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編制1

注意

前書きの章を読まずに来た人へ。

前書きの章から物語が始まってるので、前書きの章読んでないとちんぷんかんぷんになります。





私と行動を共にした全ての人々と両陣営の大戦の犠牲者に捧げる――









 私たち志願者がフランクフルトをたったのは雪の降る2月のことであった。フランクフルトから選抜された少年少女――そのすべてが幼い子供たちであった――は15人程度だったと記憶している。驚くことにその集団の中での最年長者はなんと私であった。最年長者らしく振舞わねばと胸に誓ったことを覚えている。雪の中での出立ということもあったが、それを加味しても私たちを見送る人の姿はまばらであった。というのも男女混成部隊の設立は秘密裏に行われたため私たちの出征をしる人間は親族と突撃隊と親衛隊関係者のみであり極わずかであった。


「なにも今生の別れではございません。私は必ず帰って来ます、だから泣かないで笑顔で見送って欲しいのです」


 私は両親を戦禍でなくした私の引き取り手となってくれた叔父夫婦にそう告げた。両親をなくし塞ぎ込んでいた私を実のわが子のように迎え入れてくれた叔父夫婦は私の出征を前にして涙を流してくれた。本当は私に「行かないでくれ」と引き止めたかったに違いないが親衛隊の隊員を前にしてその言葉を発することはできなった。今になって思えば申し訳ないことをしたと思っている。


「では行ってまいります。どうかお元気で」


 別れを告げる私の顔は涙で濡れていた。今思えば両親の復讐のためとは言えバカな選択をしたと思うが、当時の私には復讐することしか考えらなかったのだ。

そして事実としてこれが今生の別れとなった。後に叔父夫婦は連合軍の空襲に巻き込まれ亡くなったのだ。恩返しさえもまだ出来ていなかったのに……



 私の次の記憶は入営の後に飛ぶ。道中の記憶は列車に乗って移動した程度のものしか残されていない。おそらくは戦争の記憶が強烈過ぎて消えてしまったのだろう。とにかく戦争は悲惨だった。入隊初日には親衛隊のお偉いさんの演説と部隊の幹部の顔見せがあった。幹部の顔見せの内容は覚えていない。覚えている幹部の顔は私が直接関係した人物のものぐらいであろう。だが、この日の親衛隊のお偉いさんの演説はしっかりと覚えている。というのもあの日の私たちがあの場所に存在していた意義についての演説だったからだ。そのお偉いさんの名前は覚えていないがヒムラー長官でなかったことは確かである。


 そのお偉いさんは演説の中で語ったことは「ヒムラーの目論見」についてだった。


 曰く、戦争の長期化によってドイツ国内の戦える男児の数は少なくなってきているためヒムラーは女性を前線に出そうと考えている。しかし、ヒトラー総督は女性を前線に出すことに否定的な考えを持っており、これを覆すためにヒムラーはヒトラーに対しても秘密に男女混合部隊の設立し、この部隊が前線で活動し始めてしばらくたったところで存在をヒトラーに対して明かし説得の材料にするつもりだという。そしてヒムラーがその計画を実現すべく私たちに与えたおもちゃが戦車であった。


私たち女性の体での戦車の運用は困難を極めた。その殆どが男性でも音を上げる重労働であったからだ。私の記憶の中でこの重苦を涼しい顔でやってのけた女性は一人しかいない。しかし、戦車という存在が私の生命を戦争から守ったのもまた事実である。

また、私たちに戦車が与えられたのにはプロパガンダ的思惑もあったようだ。私たちが戦車に乗る姿をパレードで見せて女性兵の志願を募る腹積りだったようだ。まあ、その計画は取らぬ狸の皮算用となったわけだが、本気で若い女性を戦力にするつもりだったのだろう。実際に私も含めた一部の人間は下士官教育を受け、またさらに一部の人間は下級士官の教育も受けていた。




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