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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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異世界恋愛系 作品いろいろ

婚約者から意味不明な理由で婚約破棄され、それを機に家を出ようと考えたのですが、その直前にまさかの出来事が起こり……!?

作者: 四季
掲載日:2026/05/24

「悪いが、君との婚約は破棄とさせてもらう」


 婚約者である彼アルヴェルスに珍しく呼び出され、戸惑いつつも彼のもとへ向かうと、いきなりそんなことを告げられてしまった。


 強い風が吹き、木々を揺らす。

 青空すら今はこの世界の無を表しているかのよう。


 そんな中で未来を誓った人と向かい合い、関係の終わりについて言葉を交わすなんて、こんな経験をする日が来るとは欠片ほども予想していなかった。


「メリッサ、君は、パスタが好きでないだろう?」

「何のお話ですか?」

「パスタ嫌いの女性とは共には生きていけない」

「え……あの、私べつに、パスタ嫌いではないですけど……」

「いいや。嘘だ。君はパスタが嫌い、それが真実だろう。婚約破棄されたくないからといって嘘をついても無駄だ、観念しろ」

「えええー……」


 彼は私がパスタ嫌いだと思い込んでしまっているようだ。


 そんな話したことないのに……、と思っていたら。


「妹さんから聞いたんだ」

「え」


 まさかの言葉が飛び出してきて愕然とする。


「君の妹さんだよ。彼女は言っていた、姉はパスタが嫌いだ、と」

「えええ!?」

「妹さんが言っているのだから事実だろう」

「何かの間違いです! 私、パスタ嫌いだなんて言ったことはありません!」


 確かに私には妹がいる。しかし妹と彼が知り合いだということは知らなかった。どちらからも、知り合いだとか会っただとか、そういった話を聞いたことはなかった。だからかなり驚いた。そこの二人が繋がっていたなんて、と。


「そうやって、まだ嘘をつくのだな」

「違います、嘘ではありません。私が一度でもパスタが嫌いだなんて言いましたか? 言っていませんよね」

「だが妹さんはそうだと言っていた」

「では嘘をついているのは妹です」

「何だと? 彼女が嘘を? ……ああ、なんという悪女。メリッサ、そうやって実の妹を悪く言うなど大問題だ」


 なぜ私が悪者なの? と、密かに疑問を抱いていたのだが。


「悪く言っているわけではありません」

「言っているだろう!!」


 やがて想像以上に攻撃的な言葉を返されてしまって。


「妹さんを悪者に仕立て上げようとする女なんざ! パスタうんぬん関係なく関わりたくはない! 君は最低の女性だよ、まったく、呆れた。呆れ果てた。もういいさ! 君がそんなにも穢れた心の持ち主であるのなら、君との縁はここで完全に切る!」


 さらにたくさんの鋭い言葉を吐かれてしまい。


「永遠にさよなら、だッ!!」


 アルヴェルスとの関係は終わりを迎えてしまったのだった。



 ◆



 あの後、少しして、私の妹とアルヴェルスが裏で親しくなっていたことが判明した。

 妹がパスタがなんとかという嘘をついたのは、どうやら、アルヴェルスの心を私から切り離すためだったようだ。

 アルヴェルスは私を嘘つきであるかのように言った。けれども真実はそうではなかった。嘘をついているのは私ではなく妹。結局、私が主張していたことが正解だったのだ。


 婚約破棄された後、私は、実家を出ることにしたのだが――次なる住む場所に出会うより先に運命が大きく動く出来事があった。


 その日私は馬車に乗っていた。街へ出掛けたくて。しかし、馬車が山に近い道を走っていた時、急に黒い装束をまとった人たちに襲われた。彼らは直接攻撃はしてこなかったが、この身を紐で拘束し、遠い場所へと連れ去った。


 そうして魔物の国で暮らすこととなってしまった。


 だが悪いことばかりではなくて。

 むしろ楽しいこともあって。

 はじめはかなり戸惑っていたけれど、段々、そこでの暮らしに馴染むことができた。


 種族は違っても友情を築くことはできる。

 彼らはそれを教えてくれた。

 生まれ育った国も、生物としての種族も、何もかも違っていても、それでも仲良しにはなれるし協力して暮らしていくこともできる――偉大なことを学ぶことができた――そういう意味では魔物の国で暮らしも無意味ではなかった。



 ◆



 あれから数年が経ち、私は先日、ついに結婚した。


 結婚相手は魔物だ。彼は比較的人間に近い姿をしているのだが、つのが生えていたり歯が鋭かったりと、やはりところどころは人間とは異なっている。だが、精神的な面は非常に人間に近く、意思疎通も問題なくできる。


 魔物の国の中ではトップテンに入るくらいの高貴な家柄の子息ということで、最初は喋るだけでも緊張してしまっていたが、今ではずっと昔からの友であるかのように関わることができている。


 彼と過ごす時間はとても楽しいので大好きだ。


 ちなみに、妹とアルヴェルスはというと、あの後一旦婚約したようだが喧嘩が多発するようになり段々険悪になっていってしまったらしい。


 そんな中で妹が重大な嘘をついていたことが判明。激怒したアルヴェルスは酷く感情的になり妹を殴った。で、それによってアルヴェルスは逮捕されてしまったそうである。


 また、妹も幸せにはなれなかったようだ。

 アルヴェルスに殴られた際顔面に変形が起こり、それを理由に両親から冷遇されるようになってしまい、この世に希望を見出せなくなっていったらしく……やがて命を終わらせることを選んでしまったそうだ。

 欲しいものを得るためなら嘘だってつく、そんな彼女の最期は非常に寂しいものだった。



◆終わり◆

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