3.本当に速いんだね
更衣室でジャージに着替えてグラウンドに向かう。今日はリレーの練習の日だ。
「飯田さん」
振り返るとサッカーのユニフォームを着た男子生徒がいる。同じクラスでリレーに選ばれたあいつだ。たしか。
「えっと、宮原君、だっけ」
「そう。おぼえてたんだ」
「そっちこそ。サッカー部なの?」
「ああ、うん」
「今から部活?よく練習に来ようと思ったね」
「うちのチームの3年の代表がキャプテンなもんで」
「なるほど」
「それに、練習っていっても顔合わせみたいなものだからこういうのってすぐ終わる」
「慣れてるね」
「よくさせられてたし。そっちは初めて?早いらしいじゃん」
「わたし、そんな目立ちたいタイプじゃないし。中学の時のリレーってもっと人気あったから」
「たしかにそうだ。まさか立候補ゼロとはね。あれは驚いた」
「だよね」
「おーい、拓海」
走ってくる人が見えた。
「あ、佐々木キャプテン。こんちは」
この人がさっきの。3年の代表ね。
「そっちが1年の女子?かわいい子選んだねぇ」
「なんでそんな俺が選んだみたいな言い方するんすか」
「いや、見たままをいっただけだよ? 名前は」
「飯田あかりです」
「押しつけられたかんじ?」
「まあ」