自己紹介
主人公の名前を間違えるという
最凶な間違いをしていたので
直させて頂きました。
桜乃と買いてありましたが
正しくは桜音です。
間違えていたのは、前回と今回の分です。
すいません。
ガラッ
「みんなー、席に戻れー!」
パンパンとクラス名簿を叩いて
生徒の注目を集め、入って来た担任を見て
その場が一気に静かになり皆が着席する。
「今日は、転入生を紹介するぞー!」
その、一言でザワッと一気にクラス中が騒がしくなる。
「せいんせーい!
女子ですかー?女子ですよねー!」
そこへ、お調子者の様な、
髪を金髪に染めた一見チャラそうな男子生徒が、
期待で目を輝かせて担任と、
担任が入って来た教室のドアを見る。
「それは、見てのお楽しみだー。
おーい!入って来ていいぞー!」
そんな男子生徒に、担任も冗談めいて返すと
そのドアに向かって手招きしながら
声を少し大きくして言う
・・・ガラッ
それに、対し入って来た人物は、
無言でドアを開けスタスタと担任の横まで歩き
クラスメート達の居る正面を向く。
「・・・おお!女子だ!」
「ラッキー!」
「可愛い・・・!」
など、反応は様々だが彼女に対する評価は概ね好印象だ。
「じゃあ、黒板に名前書いて皆に自己紹介してー。」
「・・・・・・」
そう言われた少女は無言で黒板の方を向き
チョーク手に取ってカッカッと
小さな音を立てながら黒板に自分の名前を書く
「・・・無敵 桜音です。
よろしくお願いします。」
そして、その少女 無敵 桜音が、
そう言って、無表情なままペコリとお辞儀をし、
他のクラスメートがそのあまりにもの無表情さと、
無機質さに固まっていると、
「じゃあ・・・
お、一番後ろの席が空いてるな。
おい!生殺!
今日からこいつの席はお前の隣だ!
仲良くしてやれ!」
担任は、一番後ろの窓際の席を指さすと、
大きな声でその隣の席に
人当たりのいいニコニコとした笑顔をした
生殺 佑眞に大きな声で言う。
「はーい。
無敵!隣の席で良かったよ!
改めて、これから、よろしくな!
それから・・・
いい忘れてたけど昨日はすまんな。
お前の登校、今日からだって忘れててさ。
朝早くに起こしてすまなかった。」
そう、謝る佑眞は、
実は、担任からその面倒見の良さを買われて
桜音の世話役を任されたのだ。
そして、そのために、
遅刻しない様にと起こしに来たのだが、
桜音がクラスへ入るのは、
転入の次の日からだったという訳だ。
「・・・・・・」
桜音は、謝る佑眞をジーッと無言で見つめ
「・・・別にいい。
今朝は着替え
(の、入った荷物が届いてるって知らせてくれて)
ありがとう。
おかげで、(生乾きで)気持ち悪くなくなったよ。」
そう、今まで無表情だった桜音が
本心からの笑顔を向けて言うと、
周りがザワッと騒がしくなり
言われた本人である佑眞は、
突然の事に困惑しポカーンとしている。
しかし、その騒ぎの元凶である桜音は
訳が分からないと言った様子で無言で首を傾げている。
今まで同じ遺伝子からできた双子の様な存在の
『桜香』や、生まれた時から同じ研究所の『博士』や、
誰よりも自分達の事を想ってくれる『霧橋』達としか、
殆ど会話らしい会話をしたことが無い桜音は、
大抵この三人にこれだけ言えば全て伝わった。
故に、このような誤解を招く発言をした。
という事すら気づいていないのである。
だが、こんな事を言ってそういう話に
敏感なクラスメートー特に男子ーが放って置く訳がない。
「ヒューヒュー熱いねー!」
「転入早々からもうそんな仲かよー!
ずるいぜー、おい〜!」
「せっかく可愛い女子が入って来たと思ったのにー!」
「不純いせーこうゆーはダメなんだぞー!」
などと、口々に冷やかしたり、
からかったりして囃し立てたり、
ブーイングを飛ばしたりする。
「おいおい!待ってくれ!
違うんだって!
俺は、頼まれたからこいつを起こしに行っただけで!
