハーレムのメンバーの部屋で共に夜を過ごす、それが僕と彼女たちで契約した条件でもあった。
彼女たちは僕を強引に拉致、監禁したり怪しい薬や魔法をかけたり、異空間に隔離したりしない。
その代わりに僕は彼女たちに対して特に優しく扱うことを条件として。
最初はあまりにも綺麗すぎるアーリや妖艶ともいえるリリー、その他諸々に委縮したり、手を出しそうになったりしたが気合で耐えている。
手を出してもオーケー、手を出したら人生終了。嘘だろオイ、僕はそう言いたくなる気持ちを抑えて彼女たちと寝ている。
どうも彼女たちは皆、男と恋愛ごとをする機会はなかったらしく僕の腕で枕をしたあげたり、抱きしめて寝るだけですぐに黙り込んだり、変に誘惑してくることが極端に少なくなったのが救いだ。
と言っても今朝、一線を越えかけてしまっていたが。
にしても――僕はお見舞いに来たという同じクラスの取り巻きであるアルト、ソプラノ、テノール、パス。4人の顔をぼうっと眺める。
目と目が会えば頬を染める彼らは誰がどう見ても女の子にしか見えないのだ。
中性的、女性的。どう言ったら彼らの容姿をダイレクトに伝えられるかと思案してみるとふと一つの言葉が浮かんだ。
男の娘。
うーん、これが一番それっぽい。
この世界の特徴をアハト君がまとめた
女:執着心や依存心、独占欲が強いやべーやつ"しか"いない気がする
男:可愛い、小さい、身長が150後半で止まるのが殆ど、男か女か僕には分からない
まるで僕の考えた最高の世界みたいだぁ