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ようこそ、リア充撲滅委員会(笑)へ

作者: 志成乃

「花井、これ生徒会室まで頼むぞ」

「あ、はい」



4月某日、とある組の委員長になってしまった私は担任から渡された資料を手に持っていた。

頭も運動もごくごく普通である私が委員長になった理由は分からない。

花井 華奈、高校2年生、春。

人生で初めて高校の生徒会室に向かいます。



「えっと……ここだよね」



私は今、生徒会室の前に立っている。

私の高校の生徒会室は、パンを売っている購買と同じ場所だ。

よく購買のおばちゃんが生徒会室に入って、生徒会役員の特権で購買の中でパンを買っている姿を見る。

生徒総会に提出する資料は、まず生徒会役員に渡さないといけない。

そこから役員が資料を作って最後に先生が添削をして初めて資料が出来上がる。

資料に必要なのは原稿、その原稿を渡さないといけないのはクラスの委員長だ。

つまり私が渡さなければいけないことになる。

私自身、初めて生徒会室に行くから緊張が半端ない。

ただ単に渡すだけなのに胸の動悸が止まらないのだ。



「行かなきゃ……」



これがまだ3年生だったら、生徒会長を含む生徒会役員は見知った人物で渡しやすかっただろうに。

私は恐る恐る、大きな音をたてないようにゆっくりと戸を開けた。



「……ようこそ、リア充撲滅委員会へ」



バーン!!

ありえない光景に私は思わず戸を閉めた。

大きな音を立ててしまったとかはこの際考えない、それよりも突っ込ませてくれ。

リア充撲滅委員会って何!?

ここって生徒会室だよね!?

リア充撲滅委員会なんて学校に存在しないよね!?

あと何で碇ゲ○ドウのポーズで座ってんの!?

動揺して上にかかっているプレートを見ても“生徒会室”と書かれているだけだ。

……あれ、疲れてんのかな私。

でもこれを渡さないと帰れないし、締め切りが今日だから尚更渡さないといけない。

私はもう一度意を決して戸を開けた。



「し、失礼しま」

「ようこそ、リア充撲滅委員会へ」

「えっと、ここって生徒会室で」

「おい貴様」

「は、はいぃ!!」

「ノックもせずにこの神聖なる生徒会室に入るなんて何様だ」



私は恐怖で息を飲む。

喉に突き付けられたのはカッターナイフ(因みに刃は出してない)。

待って、生徒会役員に犯罪者と似たような雰囲気だしてる人いるんですけど!!



「やり直せえええ!!」

「ごめんなさいいいいいい!」



ええええええええ。

すぐさま追い出された。

え、なに!?

何なの!?

いや確かにノックしなかったけど追い出すことないじゃん!?

てゆーか、まだ碇○ンドウのポーズしてんの!?

目をこすってプレートを見ても“生徒会室”の文字は変わらずだ。

……あれ、夢見てんのかな私。

再び戸に手を掛けると、部屋から話し声が聞こえてきたので聞き耳を立てた。



「アイツ誰?」

「2年の花井じゃないっスか?A組のいいんちょー」

「そうか。何しに来たんだ?」

「今日が生徒そーかいの資料の締め切りっスよ」

「あーそうだっけ、すっかり忘れてた」

「じゃあこの紙束を何だと思ってたんスか?」

「落書き用紙」

「大事な資料ですよソレ」

「どっかに可愛い女の子いねーかなー。腰がエロい子いねーかなー」

「黙れ歩く18禁」



こんな生徒会大丈夫なの!?

会長が締切忘れるって大丈夫なの!?



「はい、そんじゃテイク3」



私がここにいることを知ってるかのように会長が声をかけた。

いやいやテイクって、こっちは早く帰りたいんですけど!!

