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 愛されたいと望んでいたのは自分ではなく彼だったのかもしれない。

 

 愛されたいと感じていたのは事実。けれど、〝愛する〟ことは知らなかった。


 目の前でされた告白に、その切なげな瞳に、その泣きそうな表情に、触れる指先が少し震えている緊張に、優歩の胸が鳴った。


 どうしてそんな表情(かお)するの。どうしてそんな()をしてるの。こっちだってまた泣きそうなのに。


 恐々伸ばした優歩の手が零の頬に触れる。大人しく、されるがままにして零は優歩を見つめていた。


「……あたし、今までずっと〝愛して欲しい〟誰か〝愛して〟ってそれだけだった。誰かを〝愛する〟ことなんて知らなかった……。あたしの両親がそうだったから。お互いに愛して欲しいってそれしか主張しなくて、愛そうなんてしてなかったから」


 零は黙ったまま優歩の言葉を聴いている。優歩は目を伏せ、静かに言った。


「零はあたしに〝愛すること〟を教えてくれた。愛はもらうばかりじゃないんだって、知った」


 優歩は顔を上げ、零に問いかける。


「ねぇ、あたしにも愛せるかな。あたしにそんなこと、できるのかな」


 零が微笑んだ。できるよ、とそっと口伝える。優歩は少しずつ零の頬に添えていたいた手を下ろしていく。その手が零の首にかかったところで優歩は手を止めた。


「あたし、零のCD持ってるよ。どれも心に響く良い音楽だと思う。それは零が優しいからなんだね。あたしが昔訊いてたやつは、どれも同じような物だった。でも、零に会ってから全部変わったよ。

 あたしも零が大好きだよ――」


 不意に零の腕が伸びてきて優歩は抱きしめられ、楽器の心配をしてわたわたする優歩に零が笑う。零の笑う声を聴いた優歩は、抑えていた涙がまた溢れ出してしまった。だがそれは零も同じで、二人で泣き笑いながら一緒にいたい想いが一緒であることを確かめた。


 どちらからともなく唇を重ねた時、大きなラストの花火があがった。



 ひとりじゃないよ、僕がいる。一緒にゼロから歩いて行こう――……。



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