二人の実験体
5月29日修正しました
東京のとある研究所でのこと
20代くらいの男が二人の瓜二つな女の子を起こしている
「桜香、桜音起きろ」
「ううーん。どうしたんですか、こんな夜遅くに」
桜香と呼ばれた少女はすぐに目を覚まし辺りを見回す
「・・・・・」
桜音と呼ばれた少女は目を覚まさない
「桜音、起きろ。これは、命令だ。」
男は急に厳しい表情と声になり桜音をゆする
「はい、今起きました。どうかしましたか。」
桜音はその言葉で、
急に起き上がりしっかりとした顔で聞く
「今すぐ出かける支度をしろ。
すぐに、ここを離れるぞ。」
男は慌てた様子で二人を急かす
「出かける?・・・何かあったんですか。」
桜香は冷静に問う
「ああ、状況が変わったんだ。すぐに場所を移るぞ。」
男は質問に答える
「移るって・・・一体どこに行くんですか?」
桜音はさらに質問する
「・・・それだが、二人別々のところに行ってもらう。」
男は若干申し訳なさそうな顔で言った
「それは問題ありませんが、一体どこに?」
桜香はそこまで気にしていない様子で聞く
「ちょっとー、問題なくないよーっ!
ちょっとは嫌がってよー!」
桜音はプンプンと怒って両手でポコポコと桜香の体をたたく。
「だって、しょうがないでしょ。
命令なんだから、お姉ちゃんもわかってるんでしょ。」
桜香は桜音をなだめすかす
「ええー、それは分かってるけどー、でもー!」
桜音が最後まで言い終わらないうちに男が割って入る
「二人ともいい加減にしなさい。急いでるんだ。」
男が若干怒り気味にそう言った後、
二人は一瞬にして静かになる
「「はい、ごめんなさい。」」
二人は反省した様子でそろって謝る
「ほら、いいから速く着替えて。」
そう言いながら、男は服を二着取り出す。
片方はジャージ、もう片方はどこかの学校の制服だ。
「分かった。どっちを着ればいい?」
桜香はジャージと制服を指差して男に聞く
「桜香はジャージ、桜音は制服だ。」
男は、テキパキと指示を出す
「はーい。ていうかこれ、どこの制服なの?」
桜音は制服をつまみながら男に聞く
「ああ、これは国立育成学園高等部の制服だ。」
男は制服を一瞥してから質問に答える
「ふーん、そうなんだ。あれっ、待てよ?
確かその名前どこかで・・・」
桜音は始めは興味なさそうにしていたが、
途中から表情が変わる
「ああそこは僕の母校だよ。
前に話したと思うんだが・・・」
「霧橋さんの母校・・・
ああ、そうか!だから聞き覚えがあったのか。」
「ああ、そうだ。」
霧橋と呼ばれた男はうなずく
「ていうことは、桜音はその高校に行くってことなんだね。」
桜香は霧橋に訪ねる
「ああ、桜音はその高校に入ってもらう。」
「それじゃあ、桜香はどこへ行くの?」
桜音が桜香の行き先を訪ねる
「ああ、桜香には別の研究所に行ってもらう」
「そっか・・・二人一緒っていうわけにはいかなかったの?」
桜音が悲しそうな顔で霧橋に聞く
「ああ、空きがなくてな。
二人一緒にしてやりたかったんだが・・・」
「いいえ、いいんです。
どうせ、そう長くは一緒にいられなかったでしょうし・・・」
桜香は普段無表情な顔を少し歪ませて答える
「・・・そうだね、ほらっ、速く着替えちゃおう。」
桜音は少し考えてから納得し、
着替えがまだだったことを思いだす
「そうだ、さっさと着替えなきゃ。」
桜香はあわてて着替え始める
「ああ、速くしてくれ。」
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「着替え終わったよ。」
「こっちも着替えたよ。」
しばらくたって二人が同時に着替え終わる
「よし、じゃあ行くぞ。」
「「はい。」」
そう言って三人はその部屋を出て行った