着替えも、荷物が部屋の前に有ったから
届いてるぞ!って言っただけで・・・
それて、こいつの着てた服が生乾きだったから
着替えたら気持ち悪く無くなったってだけだよ!」
ようやくフリーズ状態から戻って来た
佑眞は、勘違いを解こうと必死に
説明・・・と言うよりは釈明を
まくしたて少し涙目になって否定する。
「ホントかよー!」
「なんか信じらんないなー!」
「そうだなー!
ここは、本人に聞いてみよーぜー!」
訝しげに見る男子達は、そう言うと、
桜音に白羽の矢を向ける。
「実際のとこどーなんだー?
こいつになんかされなかったかー?」
そう、面白いおもちゃを見つけた
子供の顔で聞くその男子は、
佑眞の脇腹をつんつんとつつきながら言う
「・・・・・・?
なにかってなに?
特に何もされてないけど?」
不思議そうに小首を傾げながら言う桜音に
「ちぇー!なんだよーおもしろくないなー!」
と、男子が言うと、他の男子達も
同じ様に冷やかすのを止め席に戻る。
「なんだなんだ。仲が良さそうじゃないか。
良かった良かった。じゃあ、生殺!
無敵のことよろしくな。頼んだぞー。」
それを見届けた担任が軽くそう言うと、
佑眞は、カリカリと頭をかいて
照れくさそうにしながらも
「はーい!分かりましたー。」
と、返事をして了承する。
「よしっ!いい返事だ。
・・・そんじゃあ、他の皆も!
転入生だからって仲間はずれにすんなよー!
・・・まあ、それは大丈夫そうだな。」
と、いつの間にかまた、桜音の周りに集まって
自己紹介を始めていた生徒達を見て担任は言う。
「・・・俺、成宮 陽翔!
よろしくな!」
担任が桜音を紹介する時に女子かどうか、
やや、しつこいくらいに尋ねていた
お調子者の様な髪を金髪に染めた
一見チャラそうな男子生徒がそう名乗ったのを
皮切りに、他の生徒達も自分も自分もと、
次々に自己紹介をして行く。
「私は、西条寺 遥!
無敵 桜音・・・って、
おもしろい苗字とかわいい名前だね!」
その、落ち着いた地毛の茶髪に、
大きな茶色の眼の女子生徒は
そう、可愛らしく笑って言う。
「・・・そう?」
桜音は、その言葉に不思議そうに小首を傾げて、
どう答えればいいか少し困惑した様子で聞く。
「そうだよ〜!ねえねえ!
桜音ちゃんって読んでもい〜い?」
コクリ
「・・・・・・いい。」
桜音は、頷いて、短く答える。
「よかった〜!じゃあ、桜乃ちゃん!
私の事も遥って読んで!」
コクリ
「分かった。・・・遥、これからよろしく。」
桜音は、再び頷いてそう言うと、右手を遥に差し出す。
「わー!桜音ちゃん!よろしく〜!」
遥は、嬉しそうにその手を取ると握手をする。
「あっ!ずるいぜー!西条寺〜!
俺も、俺も〜!」
先程のチャラい金髪ーもとい、成宮 陽翔ー
が、割りこむようにしてそう言うと、
「俺も〜!」「僕も!」「自分も・・・」
「私も〜!」「オレも〜!」
「ボクもいいですか・・・?」
他の生徒達(特に男子)も、
我先にと手を差し出しそれぞれ握手を求める。
「・・・あ、あの・・・
じゃあ・・・成宮さんから・・・」
突然の事態に困惑しながらもそう言って、
おずおずとしながらも右手を出す。
「おぉっ!よろしくっ!
俺も陽翔でいいぜー!
代わりに俺も、桜音って読んでいいか?」
陽翔は、その手をパッと取り、
すぐ、にぎにぎと握手をする。
「・・・はい。いいですよ。陽翔さん。」
「よっしゃああ!ありがとう!桜乃!」
陽翔は、桜音と握手した方の手を
グッと肘の所で折り曲げてガッツポーズをする。
「じゃあ、次俺〜!」
「はい。」
「俺の名前は〜・・・・・・」
そうやって自己紹介も賑やかかつ、つつがなく進み
転校初日の授業を終えた・・・
因みに一人その輪に入れない担任は、
じゃあ、俺は職員室戻ってるから〜・・・
と、誰に言うでもなく告げると
いつの間にかいなくなっていましたとさ。