プロローグ
どうも。
†焔月†です。
今回は、不意に漁っていたら出て来た、ちょっと前に書いた短編小説を上げてみようかと思い、ここに文字を走らせております。
まぁ、半ば勢いでやった作品だったと記憶しているので、出来はあまりよくありませんが、読んでくれる方が、少しでも楽しんで頂ければ、と思います。
ではでは。
しばし、私の駄作にお付き合いください。
「……東京支部より本部へ、応答願う」
俺は無線機を片手に電波の向こうへと呼びかける。
『こちら本部。何だ?』
電波の向こうから返答が返ってくる。
幸い、今の電波状況はいたって良好のようだ。
「……偵察に出した部隊との通信が途絶えました……おそらく全滅と見られます……」
つい先程聞いた、部下からの報告を伝える。
そして、相手の重苦しい低い唸りを聞いてから、報告を続ける。
「なお、通信記録、部下の報告等から〝赤エプロン〟が確認された模様……増援を要請します」
『残念ながら増援は無理だ。そちらに回す余裕はない……許せ』
「…………了解……それともう一つ……敵軍は現在、〝旧新宿〟から南東方面5㎞の地点で進軍を休止中。我々はこれを掃討もしくは撤退させようと思います」
『了解……幸運を祈る』
「了解……通信終了……」
俺は通信を終えて一息吐くと、椅子の背もたれに体重をかけて思いっきり体を伸ばす。
今週に入ってまだ二日。たった二日で既に三つの部隊が全滅。
そして、今日その中に新たに二個中隊追加だ。敵の強さがうかがえる。
やられた奴の中には何人か仲のいい奴らも居た。しかし、感傷に浸る暇など俺達には無い。
俺は……俺達は負ける訳にはいかない。それは今までやられてきた多くの戦友達の為でもあり、これは絶対に負けられない戦争だからでもある。
「高倉中尉、失礼します」
ふと、思案にふけっていた俺の耳に部下の声が届く。
同時に一人の兵士が通信室に入ってきた。
「……少尉か……なんだ?」
入ってきたのは俺の最も古い戦友で、俺の補佐を務めている藤ヶ谷奈々世少尉だった。イギリス人と日本人のハーフらしく、日本人にしては色白な肌にロングの茶髪、端正な顔立ちと、軍人にはいささか似つかわしく無い。
しかし、それでも俺は一番の信頼を置いているし、なにより優秀だ。見た目など何の問題も無い。
「つい今しがた新たに派遣した偵察部隊が帰還しました……やはり、前線に出ていた二中隊は全滅……しかし幸い一名だけ生き残りがいたそうです」
生き残りは一名のみ……そいつを残して全員死亡か……俺は自分でも分かる位に表情を曇らせる。
「そうか……で?そいつの名は?」
「……ジョニー中島少尉です。今回も無事に生き残った様ですね」
ジョニー中島少尉。
今回も生き残ったか……俺は少しだけホッとする。
ジョニーは俺の軍人になってからの数少ない友人であり、例え重症でも生きて帰って来る不死身の男として部隊の中でも有名な男だ。
「そうか……分かった。俺は先にジョニーの様子を見て来る。少尉は先に作戦室に行って、今残っている、動ける隊員を全員集めておいてくれ」
「全員……ですか……と言う事は、援軍は……」
「あぁ。やはり無理らしい……仕方がないさ。今はどこも激戦区だ……分散している余裕はないだろうさ」
俺は自嘲気味に苦笑を浮かべる。
俺の苦笑に少尉もほんの少し苦笑を浮かべると、敬礼して部屋を出て行った。
さて。俺はジョニーの見舞いにでも行こう。
俺は必要な荷物を持って部屋を出ると医務室に向かった。