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愛別離苦  作者: 安曇 莉
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2. 一生嫌いになる準備

 早く体育祭が来ればいいのに。深花ちゃんを見ているとそう思う。体育祭なんて来なければいいのに。わたしを見るとそう思う。

 さっきの時間、わたしのクラスでは体育祭の競技決めがあった。深花ちゃんのクラスは早いうちに競技を決めたらしく、借り物競争と大縄跳びに出るのだと言っていた。ちなみに秋は持久走と玉入れだ。せいぜい高身長を生かすが良い。

 まあ、あの二人の競技なんて今の私にはあまり関係のあることじゃない。それよりも大変なことが起きたとわたしは思っているから。


 少し前、黒板に丁寧に書かれた競技名と人数を見て係決めみたいだなと思った。ほのぼのと太陽の光を浴びながら、係決めみたいに遠慮してたら出たい競技に出れないなとにこにこしていた。

「じゃあ、一通り目を通してもらえたと思うけど。立候補でかぶったらじゃんけんでいいかな」

 教壇で学級委員がいい、皆が同意した。

「えっとじゃあ、まずどれから決めようか」

「リレーだろ」

 教室で誰かがつぶやくのが聞こえた。

「だって、リレーは速いやつじゃないとダメだろ」

「そんなことはないけど」

 おろおろと学級委員は担任を見る。

「そうだな、うちの学校の体育祭は学年縦割りクラス対抗だ。リレーは勝った時のポイントが高い。速いやつを出して勝ったら優勝に近づけるな。あとポイントが高いのは綱引きや玉入れ当たりの団体競技だ。だれをどこに出すのかも重要になってくる」

 学年縦割りクラス対抗。つまり、わたしのクラス1-Eは体育祭では2-Eと3-Eと同じチームで戦う。リレーや一部団体競技は3学年合同でとても盛り上がるらしい。

「そこで、今回は松浦先生に協力していただき春の体力テストの結果を見せてもらいました」

 委員長の村田が教壇の上で微笑んだ。

 見られたくない子だっているのに、残酷な。わたしこいつ嫌いだな。見せた体育科の松浦もどうかと思うけど。

「ですが、押しつけるのは良くないとのことで立候補で決めるということには大いに賛成いたします」

「では、リレーから決めていくね」

 村田の隣で女子学級委員の坂木舞ちゃんが言う。舞ちゃんかわいい。天使みたい。まっすぐな髪をふわりと二つにまとめていて清潔感がある美少女さん。学年中にファンがいる。

「えっと、リレーは男女一人ずつだよ。でたい人」

 声も可愛い。アイドルみたい。将来はいいお嫁さんにもなりそう。

「えー、いないの?」

 まあ、あれだけ先生にポイントが高いって言われてわざわざ出たがる物好きはまずいないと思う。

「どうしよっか」

 困った顔をする舞ちゃんに一部の男子が手をぴくぴくさせるのが見えた。早く挙げちゃえばいいのに。

 そんな中、舞ちゃんと目が合う。にっこりと笑ったのを見て、嫌な予感がした。

「あかり足速かったよね」

 来ると思った。

「わかる!あかりちゃん測定の時見たけどほんとに速かったもん」

「すごかったよね。運動部でもないのにって見惚れちゃったよ」

「飯田さん、なんでもできちゃう」

 クラスの女子はリレーを大層走りたくないらしい。

「舞が走ってもいいけど、あかりの方が速くなかったっけ?」

「うむ、確かに記録では飯田さんの方が0.2秒速いですね」

 余計なこと言うなよ村田。私はあんたを一生嫌いになる準備ができた。

「あかり、どうよ」

 舞の笑顔が苦しい。こんなかわいい子に頼まれたら断れないじゃない。

「うん、わかった」

「ありがとう。あかり大好き」

 その大好きが聞きたかったんだ、って心の中でつぶやく。

「えっと、じゃあ男子の方は誰がいいかな」

 クラスのみんなががやがやする。足の速い人が誰か話しているらしい。

「拓海くん?」

 舞は一人の男子の名前を聞きとると村田の方を見た。

「拓海…宮原君ですか。ええ、宮原君は足が速いと思いますよ。同じ中学の僕が保証します」

「宮原拓海くん?えっと」

「俺です」

 男子が一人立ち上がる。身長はまあまあぐらい。顔は平均よりはかっこいいんじゃないかな。わからないけど。

「リレー、走ってくれる?」

「はい」

「ありがとー」

 ふわふわ笑う舞にクラスの男子の嫉妬が宮原ってやつに向かったのを見た。舞、愛されてるなぁ。

「じゃあ、次。徒競走決めていくね」

 少し難航しながらも一時間で競技はきまり、わたしはリレーと障害物競走に出ることになった。走る予定なんてなかったのに。大玉転がすつもりだったのに。

 学級会がおわって舞がわたしの席にくる。

「あかり、リレーのリハーサルじゃなくって。えっと」

「練習?」

「そう、それ。練習が来週の放課後あるらしいんだけど、出れる?」

「大丈夫だと思う。わたし部活も入ってないし」

「ほんと?じゃあ、先輩にはそう伝えておくね」

 そのあと舞は宮原の方にいって多分同じことを聞いたのだろう。彼が頷くのが見えた。

 練習出るんだ。まあ、真面目そうなやつだし。

 見ていたら目があった。よろしく、という意を込めて頭を下げてみるとぺこりとした。伝わったらしい。

 手帳を出して一週間後の予定にリレーとかく。気分が重い。

 確かにわたしは走るのが比較的速い。でも、あまり好きではないのだ。その証拠にというかわたしは立候補しなかったし運動部でもない。

 時間、止まらないかな。

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