表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

10



 かくして「Rei」こと「零」はデビューし、その澄んだ歌声と人懐っこい笑顔で瞬く間に有名になった。大手企業の偉い人は大手の事務所の偉い人だったらしく、色々な大人の事情を差し挟みながらスピードデビューを果たしたReiは、毎日どのメディアを見ても目にする程引っ張りだこだ。


 ギター片手に歌っている若者ならその辺の道端にごろごろしている。それでも零がデビューし、色々な人に受け入れられたのは〝才能〟があったからだろう。

 人と上手に付き合う才能、音楽の才能……零は才能があるからこそ、この世界でもやっていける。


 でも、あたしは……?


 優歩は自分に問いかけてみた。


 ……。


 答えは返ってこない。それは優歩に何も才能がないことを示しているのだろう。自分で自分の良さが判らずに、誰が自分の良さを見抜いてくれるだろう。


 優歩は携帯電話を握りしめる。零からの連絡は、あの日からぱたりと途絶えた。急激に忙しくなったことは間違いない。色々な打ち合わせやら契約やら自分の生活も、ある筈だ。

 だから少しメールが来ないだけで心配することなど、何もないのだ。優歩は零の最初のお客さん、最初からそれだけなのだから。メールなどいつ来なくなってもおかしくはなかった。


 それでも優歩は不安を隠せなかった。優歩を見てくれた人が、やはりいなくなってしまったのではと思う。そういう人がひとりでもいたのだから良いではないか、また頑張ろう、だなんてことは、現実には有り得ないのだ。そう思える人は、他の支えがある人だ。


 優歩は頭を抱えた。テレビでもネットでも雑誌でも、Reiの特集をしていないところがない。彗星のように現れた期待の新人を知りたいと、世間が注目している。何処を見てもRei、Rei、Rei。そんなにもReiは見られているのに、優歩は誰にも見られていない。両親にさえも。学校にさえも。

 優歩は、要らない存在なのだろう。

 

 あたしはもう、誰にも必要とされない。この世界にさえも。あたしは誰からも〝見えてない〟から。

 みんなの目に、もうあたしは映らない。この世界のどれも、あたしを見ることはない。いてもいなくても、何も変わらないあたしは何の意味を持って生まれてきたんだろう。


 ただ独り、孤独のまま……。



 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