表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

ブレトヴィル・ロルゲユースへの反撃1

 私たちは夜のうちにカーンに到着した。中世からの歴史を持つ征服王ウィリアムの街カーンは連合軍の爆撃により破壊されていた。この爆撃で一万もの男女が命を落とした。パンツァー・マイヤーの言葉を借りる。「町は広大な墓地のようであった」


 カーン―ファレーズ街道を戦車で進むと路肩にバスが放置されていた。そのバスは炎上していたのだろう。車体は黒く焼け焦げ、扉は歪んで開かなくなっていたようだった。バスの割れた窓には燃え盛る車内から出ようとした黒焦げの死体が幾人も折り重なっていた。


「目を背けるなよ、あれが戦争だ」


車長席に座るベッカー軍曹がそう言った。私たちはカーン―ファレーズ街道を進み戦場へと近づいていく。

次の日の朝、夜のうちにカーンの西に到着した私は目を覚ました。目が覚めても相変わらずヤーボの空だった。夢ではない、現実だ。


 6月8日、ヒトラーユーゲント師団の左翼にドイツ地上軍最強の装甲部隊である装甲教導師団が到着し展開した。しかし、日中に行軍したためヤーボに攻撃され、展開前の部隊としては著しく消耗していた。

この日中行軍はOKWのドルマン大将の命令によるものだった。装甲教導師団のバイエルライン師団長は日中の行軍の危険性を説き夜間の行軍を訴えたが、それは聞き入れられなかった。結果として装甲教導師団は大きなツケを支払うことになった。


 この日の夕刻、パンツァー・マイヤーが戦車隊と装甲擲弾兵を率いてカーン―バイユー街道上のブレトヴィル・ロルゲユースでカナダ軍と交戦した。戦術目標はブレトヴィル・ロルゲユース。第12SS装甲連隊の第1中隊第4中隊、ヒトラーユーゲント師団第25SS装甲擲弾兵連隊偵察中隊とともに私たちは街道上をバイユー方面に進みブレトヴィル・ロルゲユースを目差し、第26装甲擲弾兵連隊第1大隊は街道を越えカナダ軍第10機甲連隊と接触する。


 攻撃前になると擲弾兵が私たちの戦車の上に登る。タンクデサントだ。私は擲弾兵たちが小隊長車の砲塔を盾にするように戦車の上に乗るのを主砲の照準器越しに見ていた。


 戦闘を前にして私の手は小さく揺れていた。これが武者震いなのか恐れなのかは私にはわからなかった。私の後ろには戦車長であるベッカーSS軍曹と装填手であるマヤが、前方には操縦手であるツルタと無線手のマウラーがいた。


「初の実戦だ、怖気づくなよ。恐れこそが最大の敵だ。判断を鈍らせる」


ベッカーSS軍曹は私の状態を知ってか、そう言った。戦車の車内での会話はインターカムを通して行われており、ドイツ軍の戦車兵はタコホーン(喉頭マイク)とヘッドセットを装着していた。これにより、エンジン音で騒がしい車内でも乗員同士のコミュニケーションが可能だった。


 作戦開始直前にパンツァー・マイヤーが各戦車を回っていた。どうやらパンツァー・マイヤーは攻撃の先頭に立つらしかった。それには第12SS装甲連隊指揮官マックス・ヴュンシュ大佐も同行した。


 パンツァー・フォー!


 「戦車、前へ」の命令が下る。その命令が下ると私たちの戦車、912号車は前進を開始する。攻撃目標はブレトヴィル・ロルゲユース!


そのうちノルマンディー、カーン・ファレーズ周辺の地図を作ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