私は溜息を吐いて、コンコンコンと3回戸をノックした。



「はいどうぞー」



会長の気怠そうな声が聞こえて私は戸を開ける。

これ以上突っ込んだら私の体力が減る……。



「……ようこそ、リア充撲滅委員会へ」



スルーだ、スルーするんだ私。



「2年A組の花井です。生徒総会の資料を提出しに来ました……」

「突っ込まないんスか!?突っ込んでくださいよ!」

「え、何に?」

「この学校にリア充撲滅委員会なんて委員会ねーよって話っス」

「心の中で既に突っ込んだわ!!」

「え、そうなの?」



すると会長がぽかんとした顔で私を見る。

あああああ、突っ込んでしまったああああ!!



「ほらー、会長がいかにも突っ込んでくれって顔してるっスよ」

「分かりません!そんな顔分かりませんから!」

「……俺達はリア充撲滅委員会と言ってな、この高校のリア充を撲滅することが目的だ」

「名前からしてそんなんだと思ってました」

「で、花井さんは資料持ってきてくれたんだよな」

「はい。お願いします」



会長に資料を手渡すと、その資料を舐めるように見た。

……帰っていいよね、と戸に向かおうとしたら声を掛けられた。



「ほー、A組の今期の生徒会スローガンは“リア充死ね”か。なかなかいいじゃねーか!俺の心の中をまさしく代弁している!!」

「書いた覚えありませんけど!?」

「うんうん、俺達の同士だな。どうせ年齢=彼氏いない歴なんだろ分かってるって」

「最低ですね!?」



……確かに今まで彼氏出来たことなかったけど。

この人には言われたくない、なぜか思ってしまった。

私の高校の生徒会長は、彼氏いない歴17年の私が言うのもなんだけどイケメンの部類に入る。

生徒会での挨拶もしっかりと喋る姿は正との鑑だといわれていたのに……。

彼女も清楚系だとか可愛い系だとか噂されていた。

まさかイケメン生徒会長がこんなふざけたチャランポランだったなんて。

これを詐欺って言うんだろう。

いや待てよ、これでリア充だったらありえないのか、自称リア充撲滅委員会って言うほどなんだからリア充ではないんだろう。



「じゃ、提出したので帰りますね」

「そんな、お茶用意したんですけど一杯……ど、どうですか?」

「嬉しいですけど、用事があるのですみません。また時間があるときにでも」

「何だって!?生徒会入ってくれるのか!?」

「言った覚えありませんから会長!!」



もう、私帰るんで!

強く言い放って戸を開けようとしたときに、向こうから戸をあけられびっくりして声を上げた。



「あれ、お客さん?」



背が高く、スラッとした体型の女生徒。

声はやや低めで、髪の毛はサラサラ、確かこの人は生徒会の副会長だ。

容姿端麗だったから余計覚えている。

性格もよく、面倒見がいいといううわさも聞いている。

この人が会長だったらよかったのに、と先程見た会長には本当に幻滅した。



「わあああああお帰りいいいいい!」



突如、私の体の横を風が通り過ぎる。

何が起こったのかわからなくて眼をぱちぱちしてると、会長が副会長に抱き着いていた。



「副会長、お疲れ様です」

「お疲れ。あ、どーも副会長です」

「ど、どーも……」

「花井には特別に教えてあげよう」

「別にいいです」

「俺の彼女でーす」

「……はあ!?」

「副会長は俺の彼女さんなのです!」



頭が真っ白になった。

あれ、貴方さっきまでリア充撲滅委員会って名乗ってたよね!?

なのにリア充なの!?



「リ、リア充死ねとか言ってましたよね」

「言ったよ?リア充と認めるのは俺と副会長だけで、校内にいるカップル見てると爆発しろって思うんだよね」



この時私は思ったのだ。



「(ゲスすぎるうううう!!)」

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― 新着の感想 ―
[一言] 軽やかなリズムに一気読みしてしまいました(笑)。 素晴らしい作品をありがとうございます(*´∀`*)
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