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シルディア=レムラス①

「エルギス=アーカムアークス。年齢は17歳で身長は175センチ、体重は57キロ。趣味は読書で授業にはあまり出ていない。生まれは民主国家アルバシリアの片田舎、両親は共に一般人で、魔導の素質は偶然得ていた。魔導特性は無属不定性で、実技訓練は苦手なのであまりやっていない。……おかしいですよね?」

 魔導学園学長室。エルギス=アーカムアークスに関する調査書類を机に置き、シルディアは立ちながら、向かいに座っている人物と話している。

 学長室の椅子に深く腰をかけているのは、魔導学園学園長を務めるクラウディウス=オウルビハンドである。先の戦争でデーモンロードと呼ばれた彼は、天才魔導士であり、40歳という若さで学長に就任してから10年連続でその職を担っている。

「……どこが、おかしいというのだ?」

  クラウディウスの風貌はすでに50歳であることは微塵も感じさせない若々しくエネルギーに満ち溢れたものだった。クラウディウスは、硬い口調ではあるものの口元に優しい笑みを浮かべている。

「この経歴、普通すぎます」

「ということは何もおかしくないじゃないか。経歴詐称を心配しているというならその証拠を――」

「こんなありきたりの経歴だというのに、彼はメイ=フェスリアを模擬戦にて破りました。実技は得意でないと言っているのにもかかわらず」

 それに、と付け加えてシルディアは続けた。

「入学試験の彼の解答も入手することができました。見てください」

 そう言ってシルディアは書類の束を学長机に置いた。書類を手にとって流し読みを始めたクラウディウスは徐々に目を見開いて言った。

「これは……まさかそんな……」

 そう、950点。入学試験の最高得点は毎年800点台。それを大きく上回る点数。しかも……おわかりですか?」

「ああ……。これは採点する側が知らない知識を用いているため不正解となっている場所がほとんど……実質満点というわけか」

 ええ、とシルディア。

「これは明らかに新入生の、いいえ、学生のレベルを逸脱している」

「そこに気づく君には言われたくない話だとは思うがね。たしかに君の言う通りだ。……しかしこのことを私に伝えて、君は何が目的だ?」

「そうですね……私はただ、彼の本気を見てみたい。その上で、本気の彼を、打ち負かしてみたい。それだけです」

「なるほどなそのために私に協力して欲しいと……しかし、私が協力するメリットがない」

「ありますよ。というより学長はすでに協力する気でいますよね?」

「何故そう思う?」

「――アーカムアークス」

 その言葉に、クラウディウスはピクリと反応した。

「やはり……。学長は彼女の大ファン、いえ、彼女を崇拝すらしていると聞きました」

「どこから聞いたのかは知らんが、確かにそうだ。私はミリアム=アーカムアークスと、彼女の作った伝説の魔導器等を崇拝している」

「ではお分かりでしょう? 彼、エルギス=アーカムアークスはおそらく、伝説の魔導士ミリアム=アーカムアークスの縁者でしょう。数百年前に滅びたと思われたアーカムアークス家が、どこでその血を絶やさず生きてきたかは知りませんが、実際にアーカムアークスという名を聞くと、確かめずにはいられない。そうですよね?」

 クラウディウスはミリアムの言葉にフムと頷いた。

「その通りだ。私は入学に関してほとんど関与をしていないが故、この事実には気づいていなかった。情報提供をしてくれた君には、礼をしなければならない。そこで、先ほどの協力の話だ」

「ええ。なんとかしてまずは、彼の本気を見てみたいですね」

「そうだ。彼の本気が見れるように、策を打つとしよう……」

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